今日のことば

7/11 土曜日

鬼を仏に変える

税所敦子(さいしょあつこ)さんという明治の女流歌人がいました。才知と詩才を兼ねそなえた人で、掌侍(しょうじ)として昭憲皇太后(しょうけんこうたいごう)にお仕えした方ですが、夫と子どもに先立たれて、お姑(しゅうとめ)さんと二人きりで暮らすことになりました。ところがそのお姑さんが鬼といわれる怖い人で、もう事あるごとに嫁いびりをするのです。

ある日、そのお姑さんが「あんた、歌人ならこれで歌を作ってみよ」と言って「鬼婆(ばば)ァと人はいうらん」という難題を敦子さんに与えました。敦子さんはそれに、「仏にも似たる心と知らずして」と上(かみ)の句をつけたのです。

「仏にも似たる心と知らずして鬼婆ァと人はいうらん」……敦子さんが詠(よ)んだその歌を見て、お姑さんは涙が止まらなくなってしまいました。「すまなんだ。すまなんだ」と繰り返し、それからは、もう敦子さんなしでは夜も日も明けぬ毎日で、最期は、敦子さんの膝に頭をのせて安らかに息を引き取られたといいます。

清水寺(きよみずでら)の大西良慶(おおにしりょうけい)師からうかがった話ですが、人はこちらの見方で鬼にも仏にもなります。人を仏にする見方、それが仏さまの見方です。

庭野日敬著『開祖随感』第11巻 142~143頁より
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