今日のことば

1/21 火曜日

縁起を見る目

ものごとのほんの表面だけを見て、自分勝手に決めつけてしまっていることが、ずいぶん多いのではないでしょうか。

たとえば、言葉でうまく表現できない子どもであっても、どれだけのことを考え、どれだけの感情が胸の中にうずまいているか。その人の心の奥底まで見通せるようになると、どんな過(あやま)ちをおかす人にも、同情せずにいられなくなります。

『レ・ミゼラブル』という有名な小説の主人公のジャン・バルジャンは、みなさんもよくご存じでしょう。そのジャン・バルジャンが、監獄から出てきて一夜の宿を貸してもらった司教さんの家の銀の食器を持ちだしてしまうのですが、それでもみんなが同情するのは、彼が、どうしてそんなことをしでかしたか、その心の中をよく知っているからです。

どうしてそうなったのか、原因をつぶさに知ることが縁起を見ることです。その縁起を見る目が具わると、言動が乱暴だとか、いつも陰気な人だ、といった表面だけで人を決めつけることができなくなります。そこを直して幸せになってもらいたい、と声をかけずにいられなくなるのです。

庭野日敬著『開祖随感』第7巻 132~133頁より
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