人はだれもみな自由と平等を願い、幸せな生活を求めています。私たち人類の歴史は、まさにそのような願いを実現するための歩みであるといえるでしょう。
昭和23(1948)年、国連総会において「すべての人民とすべての国とが達成すべき共通の基準」として世界人権宣言が採択されました。そこには、第一条で「すべての人間は、生れながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利とについて平等」とあり、第二条で「すべて人は、人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治上その他の意見、国民的若しくは社会的出身、財産、門地その他の地位又はこれに類するいかなる事由による差別をも受けることなく」としています。
しかし、現実には人が人を差別し、抑圧し、弾圧し、搾取が起きています。たとえば、世界ではユダヤ人差別や米国などの有色人種差別、インドではカースト制度に基づく差別がいまだにあり、HIV感染者への差別問題なども深刻です。また、日本にも在日韓国・朝鮮人差別、アイヌ(民族)差別、外国人労働者差別、女性差別、障害者差別、部落差別などがあります。
人はさまざまな理由で人を差別してしまいますが、差別心とは差別する側の利己心から発しているといっても過言ではありません。その意味で、差別解消、人権擁護に取り組むことは、人間のエゴイズムを克服することをめざす宗教活動の一つといえます。
私たち立正佼成会会員は、今日まで、平和を脅かす問題の解決をはかるために、宗教協力を基盤とした平和活動を推進してきました。なかでも、自由、平等で平和な世界をつくるためには人権の問題は最大の課題です。
本会の目的の一つは、会員綱領に示されているように、家庭・社会・国家・世界の平和境を建設することにあります。そのためには、すべての人間の人権が尊重されなければなりません。差別と抑圧とに苦しむ人がいるかぎり、真の平和は訪れないのです。
私たちは、特定の政治イデオロギーに基づいて、人権問題、とりわけ部落差別問題(同和問題)に取り組むわけではありません。また、差別を生み出す社会のひずみを制度面から改善することを最終目標とはしておりません。
「差別をしたり、差別を容認するような心のあり方を根源的に変えることにより、差別を撤廃し、人々が助け合い、仲良く暮らせる世界を築いていく」──これこそが、本会が果たさなければならない大きな社会的使命の一つといえるのではないでしょうか。人権問題に取り組むことは、宗教的理想世界の建設に直結する活動にほかならないのです。
現代の日本社会は、かつて経験したことのない国際化、高齢化、情報化の時代を生きており、様々な人権問題が取り沙汰されています。いまこそ、人権尊重の視点に照らして、私たち宗教者の心のあり方を生活全般にわたって見直していかなければなりません。