本会の考え
アフリカのための共同アピール
私たちはこの1年以上、新型コロナウイルスが地球規模の現象として全世界に巻き起こした、信じられないような事態を経験してきました。地球上のすべての人に影響を及ぼすこのような出来事を、誰が予見したでしょうか。
世界では今日までに、新型コロナウイルス感染症によって270万人もの人が亡くなっています。さらに、この地球規模の感染は、私たちを他者から遠ざけ、家に閉じ込めて孤立させ、他者からわが身を守るように、人と距離を取るように仕向けます。新型コロナウイルスは、全世界の社会生活を変えてしまいました。私たちは家に閉じ込められ、生活は孤独で、(すべきことができずに)時間を持て余すものになってしまったのです。特に、施設にいる弱き人々や高齢者がこの影響に苦しんでいます。今は、未来が霧で隠れて見通せない状況です。人々は疲れ、活力を失い、悲しみにくれ、個々の生活に耐えています。
今回のパンデミック(世界的流行)では、洋の東西を問わず、あらゆる場所で苦しみと困難が生じましたが、最も苦しみを抱えているのがアフリカ大陸であることに変わりはありません。事実、新型コロナウイルス感染症に加えて、人々は常に貧困に苦しんでいます。
豊かな国の人々が皆、ワクチン(接種)に急いで向かう一方、アフリカでは多くの場合、ワクチンそのものが手に入りません。
さまざまなことが複雑に結びつくこうした状況の中、困難な生活状態が要因となって、個人主義の文化がこれまで以上に強まっています。その文化とは、「自分のこと、自分の国のこと、自分のコミュニティのことを考えなければなりません!」というものです。
自己中心的な考え方は今日、欠点というよりも必要なもののようです。恐れと個人主義が現代の人々の感情です。これは、個人だけでなく、国や国家にも当てはまります。誰もが自分の中に閉じこもっているのです。 他者は潜在的な敵であり、防御すべき感染源と見なされます。
未来を描けず、できることは、せいぜい過去への回帰を望む程度です。諦めと恐れによって、ビジョンが欠如しています。
このような困難な時代だからこそ、私たちは、他者のことを考え、他者のために行動することが一層重要であると確信しています。パンデミックによって、利己的な態度がいかに多くの損害をもたらすかが明確になりました。一方、利他的な態度がいかに癒やしをもたらすかが明らかになったのです。実際、すべての人がワクチンを接種しなければ、(新しい変異が起こり)パンデミックが再び起こる危険性が非常に高いのです。こうした場合、他者への思いやりは各人にとって不可欠なものになります。なぜなら、世界規模でワクチン接種が行われてこそ、ウイルスを真に打ち負かすことができるからです。
このような状況下で、日本の在家仏教教団の立正佼成会と国際的なカトリック在家運動体の聖エジディオ共同体は、2016年11月2日に署名したアフリカのための友愛と相互協力に関する合意書を更新いたします。そして、その合意書にはしっかりとこう宣言しています。「私たちはローマ教皇フランシスコ聖下が述べたように、『戦争のかけら』に満ちているこの星を、『平和のかけら』で満たすことができると信じています」と。
具体的な取り組みとして、私たちは先進国に対し、国連などによるワクチンの公平な分配を目指す国際的な枠組み「COVAX」に資金を提供し、自国に備蓄しているワクチンの一部を譲渡することで、連帯を示すように訴えます。同時に、製薬会社には、一時的にせよ、特許規則を超えて、アフリカ向けのワクチン製造を認可するように求めます。
新型コロナウイルスによる悲劇が起きた今日、平和と連帯のために、より寛大な取り組みが求められており、個人主義の拡大に悩まされる世界には、より一層それが必要であると私たちは確信しています。
これほど多くの苦しみにさいなまれた世界を癒やすには、恐れと個人主義の文化を克服し、「他者の文化」と「連帯の文化」を醸成していかなければなりません。なぜなら、「誰も一人では救われない、すべての人が同じ船に乗っている」ということが今や明白だからです。
だからこそ、私たちはアフリカに対する自らの取り組みを新たにしながら、世界のすべての宗教とすべての国に強く訴えかけるのです。
「アフリカを忘れてはならない!」と。
なぜなら、アフリカは私たちの未来であり、アフリカは全世界の未来だからです!
東京/ローマ、2021年6月1日
- 庭野 光祥
立正佼成会次代会長 - マルコ・インパリアッツォ
聖エジディオ共同体会長
同メッセージの英語版は以下のリンクからご覧ください。
「JOINT APPEAL for Africa」(英語版)