本会の考え
「15 歳未満の脳死臓器移植」に対する声明
4月12日、日本臓器移植ネットワークは、関東甲信越地方に入院していた10代前半の男子が脳死と判定され、家族が臓器提供を承諾し、法的に脳死と判定されたと発表しました。これにより、本日、国内初となる15歳未満の脳死臓器移植が行われました。
脳死臓器移植は、一人の人間の死を前提として他の人の疾病を治療するという特殊な医療行為です。ドナー本人の基本的人権や自己決定権は慎重に配慮されねばなりません。本会は、これまでも「脳死を一律に人の死」とした現行法に対し、強い懸念を表明し、幾度か見解書の形で提言して参りました。
臓器提供に関するドナー本人の意思には、承諾・拒否・判断保留(不明)の3つの選択肢が考えられます。また、人には意思表示しない権利もあります。臓器提供を拒否していない限り、臓器提供を承諾したものとみなすという意思決定の捉え方は、敬虔な日本人の文化伝統とは極めて異質なものであって、日本人の心性に著して親和性を欠くものと言わねばなりません。
特にこの度の15歳未満の者の意思表示に関しては、15歳未満の本人の意思確認の手続、家族が提供を決断するまでの経緯についての情報開示などの透明性がまったく欠落しております。この制度が、脳死の診断後も成長し続ける「長期脳死児」や虐待された小児の生きる権利を脅かすものであってはならず、その意思確認などのあり方について厳正かつ明確な法的措置を講ずる必要があると考えます。
私たちは宗教者として、すべてのいのちの神聖性を畏敬し、いのちの尊厳を擁護する立場から、これまでの意見書等で提起した提言を、今後とも政府を始め国民の各界各層に訴え、いのちの尊厳が守られる社会の実現に向けて努力していく所存であります。
以 上
平成23年4月13日
立正佼成会 理事長 渡邊 恭位