本会の考え

北朝鮮情勢に対する見解

因果はめぐる ―― 今、私たちは

七十六年前、他国に侵攻する日本に対し、アメリカを中心とする国際社会は厳しい経済制裁を実施しました。しかし、それが招いたのは、真珠湾への日本の先制攻撃でした。現在の北朝鮮を取り巻く状況は当時と似ており、あの「戦前」と同じ道筋を辿っているのではないか――そう思えてなりません。

去る九月二十日の国連総会の席上、安倍首相は、「対話による問題解決の試みは、一再ならず、無に帰した」「必要なのは、対話ではない。圧力なのです」と述べました。前日には、トランプ米大統領が「アメリカと同盟国を守らざるをえない場合、北朝鮮を完全に壊滅するほか選択肢はなくなる」と語りました。

因果はめぐる――日本は今、アメリカと共に国際社会の先頭に立ち、経済封鎖や石油禁輸などの圧力によって北朝鮮を封じ込めようとしています。しかし、圧力を強めることが、危険であることは明らかです。実際、米朝間で挑発合戦がエスカレートしており、戦前の日本と同じ結果を招く危険性が増大することは容易に想像できます。
悲惨な戦争を体験し、そうした危険性を、どの国よりも理解しているはずの日本が、なぜ北朝鮮を追い詰めるのでしょう。それが本当に日本の取るべき態度なのか、立ち止まって、考えなければなりません。

庭野日敬開祖は、一九七八(昭和五十三)年の第一回国連軍縮特別総会で、当時の米ソ両首脳に対し、「危険をおかしてまで武装するよりも、むしろ平和のために危険をおかすべきである」と訴えました。開祖がその半生を宗教対話・協力による世界平和の実現に捧げたのは、仏教徒として不殺生戒を守るため、法華経に説かれる理想の実現のためです。しかし、果たしてそれだけでしょうか。

開祖はこう述べています。「わたしが現在、世界平和のために一身をなげうって働いているその理念の原点は、もちろん仏教に教えられた不殺生戒でありますけれども、やむにやまれぬ行動としてわたしを駆り立てる感情の原点は、あの日々に体験した『もう戦争はごめんだ』という痛切な思いです。そして、終戦の日に感じた何ともいえぬ寂静の境地であります」(『佼成』昭和五十四年八月号)。

私たちは今また、「戦前」を生きているのでしょうか。日本は再び、「あの日々」を繰り返すのでしょうか。もう事態を変えることはできないのでしょうか。

因果をこえる――こうした現状を招いてしまった要因は、政治指導者だけでなく、私たち自身にもあり、同じことを繰り返さない努力が必要です。たとえ起こりつつあることが似通っていても、どのような心で、どのように行動するかによって結果は異なる、ということを私たちは体験してきました。歴史とその教訓に学んで因果を断ち切り、世界を異なる果報へと導く責任は私たちにあるのです。

真の対話には、世界を変える力があります。駆け引きや圧力ではなく、まずは自らが勇気を持って向き合い、相手の不安や恐怖心を和らげて関係を築いていく対話がいかに有効かを、私たちは知っています。争いを回避し共存する道を、時間をかけて探っていくことこそが、日本の安全、ひいては世界の安定につながります。

私たちは今、歴史的に重要な時を生きています。対話による平和の文化を築くのか、力による対立の時代を迎えるのか――。今、まさに衆議院が解散され、日本の進路は、有権者一人ひとりの選択にかかっています。

国の体制が違っても、北朝鮮に、世界中に、私たちと同じように家族の幸せを願い、一日一日をつつましく生きている人たちがいます。今こそ戦争のない世界のために、心からの平和への祈りを捧げましょう。そしてすべてのいのちの幸せのために、祈りと対話の輪を広げ、共に行動していきましょう。
 

平成29年10月1日
立正佼成会

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