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2001年09月18日 米国同時多発テロにWCRP日本委員会が声明発表

WCRP(世界宗教者平和会議)は9月18日、米国での同時多発テロ事件に対し、白柳誠一理事長、杉谷義純事務総長の連名で、声明文を発表しました。

米国同時多発テロに対する声明文

このたび、アメリカ合衆国で発生した同時多発テロ事件に対し世界宗教者平和会議(WCRP)日本委員会は、強い憤りを感じると共に言葉が見つからないほどの深い悲しみを覚えます。そして、このテロで全く罪のない多くの人々の尊い命が突然奪われましたが、その犠牲者とそのご家族に対し心から哀悼の意を表します。

このテロは直接的にはアメリカ合衆国が対象となりましたが、犠牲者はアメリカ国民はもちろん、日本をはじめ多くの国の人々に及び、政治、経済の影響を考えると全世界を敵にした無謀な行為であり、その卑劣さと共に断じて許されるものではありません。それと同時にテロは不正な行為であり、憎しみ以外何ものも生じないことを銘記すべきであります。

さて、私たち宗教者はこのテロ事件の背景に宗教的心情があると言われていることを深く憂慮するものであります。そして私たち宗教者は、例え自己の信奉する宗教と同胞を守るためといえども、無差別に人を殺すことが信仰の証しであるとする宗教などないことを断固として言わねばなりません。人間は弱いものであります。ですから自分が窮地に陥ったときや、有利になると思われるとき、自分の都合の良いように宗教を解釈し、正当性を主張するために神や仏の名を利用し、多くの過ちを犯したことが歴史上少なくなかったことを知らねばなりません。

重ねて私たち宗教者は主張します。テロ行為を容認する宗教などあるはずもなく、もしあるとすれば、それは誤った解釈に基くものであります。正しい宗教は信仰に忠実であればある程、他者に対して寛容になることを説いているからです。さらに、私たち宗教者はこのたびのテロ事件が、イスラム教徒に関係があると報道されているために、多くの善良なるイスラム教徒の人々が不当な扱いを一般の市民から受けていることを聞き、本当に残念に思っています。世情が不安になると不安が目に見えないだけに、無理矢理に敵をつくりあげ、それに危害を加えることによって不安を逸らそうとする行動に出がちです。この行動は、テロと同様卑劣な行為であり、これも絶対に許されることではありません。私たちは、このことについても歴史上、何度も過ちを犯してきたことを想起すべきであります。

ブッシュ米国大統領は、テロ事件を新しい戦争と定義し、それこそ国運を賭けてその解決をはかろうとし、多くの国々の指導者もそれを支持しています。私たち宗教者は、テロ行為を憎み、二度と起してはならないと思考するについて人後に落ちません。犯人は厳正なる法の裁きを受けるべきであります。しかし、過剰な解決策が新たな問題を惹起したり、善良な市民を巻き込むことがないよう切に要望いたします。

最後に、今回の事件は人間が起した事件であり、決して他人事でなく自分の問題として一人ひとりが真摯に受けとめていただきたいと思います。そして、まだ家族の安否すら確認出来ない多くの人々にお見舞い申し上げ、重ねて犠牲者のご冥福を祈るものであります。

財団法人世界宗教者平和会議日本委員会
 理事長  白柳誠一
事務総長 杉谷義純

(2001.09.21 記載)