『日本人にとってのイスラーム――同時多発テロ事件を契機として』をテーマに日本宗教連盟主催によるシンポジウムが12月20日、東京・日本プレスセンターで行われ、同連盟に加盟する各宗教や宗派、教団の関係者はじめ、研究者や市民など200人が参加しました。
当日は、眞田芳憲・中央大学教授が『イスラームと原理主義』をテーマに基調発題を行いました。眞田氏は、平和を唱えるイスラームが、マスコミなどによって「原理主義」や「テロリズム」と同一視して報道され、イスラームの正確な理解につながっていない現状を指摘。その上で、一般に言われる原理主義とは本来、イスラームの「復興運動」であること、また、自衛権は認めているものの、殺人や戦争、テロリズムを厳しく禁止していることを説明し、「イスラームは、他の民族や宗教を排除したりしません。共存を願う宗教なのです」と述べました。
続いて、パネルディスカッションには、眞田氏はじめ、武藤英臣・日本ムスリム協会理事、東京ジャーミィ・文化センター副代表のセリム・ユジェル・ギュレチ氏、油井義昭・東京基督神学校講師の4人が参加。井上順孝・国学院大学教授がコーディネーターを務めました。武藤氏は、イスラームの宗教や信仰のあり方を解説し、「平和や思いやりを大事にし、人間の正しい生き方を教えている」と強調。セリム氏は、事件に少数のイスラーム教徒が関わっているとはいえ、宗教そのものを原因にし、イスラーム全体を非難するような報道のあり方に対して疑問を投げかけました。また、儀式儀礼などの点で相違はあっても、どの宗教も人間の正しい生き方や価値観を説いている部分は共通していることを示唆。宗教を「文明の衝突論」からではなく、「文明の融合論」から見ていくべきだと提案しました。油井氏は、どのイスラーム諸国にも、キリスト教徒が存在し、そこでは長年、共存が図られてきた歴史を説明。その一方で、ローマ教皇が十字軍遠征の謝罪声明を発したことに触れ、「かつてローマ教会とキリスト教国が、キリスト教の教えに反した外交政策をとってきたことが、現在の民族対立を引き起こした原因の一端になっている」と述べました。パレスチナ問題の解決やテロリズムの撲滅、武力によらない和解へと導くために、宗教者がより一層、対話と協力を進めていくよう呼びかけました。
(2001.12.27記載)
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