中国・ハルピン市方正県。第二次世界大戦末期から終戦後にかけて多くの悲しみを生んだこの地に、友好と平和のシンボル『日中友好 世界平和の塔』が完成しました。建設費は、すべて本会一食平和基金が支援。碑文の『日中友好 世界平和』は庭野日鑛会長が揮毫しました。本会の近畿、中国の両教区はこれまで15年にわたり同県を訪れ、戦争犠牲者を慰霊し、残留日本人婦人、孤児をはじめ市民らと交流してきました。本会とハルピン市方正県人民政府はこうした背景を踏まえ、日中国交正常化30年という記念すべき年に、これまでの交流の成果を顕彰し、世界平和を祈願することを目的に同塔の建設を計画しました。8月15日、中日友好園林内で行われた落慶式典には、「中国黒龍江省方正地区日本人公墓慰霊訪中団」(神戸、岡山、大阪、姫路、奈良、広島教会の会員で構成。名誉団長=池田貢一郎・前神戸教会長、団長=椎名啓至・神戸教会長)の58人が出席。中国側からは付建国・方正県人民政府副県長、董紹涛・中国共産党方正県委員会宣伝部部長をはじめ同県人民政府スタッフ、建築関係者、市民ら200人が参列しました。
《方正県と本会》方正県は、黒龍江省ハルビン市街から東へ約160キロに位置します。第二次世界大戦時、同県を含む東北部一帯は「満州」と呼ばれ、日本から30万人以上もの開拓民が送り出されました。1945年8月。ソ連軍参戦と日本敗戦により、開拓民たちは逃避行を余儀なくされ、結果、飢えや病気、厳しい寒さで多くの人が犠牲になりました。特に開拓団本部のあった同県では、4500人以上の人々が亡くなったといわれています。また同県は、残留婦人や残留孤児が最も多かった地域でもあります。
本会が同県を初めて訪れたのは87年8月。「日中友好親善交流訪中団」(10人=岡山教会会員で構成)が、同県の「日本人公墓」へ慰霊供養に訪れました。
「日本人公墓」とは、63年、周恩来首相(当時)が「開拓民に罪はない。被害者である。日本国民も戦争のために苦しんだのである」と語り、同県に野ざらしになっていた日本人の遺骨を埋葬し、供養するために建立したものです。以来、方正県によって管理されています。
今回の名誉団長を務め、また第1回の訪中団の団長でもある池田・前神戸教会長は「日本人公墓」について、「中国の皆さんの行為に、仏教で説く慈悲と寛容の精神をあらためて教えてもらった気がした」と語ります。第1回訪中団一行は、「日本人公墓」で慰霊供養を行い、周辺の清掃などにも真心を込めて取り組みました。また残留婦人、孤児たちとの交流の機会を持ちました。
以来15年間にわたり、近畿、中国両教区の会員らによって、同様の訪中団が派遣されてきました。当初は、まだ多くの残留婦人たちが同県やその近隣で生活していた。本会会員の訪中を知り、「共に供養をしたい」と約150人の残留婦人が駆けつけたこともあったといいます。
また91年には、「日本人公墓」が建立されている中日友好園林の環境整備に、本会一食平和基金から約40万円を支援。街灯設置などに役立てられています。
《「日中友好 世界平和の塔」落慶式典》今回、本会一食平和基金の支援で建立された『日中友好 世界平和の塔』は、「日本人公墓」と同じ中日友好園林内に立っています。同地にはこのほか、戦後、残留婦人、孤児らを養育した中国人養父母を供養する「養父母公墓」、また長野県やその他の自治体、民間団体らによって寄贈されたモニュメントや、記念館が建てられています。
塔のデザインは、互いに拝み合い、認め合うことによって平和な世界が訪れるという願いを込め、合掌印をモチーフにしました。塔の背後のウォールに刻まれた「日中友好 世界平和」の碑文は、方正県を包括するハルピン市の石忠信・代理市長が選定し、庭野会長が揮毫しました。
式典ではまず、中国側を代表して、付・方正県人民政府副県長があいさつ。「日中国交正常化30年という記念すべき年に、塔が建立されたということは、非常に意義深いものだと思います。過去の戦争は、両国民に大きな災難をもたらしました。戦争に反対し、世界平和を実現することが両国民の共通の願いだと思います。我々は手を携えて、中日友好、世界平和のために努力しようではありませんか」と述べた。
訪中団を代表して池田名誉団長が建設の経過を報告し、「平和の象徴である"合掌"の心を、この地から世界に広げてまいりましょう。永遠の日中友好、世界平和の実現に向けて皆さんと一緒に努力してまいりたいと思います」と語りました。次いで、椎名団長が一食平和基金について説明を行い、「この塔が、この地を参拝される方にとって、大きな励ましとなること、またここに眠る犠牲者の方々の安らぎになることを願っております」と述べました。
このあと、日本側から池田名誉団長、椎名団長ほか3名が、中国側から付・方正県人民政府副県長、董・中国共産党方正県委員会宣伝部部長、施家和・同県人民代表大会副主任、田文斌・同県人民政府外事弁公室主任、劉鳳華・同主任の10人によって除幕が行われ、式典は終了しました。
なお、式典の模様は、中国中央テレビのニュース番組「東方時空」で中国全土に放映されました。
(2002.09.04記載)