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2003年02月20日 WCRP日本委員会が比叡山で「イラク危機の平和解決を願う緊急集会」開催

WCRP(世界宗教者平和会議)日本委員会は2月20日、滋賀県大津市の天台宗総本山・比叡山延暦寺で「イラク危機の平和解決を願う緊急集会」を開催、同委員会関係者、加盟各教団会員・信徒、市民など約230人が参加しました。「平和集会」では白柳誠一・同委員会理事長(カトリック枢機卿)が講話。根本中堂で行われた「宗教者祈りの集い」では、平和の祈りが捧げられたあと、庭野日鑛・立正佼成会会長(同委員会常務理事)が同集会の声明文を発表し、武力によらないイラク危機の解決、和解に向けた対話の重要性を訴えました。

WCRP日本委員会では、現今のイラク危機の平和解決に向け、日本の宗教者としてメッセージを発信し、行動を起こしていきたいと1月下旬から具体的な取り組みを検討。日本仏教の聖地である比叡山を会場にした集会の開催を決定しました。
当日は、最初に延暦寺会館で「平和集会」が行われました。冒頭、杉谷義純・同日本委員会事務総長(天台宗円珠寺住職)が主催者を代表し「戦争を20世紀の遺物とし、21世紀に平和を築くために祈りの輪を広げていきたい」と述べました。続いて、比叡山延暦寺の森定慈芳執行が「生命の尊重が平和の基本であり、戦争はその尊厳を傷つける最たるもの。宗教宗派を超えて世界の人々に平和を訴えることが肝要」とあいさつしました。
白柳理事長は講話の中で、「戦争は人間がひき起こすものであり、人間が変われば回避することができる」とした上で、「真の平和をつくり出すには、世界のすべての人々が同じ人間性を持つ兄弟、隣人として愛を分かち、違いを認め、重荷を担い合うことが大切。違いはマイナスではなく、人間を豊かにしてくれるプラスの要因である」と述べました。さらに、「時代の転換点にある今、このときに、争いの歴史から和の歴史へと流れを変えていく使命が、私たちにある」と、現代に生きる宗教者の責務を強調しました。
引き続き、国宝である根本中堂に会場を移し、「宗教者祈りの集い」が行われました。
「平和の祈り」では、渡邊惠進天台座主が平和祈願文を奏上。「ひとたび戦争が起これば、犠牲者となり一番苦しむのは、いつも弱者であるばかりでなく、今回の戦争は予測を超えた難問を人類に突きつけるでありましょう」とアメリカによるイラクへの攻撃に深い憂慮を示しました。その上で、宗教者の立場に言及し、「私たちはそのような悲劇を回避すべく、使命のいよいよ重いことを自覚し、一方力の足らざることを深く懺悔するものであります」と述べ、至心の祈りが神仏の加護のもと、平和解決の光となるようにと祈願。参集者全員で、黙祷を捧げました。
続いて、WCRP日本委員会に全国1000人以上から寄せられた「平和の言葉」が、市民代表から白柳理事長に手渡されました。
このあと「宗教者祈りの集い」声明文を庭野会長が発表。フセイン大統領、ブッシュ大統領、アメリカの宗教者・市民に、平和的解決に向けた尽力を訴えると共に、祈りをもとに平和を願う国際世論を形成し、連帯の輪を広げることを呼びかけました。各宗教を代表し、渡邊座主、白柳枢機卿、庭野会長、林馨・弓矢八幡教主、樋口美作・日本ムスリム協会会長が「平和の署名」を行いました。
声明文は、アメリカ、イラク両政府、WCRP各国の国内委員会などに送られることになっています。

WCRP日本委員会 イラク危機の平和解決を願う緊急集会
「宗教者祈りの集い」声明文

今、世界は中東イラクの地に襲いかかろうとする戦争という深刻な事態を固唾をのんで見守っています。そして、私たち日本の宗教者は居たたまれない気持ちで祈りを捧げるため比叡山に集まりました。
ひと度イラクに対する軍事行動が起こされれば、数多くの尊い命が失われ、あるいは人々は傷つき、家族は離散し、難民が続出することになるでしょう。そして、その影響は中東地域はおろか、全世界に及び、政治的、経済的、社会的に不測の事態を招きかねません。このような時、いつも大きな犠牲を強いられるのは無辜の市民であり、老人や女性、幼い子どもたちなど弱者であります。人間の尊厳を踏みにじり、人々を恐怖に追いやって悲惨の極みを招く戦争は、決して許されるものではありません。その上、いかなる大義を掲げようとも武力の行使は新たな憎悪を生み、報復の連鎖を断ち切ることの出来ない愚かな行為であることは歴史が教えています。また、自らの命を投げ出して相手を殺傷する行為が神仏によって認められるとするのは、宗教の本質と関わりなく、政治的宣伝であることが少なくないことを私たちは見破らなければなりません。
私たちはフセイン大統領に訴えます。「国連監視検証査察委員会と国際原子力機関に無条件かつ全面的に協力して、大量破壊兵器開発の疑惑を進んで払拭してください。国連の査察は屈辱であり、それに抵抗することが国家指導者としての矜持であるとするなら、その姿勢こそむしろ国民を危険にさらすことになります。自己の独善を押しつける指導者は、やがて国民から退場を求められることでしょう」。
次に、私たちはブッシュ大統領に訴えます。「国連憲章を尊重し、国際法を遵守して武力行使に走らず、平和的解決のため最善の努力をしてください。私たちは、武力に訴えるよりも平和的解決の方が何倍も勇気と忍耐がいることか承知しています。そして、平和的解決は必ずや全世界から信頼と尊敬を勝ち得るでありましょう」。
更に、私たちはアメリカの宗教者及び市民の皆さんに呼びかけます。「今、あなた方の政府は大きな過ちを犯そうとしています。21世紀を迎えた今日、国連決議を経ずして単独で軍事力の行使も辞さないとする考え方は、民主主義国家アメリカの名誉を著しく傷つけるものではないでしょうか。どうか、あなた方の政府が国際世論に耳を傾け慎重に行動するよう働きかけてください」。
私たち宗教者は、今日まで宗教の垣根を超えて対話し、お互いの伝統文化の違いを認め合い、この地上に平和が訪れるよう共に働き努力を重ねてきました。そして、その実現を神仏に祈ってきました。それと同時に、厳しい現実を直視したとき、私たちの努力の足らざるところを深く恥じ、決して諦めることなく決意を新たにして努力を誓うものであります。なぜならば、戦争は人間が起こすものであります。人々が心を改め和解への対話の意思を示すならば、戦争は必ず避けられるはずであります。このことは決して理想ではなく、人間が霊性に目覚め、本当に求めようとすれば実現可能なことであると私たちは確信しています。そして、平和への意思が人々の心に灯されれば、たとえ最初は小さなものであっても人々の共感を呼び、やがて大きなうねりとなり、国際世論を形成して為政者を動かすことになるのです。
私たち日本の宗教者は、今日比叡山に集い、イラク問題が戦火を交えず平和的に解決することを願い、真摯に神仏に祈りを捧げます。そして、思いを同じくする世界の人々に対し連帯の輪を広げるべく呼びかけるものであります。

2003年2月20日

イラク危機の平和解決を願う緊急集会
世界宗教者平和会議日本委員会
「宗教者祈りの集い」参加者一同

(2003.02.28記載)