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2003年05月10日 庭野平和賞受賞者を迎え「庭野平和財団シンポジウム 2003」開催

庭野平和財団(庭野日鑛総裁、庭野欽司郎理事長)主催による「庭野平和財団シンポジウム 2003」が5月10日、第20回庭野平和賞受賞者のプリシラ・エルワーズィ博士(オックスフォード・リサーチ・グループ=ORG=代表)を迎え、京都教会普門館で開催されました。会員、市民合わせて約200人が参加しました。

同シンポジウムは『京都発 宗教者の新たなチャレンジ』をメーンテーマに毎年、この時期に行われています。今回のサブテーマは『安全保障を市民の手に 宗教者の役割』です。
冒頭、エルワーズィ博士が『戦争を止めるために何ができるか?』と題して基調発題を行いました。エルワーズィ博士は、戦争を止める具体的な実践方法として「暴力に代わる方法の探索」「メディアへのはたらきかけ」「非暴力精神の定着化」「非暴力部隊による行動」の4つを挙げた上で、「非暴力を実践する際に生じる恐怖や怒りは、意識、感情、精神、身体の訓練によって克服できる」と論じました。
続いて、鈴木伶子・日本キリスト教協議会議長をコーディネーターに、梅林宏道・特定非営利活動法人ピースデポ代表、石川勇吉・真宗大谷派報恩寺住職、エルワーズィ博士によるパネルディスカッションが行われました。
鈴木師は、「核」を頂点とした現代文明は、力によって相手を圧倒し、自分の生活を快適にしようという自己中心的な生き方を生み出していると指摘し、「非暴力の精神や、自分の心を抑制してほかの人々の多様性を認める寛容の精神を涵養する点で宗教者の役割は大きい」と語りました。
梅林氏は、緊迫する東北アジア情勢の緩和策としてピースデポが進める「東北アジア非核地帯」構想を紹介し、「当事国が互いに『隣人』としてまず相手を信頼をした上で双方の軍備状況を検証するシステムづくりが急務である」と述べました。
石川師は、自身が世話人を務める「平和をつくり出す宗教者ネット」の活動に触れながら、「すべての宗教は人を害することを戒める点で共通しており、宗教者が一致団結して市民に平和の大切さを訴えていくことが大事である」と強調しました。

「庭野平和財団シンポジウム 2003」発言要旨

庭野平和財団(庭野日鑛総裁、庭野欽司郎理事長)主催による「庭野平和財団シンポジウム 2003」が5月10日、京都教会で開催されました。シンポジウムでは、『安全保障を市民の手に 宗教者の役割』をテーマに、第20回庭野平和賞受賞者プリシラ・エルワーズィ博士をはじめ、4人が発言しました。それぞれの発言要旨を紹介します。

プリシラ・エルワーズィ博士(オックスフォード・リサーチ・グループ=ORG=代表)

戦争を抑止するためにだれもができる4つの効果的な実践方法を提案します。第1は、非暴力による問題解決の方法です。非暴力はある意味で暴力よりも力強く、経済的であることを知らなければなりません。第2は、メディアへのはたらきかけです。テレビやラジオの番組制作者は市民の意見に敏感に反応します。第3は、非暴力の精神を人々に定着させることです。そのためには子供たちに、物事を客観的に受け止め、他者を思いやる心を育む教育を施すことが重要になります。第4は、非暴力組織による行動です。非暴力は受け身の抵抗運動とは違います。受け身の場合は、人々の心に恐怖や怒りを生じさせます。真の非暴力には恐怖や怒りを克服するパワーがあり、それは意識、感情、精神、身体の訓練によって可能になるのです。

鈴木伶子・日本キリスト教協議会議長

核兵器を頂点とした現代文明は、力で相手を圧倒し、自分の生活を豊かに、快適にしようという自己中心的な生き方を生み出しています。「核」を廃絶するには、まずその自己中心的な心を抑制しなければなりません。そして、違いを認め合いながら一緒に生きる道を探ることが大切です。その点、宗教者には多くの役割があると思います。宗教者は人間の力を超えた大いなるはたらきを信じるがゆえに、自己中心の見方、考え方を廃し、他者を受け入れることができます。いのちを尊び、寛容や非暴力の心を持つことができます。自己中心の世界から解放され、広い視野で多様な考え方に接し、自分の心を開いていくことが平和への第一歩です。

梅林宏道・特定非営利活動法人ピースデポ代表

緊迫する東北アジア情勢の緩和策として、ピースデポでは「東北アジア非核地帯」構想の草案を作成中です。これは、東北アジアの北朝鮮(朝鮮民主主義共和国)、韓国、日本が非核化を堅持すると同時に、核兵器を保有する米国、ロシア、中国が「非核地帯」を尊重し、同地帯に核攻撃をしないと保証するものです。そこで大事になるのは、当事国同士が互いに相手を「隣人」として意識できるかどうかということです。さまざまな情報が流れ、互いに拭いきれない不信感があるのは事実でしょう。しかし、まず隣人として相手国を信頼し、その上で双方の軍備状況について疑わしい点が見られたらしっかりと検証していく。そのようなシステムづくりが平和を構築する上で求められていると思います。

石川勇吉・真宗大谷派報恩寺住職

私が世話人を務める「平和をつくり出す宗教者ネット」は、昨年4月の発足以降、有事法制やイラク戦争に反対する集会を催すなど、平和に向けたさまざまな取り組みを行ってました。現在、宗教・宗派の違いを超えて400以上の個人・団体がこの組織に加盟しています。各宗教は、それぞれ生まれた背景も教義も違います。しかし、人を害することを戒め、いのちの尊厳を守るという点では、どの宗教も共通していると思います。そうした部分で宗教者が一致団結し、平和をアピールしていくことはとても大事なことです。特に、宗教者が社会に出て、市民とともに具体的な行動を起してこそ、平和を実現する大きな力になっていくのだと思います。

(2003.05.23記載)