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2003年05月27日 WCRP国際委員会がヨルダンで「国際諸宗教サミット」を開催

イラク宗教者の結束を支援し同国に真の平和をもたらそうと、5月27、28の両日、ヨルダン・アンマンのメリディアンホテルで「国際諸宗教サミット」が開かれました。WCRP(世界宗教者平和会議)国際委員会の主催によるもので、テーマは『暴力の否定と正義による平和の促進』。WCRP国際委実務議長のハッサン・ビン・タラール王子(ヨルダン)、イラクの宗教者(イスラームシーア派、同スンニ派、キリスト教)20人をはじめ、WCRP執行委員、管理委員、国際的人道支援団体の代表など総勢約70人が集まりました。本会からは、WCRP国際委員会会長であり執行委員の庭野日鑛会長の代理として山野井克典理事長が出席、また、神谷昌道外務部次長、ワールドピースAwake実行委員長がオブザーバーとして参加しました。宗教者たちは活発な討議を展開し、「イラク宗教者による共同声明」を採択し、イラク戦争後の人道支援と社会復興に向けた行動方針を導き出しました。

イラクの総人口約2400万人の中でイスラーム教徒は97%前後。そのうちシーア派が約60%を占めるといわれます。イラク戦争でスンニ・少数派政権であるバース党が崩壊し、シーア派社会では、親イラン派と親米派とに分裂し始めたと伝えられており、こうした状況下で、イラクの宗教者が一堂に会するのはきわめて歴史的なできごととなりました。
27日、開会式での基調講演でハッサン王子は、イラクの宗教者の役割は重大であるとして、「テロに象徴される暴力を否定し、恐怖の根源、暴力の根源についてしっかりと見つめることが大切」と内省の必要性を強調。さらに、諸宗教間、異文化間の対話を進めていく強い意志を参加者に求め、「次の10年のために私たちの行動が大切です」と結論づけました。
これを受け、宗教者らはイラクの現状などについて活発に議論を重ねました。ユニセフ地域代表のトマス・マクダーモット氏は、子供の栄養不良、上下水の汚濁、未処理のごみ、帰還難民への差別、少年兵の問題などを指摘。また、イラクのイスラーム代表であるフセイン・ガチ・フセイン・アル・サマライ博士は、「圧政や戦争によって国民は人間としての尊厳を失ってきた」と精神の荒廃を嘆いていました。
こうした現状を打破するため、宗教者は宗教の持つ価値に着目。「寛容」「共生」「対話」といったイラクの宗教伝統に立ち返り、協力して復興を目指す点で心を一致させていきました。
大アヤトラでイスラム研究のための国際カレッジ学長であるアル・サイード・ファデル・アル・ミラーニ師は、「イラク復興の途上で問題があれば、相互理解の幸運な機会となるだろう」と宗教観を披歴。マフマウド・カラーフ・アル・エイサウィ師(イラクのイスラーム代表)も「信仰を信じ、信条をもつことが大切です。このふたつがあれば地獄も天国となるでしょう。どうぞ世界の方々、助けを求めるイラクに手を差し伸べてください」と訴えました。
また、ザイナーブ・アル・スワジ女史(米国イスラーム会議委員長)は、分断された家族の傷を癒すため、教育システムに関わる必要があると、イラク女性の役割の重要性を力説しました。
山野井理事長はスピーチの中で、本会が過去30年以上にわたり宗教協力に取り組んできた経験を紹介。ボスニア・ヘルツェゴビナでの宗教協力の実例をとりあげながら、「協力」は変化を生み、協力し合う者を成長させると明示しました。
特に、本会の青年たちが取り組んできた「宗教者同士の祈り」「一食を捧げる運動の推進」「イラク緊急救援募金の継続」「宗教者として何ができるかを調査するための青年代表イラク派遣」について発表。ある宗教者は「イラク宗教者に"協力による活動は現実のものになるのだ"という確信を得させた」と証言しました。本会会員の「祈り」と「行動」がイラク宗教者の心に届いた瞬間です。
全会一致で採択された共同声明には、『WCRPは、バグダッドで開催が見込まれる将来の諸会議とイラク諸宗教協議会の設立に関して、イラク宗教指導者と協力して取り組むことを奨励された』と書かれました。
今後、WCRPは、イラク諸宗教協議会の発足を目指して、イラク人の調整役を介し、イスラーム各派とキリスト教との対話を重ねていきます。また、医療、食糧などの人道援助と戦後復興への協力を行います。本会は、イラク緊急救援募金などを通し、WCRPと一丸となって活動を推進していくことになります。

(2003.06.06記載)