立正佼成会一食平和基金の支援を受け、10月中旬からフィリピン・ミンドロ島に派遣されていた武田泰子さん(38)=世田谷教会=が11月30日に帰国しました。海外での難民支援やNGO(非政府機関)事務局スタッフの経験を持つ武田さんは、そのノウハウを生かし、教育支援に取り組むキリスト教のグループの人材派遣要請に応じて、組織運営の基盤となる技術を伝え、グループがNGOに成長していくための課題に取り組みました。
今回、武田さんが訪れた「サン・ロレンソ・ルイス・フォーメーション・アンド・ラーニングセンター」は、ミンドロ島のカラパン市で13年間にわたり、子供たちへの教育支援を行っている団体。1992年からは、同島山岳地帯に暮らすマンギャン族への教育普及にも取り組んでいます。現地で使われるタガログ語の読み書きが出来ず、安定した職業も持てないまま貧困生活を送る彼らの村に、分校を設立して教師を派遣。授業や給食の普及に務めています。
「メンバーは皆、慈愛に満ちた人たちでした。しかし"優しさ"だけでは支援を継続していくことはできません。これまでの活動経験を踏まえつつ、これからは"組織"としての枠組みを自覚することが必要だと実感しました」と武田さんは指摘します。グループが近い将来、NGOとして活動を組織的に展開するには、運営方針、行動計画、経理など明確なシステムづくりが必要でした。NGOスタッフとして事務処理の専門知識を持つ武田さんは、組織の建て直しを図りました。
約1カ月半の滞在中、グループが運営する小学校の図書館に寝泊りしました。何冊もあった手書きの帳簿を一つにまとめ、それらをパソコンに入力する作業をスタッフに指導。また、実状を知るためマンギャン族の村へも足を運びました。やがてスタッフから「誰が見ても分かる帳簿ができた」「事務の仕事がやりやすくなった」と、喜びの声が返ってきました。「短い期間でしたが、グループが今後、NGOとして活動を続けていくための基本的なテクニックは伝えることができました。これからは、彼ら自身の行動力を見守っていきたい」。自分がいなくなった後も相談ができるようにと、フィリピン人の友人で開発の専門家も紹介しました。
現地の人々から涙ながらに別れを惜しまれ、滞在を終えた武田さんに、グループから感謝状が贈られました。重ねて「再びヤスコを派遣してほしい」とのリクエストも。「現場の要望がある限り、派遣に応じたい」と武田さんは意欲を見せています。
(2003.12.19記載)
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