談話
『自衛隊のイラク派遣に対して』
立正佼成会理事長
山野井克典
1月26日、政府によって陸上自衛隊本隊のイラク派遣が決定され、防衛庁長官による正式な派遣命令が出されました。戦後の日本にとって非常に大きな出来事であり、このことは今後の日本のあり方を左右しかねない、とも言われております。本会は、自衛隊の海外派遣に対し、あくまで慎重な対応を要請してまいりました。今回、国民の総意が形成されないまま派遣が決定されましたことは誠に残念であります。
しかし、派遣される自衛隊員の方々は、任務としてイラクに赴かれるわけであります。治安が悪いと言われる状況下での任務には、大変な緊張感が伴うと思います。また隊員一人ひとりのご家族、縁者の方々の不安はいかばかりでありましょう。派遣される自衛隊員方々が安全に任務をまっとうされて、ご帰国されることを心から祈念申し上げます。
本会は、平和といのちを尊ぶ宗教者の立場から、武力による問題解決を回避するよう、一貫して申し入れてまいりました。イラクへの自衛隊派遣に対しましても、昨年12月、「自衛隊イラク派遣に対する意見書」で、自衛隊の派遣が「非戦闘地域での新たな戦闘をまねくことにつながりかねない」と指摘いたしました。また現地の状況次第では、戦闘行為が行われる可能性があり、「憲法9条」の枠を越えるばかりでなく、イラク復興への貢献という本来の目的から遠のくことへの懸念も表明いたしました。
イラク戦争の爪痕は予想以上に大きく、混乱が終息に向かう兆しは、いまだに見えてまいりません。現地からの報道では、米国主導の占領的な政策のあり方に反発を募らせているイラク市民も少なくないとされています。一刻も早く、国連を中心とした国際協調体制を確立し、平和的な手段によって問題を解決していくことが、いま何よりも求められているのであります。
会長先生は昨年、「和」の大切さを説かれ、「すべてのいのちが尊ばれる『和』の世界こそ、この世の本当の姿である」と示されました。「自分が尊いと同じように他の一切も尊い」と指導されています。私たちは、この教えをもとに、日本の国民の安全を願うことはもちろん、イラクの人々、現地に派遣されている各国部隊の方々、国や文化・宗教の違いを超えて、すべての人々の平安を心より祈念するものであります。
また会長先生は、今年の方針として「斉家(家庭を斉える)」の大切さを示されました。『大学』の「修身斉家治国平天下」という一節に触れられ、「身を修め、家を斉え、国を治め、世界を治めていくことは、すべて同時に作用する」と教えられました。自分の身を修め、家庭を斉えていくと同時に、国や世界の安寧へ向かわせる努力を絶えず積み重ねていかなければならないということでありましょう。
真剣に平和を願う一人ひとりの力は、必ずや世界平和の建設に大きく貢献する、と信じます。すべてのいのちが尊ばれる『和』の世界を目指して、私たち自身があらためて「平和をつくるその一人になりたい」との誓願を新たにし、平和への祈りと行動を重ねてまいりたいと思います。
(2004.01.30記載)
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