「第21回庭野平和賞」の受賞者(団体)が、内戦の続くアフリカ・ウガンダで、非暴力による紛争解決に取り組む「アチョリ宗教者平和創設委員会」(ARLPI)に決定しました。庭野平和財団(庭野日鑛総裁、庭野欽司郎理事長)は2月25日、本会京都教会で記者発表会を開き、席上、庭野理事長が正式に発表しました。アフリカ大陸からは初の受賞となります。ARLPIは、ムスリムとキリスト教徒による諸宗教協働組織。対立する政府軍と反政府軍の仲裁役を務めるほか、平和を創造する人材育成、紛争被害者の救済活動を進めてきました。
「庭野平和賞」は、宗教的精神に基づいて宗教協力を推進し、宗教協力を通じて世界平和の実現に顕著な功績を残した個人・団体に贈られます。世界125カ国、約1000人の識者に推薦を依頼し、昨年5月に発足した「庭野平和賞委員会」(宗教協力、平和活動に取り組む10人の宗教者で構成)で厳正な審査を行い、今回の受賞団体が決定しました。
ARLPIは1998年、イスラームやキリスト教(カトリック、聖公会、ギリシャ正教)の宗教者によって発足。一貫して非暴力による紛争解決を目指してきました。現在、13人の宗教指導者、14人のスタッフ、400人以上のボランティアが活動に携わっています。
ウガンダでは英国の植民地時代から前政権まで、アチョリ人ら北部諸民族出身者が警官や兵士に登用され、軍の中核を担いました。一方、現在の政府軍は南部の民族が主力。86年に現政権が誕生して以降、同国北部では政府軍と歴代政権の軍の残党を中心とした反政府軍との間でゲリラ戦が激化しました。
特に、「神の抵抗軍」(LRA)と呼ばれる反政府軍は、内戦の中で一般住民の人権を著しく侵害し続けてきました。住宅、学校、保健センターなど村の社会基盤を破壊し、殺害、暴行、略奪を繰り返しました。少年兵への登用や性的搾取をねらった児童、若者の誘拐は日常化し、その数は2万人に及びます。今年2月21日には、LRAが避難民キャンプを襲撃し、住民200人が虐殺されました。最近は同国東部にも被害が拡大しつつあります。
こうした中、ARLPIは政府とLRAの対話を促進するため、命がけの努力を続けています。ムセベニ大統領と直接会談を行った結果、ARLPIが政府側正式代表として指名され、和平交渉に乗り出しました。一方、LRA指導部からも仲裁役を果たしてほしいとの要請を受けたことがあります。紛争地域での交渉は多大な困難を伴うが、対話への懸命な取り組みを行っています。
また、ARLPIは暴力に対して明確に反対する意向を表明していこうと、虐殺の行われた場所で「祈りの集い」と行進を主催。毎年12月31日には、グル、キトグム、パデルの各県でピース・マーチを行い、多くの市民と共に戦闘の中止、対話の実現を訴えてきました。
一方、人材育成を図りながら、平和構築や人権啓発にも積極的に力を注いでいます。紛争の被害を受けた地域に「平和委員会」を設立し、ボランティアに対して紛争への対処(交渉と仲裁、調停と和解のプロセス)、トラウマを負った被害者への心のケア、コミュニケーション能力やリーダーシップの向上などのトレーニングを実施。さらに、各平和委員会が収集した情報はARLPIに集約され、出版活動やマスコミへのリポートに活用されています。正確な調査報告により、和平実現に向けた国内外の世論づくりに貢献してきました。
18年にわたる内戦では120万人以上の国内避難民が発生しました。キャンプで生活する児童や青年の教育問題も深刻です。こうした事態に際し、ARLPIは2001年から、「教育プログラム」を導入。また、キャンプ外でも経済の破綻により学費の払えない子供が増えていることを踏まえ、「学費援助プロジェクト」を展開しています。さらに、誘拐された子供たちが村のコミュニティーに帰ってきた際、身寄りがなく、保護が与えられないケースも多いことから、そうした子供たちへの保護と支援活動も行ってきました。
こうした取り組みをARLPIの主要メンバーは「単に人間による活動を行っているのではなく、神と協力している」と明言します。宗教の違いがあっても、すべての宗教者が連帯し、暴力を終わらせるよう一丸となって行動することが、市民の声、神の声を明確に代弁することになると確信しているのです。
「第21回庭野平和賞」の受賞に際し、ARLPIのジョン・バプティスト・オダマ会長(カトリック大司教)は、「ウガンダの人々、特に北部と東部の人々を代表し、感謝の心で第21回庭野平和賞をお受け致します」とメッセージを寄せました。
贈呈式は5月11日、東京・丸の内の東京国際フォーラムで行われ、庭野総裁から正賞として賞状、副賞として顕彰メダル、賞金2000万円が贈られます。
なお、3月1日、大聖堂で行われた「布薩の日」式典の席上、庭野理事長が会員に対してARLPIの「第21回庭野平和賞」の受賞を発表しました。
(2004.03.05記載)