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2005年03月22日 新宗連が『「臓器移植法」改正に対する声明』を発表

新宗連(新日本宗教団体連合会)は3月22日、庭野日鑛理事長名で『「臓器移植法」改正に対する声明』を発表し、自由民主党「脳死・生命倫理および臓器移植調査会」の佐藤泰三会長らに提出しました。

「声明」では、現在検討されている改正案に懸念を示し、本人が生前に拒否をしない限り、年齢を問わず家族の同意で脳死での臓器移植が可能となることに反対。「人間の生と死についての考えは、それぞれの人生観、死生観によって異なり、人間存在と深くかかわることから、『本人の意思』は最後まで尊重されなければならない」と表明しました。
また、脳死・臓器移植という治療法が普遍的な医療にはなりがたい、と指摘した上で、関係者が生命の尊厳や人権を侵害することのない十分な法整備を図るよう、厳正な国会審議を求めました。
新宗連は1997年4月に生命倫理研究会を設置。脳死・臓器移植に関する問題の研究を重ねています。

【「臓器移植法」改正に対する声明】

新日本宗教団体連合会は、「臓器の移植に関する法律」(以下「臓器移植法」)改正をめぐる諸問題に対し、国民の人生観、死生観の形成に寄与してきた宗教者の立場から、以下のとおり見解を表明するとともに、すべての国会議員が慎重な国会審議を尽くされますよう要望いたします。
臓器移植法が施行されて7年余が経過しましたが、脳死状態であっても心臓が動き、温かい血液が循環する人間の身体を「人の死」とすることに未だ国民的合意は得られておりません。医学界においてすら脳死・臓器移植に関して相反する意見があり、専門家の見解は確定していないのが現状です。
こうした状況の中、「臓器移植法」の改正案では、本人が生前に拒否をしない限り、年齢を問わず家族の同意で脳死での臓器移植を可能とする案が検討されております。しかし、人間の生と死についての考えは、それぞれの人生観、死生観によって異なり、人間存在と深くかかわることから、「本人の意思」は最後まで尊重されなければならないと考えます。
現在、臓器提供の意思表示は、あくまで本人の意思により書面によってなされています。しかし、改正案で導入が検討されている運転免許証や保険証での意思表示は「臓器移植法」の趣旨を歪め、移植現場に混乱を引き起こすものと思量し反対をいたします。
さらに15歳未満の小児の意思表明については、多くの問題をかかえており、現在の状況では15歳未満にまで拡大することに反対をいたします。
「臓器移植法」の改正にあたっては、(1)脳死を一律に「人の死」としない、(2)本人の承諾なしに臓器摘出を行わない、(3)本人の承諾なしに脳死判定を行わないことを明記するよう、あらためて要望申し上げます。
私たちは、医療技術の発達がもたらした脳死・臓器移植という治療法は、他者の重要臓器の摘出を前提としている限り、普遍的な医療にはなり難く、過渡期的な治療法、緊急避難的な治療法と言わざるを得ないと考えます。また、脳死・臓器移植は他者の生命を受けて行われるものであることを考えるとき、関係者が生命の尊厳や人権を侵害することのないよう十分な法整備を図るよう、厳正な国会審議を切望いたします。
私たち宗教者は、それぞれの教化活動を通じて生や死の問題について深く考え、より一層生命尊重の精神を喚起していくことを決意するものであります。

合掌

平成17年3月22日
新日本宗教団体連合会
理事長 庭野 日鑛

(2005.04.08記載)