本会も加盟する「特定非営利活動法人ジェン」は2003年9月からイラクの首都バグダッドで学校修復事業を展開しています。イラク戦争終結後の復興支援としてスタートした同プロジェクトにより、約3万6000人の子供たちがより快適な学校生活を送るようになりました。先ごろ、前アンマン事務所長の川勝健司氏(現イスラマバード事務所長)が一時帰国し、事業の詳細やイラクの現状について報告しました。
ジェンは2003年4月、イラク戦争後のバグダッドに入り復興支援のためのニーズ調査を開始しました。当初、市内にある1500の小中学校のうち、多くが経済制裁により、定期的なメンテナンスを行うことができず校舎の老朽化が進んでいました。その上、イラク戦争の影響で、窓ガラスや壁が損壊し、子供たちが安全に授業を受けられる環境ではありませんでした。こうした状況を受け、ジェンはユニセフ(国連児童基金)と協働で、同年9月、「学校修復事業」に取り組むことになりました。
川勝事務所長の報告によると、2003年9月から現在までに47校の修復が完了。4校が修復段階にあり、今後も10校での作業が予定されています。
具体的には、剥がれ落ちた壁の塗装、床のタイルの張り替え、新しい窓ガラスの設置などを行いました。また、ライフラインが破壊され、上下水道が機能せず、トイレの衛生状態が悪かったため、水道システムを整備し、トイレのスペースも広くしました。さらに、障害児用のトイレも設置しました。校門や建物の壁面に絵を描き、明るい雰囲気を演出しました。同プロジェクトにより、約3万6000人の子供たちが快適な学校生活を送るようになりました。現在イラク全土では、延べ約55万人が小・中学校に通い、生徒数の多いところでは、午前、午後に分かれシフト制で授業が行われています。
こうした事業と併せて、ジェンはユニセフと協力し、衛生教育プロジェクトを進めています。新校舎を清潔に保つため、掃除用具キットを配布し、生徒たちが自主的に清掃を行っています。また、手洗いや歯磨きを促すポスターやブックレットを配布し、教師対象の衛生教育ワークショップも展開しました。
イラク戦争から3年以上が経過しましたが、現地の状況は悪化の一途をたどっています。バグダッドでは毎日のように爆破テロが発生し、多くの市民が犠牲となっています。そうした治安状況の中でプロジェクトを進めることも困難になっているといいます。
「イラクの人たちは、発生非常に厳しい状況の中で生活しています。イラク戦争後3年が経過し、日に日にメディアの関心も薄れつつありますが、それは、状況が好転しているわけではなく、むしろ悪化する状況の中で、注目が低くなっているのです。ぜひ、いろいろなかたちでイラクの現状について知って頂いて、引き続き、イラクに対するご支援を頂ければ幸いです」と川勝事務所長は語っています。
(2006.07.07記載)
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