WCRP(世界宗教者平和会議)国際委員会主催による「WCRP西欧州青年事前会議」(7月11~13日、スイス・ジュネーブ)、「WCRPイスラエル・パレスチナ青年事前会議」(同14~16日、エルサレム)が開催されました。西欧州事前会議には、12カ国から24人の青年が出席。イスラエル・パレスチナ事前会議には、ユダヤ人、パレスチナ人の青年21人が参加しました。両会議ともに、暴力の現状、問題の本質について熱心な議論が重ねられ、解決に向けた対話の重要性が確認されました。日本から松本貢一・WCRP国際青年委員会(IYC)副委員長=本会青年本部長=が出席。両会議であいさつに立ち、平和実現に向け青年の協働を呼びかけました。
8月、WCRPVIII(第8回世界宗教者平和会議)が京都で行われるのに先立ち、初の「WCRP青年世界大会」が広島と京都で開催されます。今回の西欧州とイスラエル・パレスチナでの会議は、その事前の取り組みとして位置づけられています。事前会議はこれまで、アジア、北米、南米、日本、アフリカ、中央・東欧州、中東でも行われ、イスラエル・パレスチナが最終開催地となります。事前会議に参加した世界の宗教青年リーダーの総数は、延べ80カ国から860人に上りました。
【西欧州事前会議】
ジュネーブ市郊外で行われた西欧州会議には、カトリック、プロテスタント、ユダヤ教、イスラーム、ヒンズー教、仏教の各宗教組織から諸宗教対話に取り組む青年宗教者24人が参加しました。
西ヨーロッパ諸国は過去にアジアや中東地域などに植民地を抱えていたこともあり、歴史的に数多くの移民や難民を受け入れてきました。異なる人種、宗教、文化を持つ人々が暮らす中で、近年は諸宗教対話の重要性が強調され、各宗教組織や市民レベルでさまざまな取り組みが行われています。
11日の開会式では、ジアド・ムーサ・IYC委員長のスピーチに続き、青年世界大会の受け入れ国を代表して松本・同副委員長があいさつ。「地球上に横たわるいくつもの困難な諸問題を解決していくことは、今、まさにこの時代を生きている青年の責任、使命」と述べ、世界の青年が手を携え、共に行動する重要性を訴えました。
このあと『平和のために集う青年宗教者ーーあらゆる暴力を乗り越え、共にすべてのいのちを守るために』のテーマに基づき、各参加者が同地域での暴力の現状、その克服に向けた青年宗教者の役割や諸宗教対話の取り組みなどを説明。社会的、心理的抑圧も暴力であるとの共通認識のもと、「多様性を尊重するヨーロッパ」であるために、諸宗教対話によるさらなる相互理解の促進が合意されました。
最終日には議論を踏まえ、共通の志を持つ仲間を増やすことと青年宗教者によるネットワークの構築を盛り込んだ「宣言文」を採択しました。
【イスラエル・パレスチナ】
イスラエルとパレスチナの対立は国際情勢におけるもっとも深刻な問題となっています。IYCではこの問題を重視し、エルサレムでの事前会議開催を決め、準備を進めてきました。
今回のエルサレムでの会議には、ユダヤ6人、パレスチナ15人の青年が参加しました。ユダヤとパレスチナの青年が日常生活の中で、互いに面と向かって話し合う機会は少ないと言われます。さらに、同国北部とレバノンでの紛争も加わった厳しい状況の中で事前会議は始まりました。
今会議は、WCRP国際委員会と共に、イスラエル諸宗教協議会(ICCI)と民主主義の普及やパレスチナ青年の育成にあたるNGO(非政府機関)「パノラマ」が受け入れにあたりました。14日の開会式では、WCRP国際委員会を代表し、松本・IYC副委員長がスピーチ。このあと、ICCI代表のロン・クロニシュ博士があいさつし、「厳しい状況にある今こそ、互いに出会い、互いの宗教を理解し、紛争について率直に話すことが大事」と語りました。
3日間にわたる会議では、パノラマのワリード・サーレム代表による『人間の安全保障』についてのセミナー、イスラエル軍の攻撃やパレスチナ人の自爆攻撃で家族を失った遺族との会合などを開催。参加者は対立する立場の者同士の対話、理解が欠如している中で、相手への恐怖がさらなる暴力を生んでいる現状、組織や集団よりも個々の人間の尊厳がいかに大切であるかということを学びました。
また、グループ討議では赤裸々に各自の考えを吐露。全員参加によるイスラーム、ユダヤ教、キリスト教の祈りのプログラムも実施され、互いの宗教に対する理解を深めました。
参加者の一人は「ユダヤ人、パレスチナ人の双方ともに苦しんでいることが分かりました。それを理解した上で物事を考えることにより、何か解決できるのではないかと思いました」と語りました。
(2006.07.21記載)