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2006年08月24日 WCRP女性会議開催

「WCRP(世界宗教者平和会議)女性会議」が8月24、25の両日、『信仰を持つ女性――行動のための結集』をテーマに京都市の国立京都国際会館アネックスホールで開催され、51カ国から約500人の女性宗教リーダーが参加しました。全体会議やワーキンググループセッションなどを通し、紛争解決、平和構築、持続可能な開発について女性宗教者の役割を討議。宣言文も発表された。本会からは、WCRP日本委員会婦人部会部会長の泉田佳子・元責任役員と庭野光祥次代会長が正式代表として出席したほか、オブザーバーとして多くの会員が参加しました。

<開会式>
24日午後に行われた開会式では、サヌカイトの幻想的な音楽が流れる中、中山身語正宗の八坂有峰師が日本の伝統文化である茶道の儀式を披露。泉田部会長が献茶を行い、歓迎のあいさつを述べました。この後、ガンジー開発財団評議員のエラ・ガンジー氏(元南アフリカ議会議員)が基調講演に立ちました。
ガンジー氏は、世界の女性がさまざまな場面で身体的、性的、精神的、経済的などあらゆる暴力に直面していることを紹介し、「ほとんどの場合、暴力によって最も大きな悪影響を受けているのが女性と子供です。これは犯罪であり、深刻な人権侵害であり、決して見過ごしてはなりません」と訴えました。その上で、家父長制度の中で、女性たちが自らの声を上げてこなかったことがその仕組みを助長してきたと述べ、女性の責任にも言及。「女性はいろいろな能力や技能を持ち合わせており、紛争後の社会再建などでも非常に大きな貢献をしてきました。私たち女性信仰者は暴力、紛争の被害者をサポートし、また適切に介入することにより、それを阻止できるはずです。そのためには、宗教の壁を越えて対話をし、互いに支え合っていくことが大切です」と語りました。

<全体会議>
『共にすべてのいのちを守るために――諸宗教協力における国・地域・地球規模の女性宗教者ネットワーク』をテーマに行われた全体会議では、シャンティ・アシュラム事務局長のヴィヌ・アラム博士を議長にパネルディスカッションが行われました。7人のパネリストが登壇し、それぞれの地域が抱える「暴力」に対する取り組みや諸宗教ネットワークによる活動内容などを発表しました。
ヨーロッパで増加する移住労働者の問題を提示したのはWCRP国際委員会名誉会長のジャクリーン・ルージュ氏。宗教の違いによる不調和を克服し、信教の自由を堅持するためには宗教間の対話が必要不可欠であると指摘し、「女性宗教者によるコミニティーをつくり、よりよい生活水準を追求しながら国や地域レベルの対話を推進することで、一人ひとりの安寧と保障を生み出すことができる」と語りました。
イラクイスラム党代表のイスラ・サリム・アル・マサディ氏は、イラク社会では、イラク戦争以前はさまざまな宗教や民族が共生していたと強調。米国によるイラク攻撃以降、「武力の暴力によってイラク人は人権侵害にさらされ、女性や子供が性的虐待を受け、占領軍に殺されました。この暴力に報復するための暴力がテロのレベルまでエスカレートしてしまったのです」と述べました。イラクの抱えている問題を解決するためには、平和共存のための対話の文化をつくり出していくことが必要と訴えました。
このあと行われた質疑応答では、米国の女性宗教者がマサディ氏に、同国によるイラク攻撃に対する遺憾の意を表明。「お話を聞かせて頂き、本当にありがとうございました」と心の内を明かすと、マサディ氏が「世界のすべての女性は、女性の苦しみを感じとることができるでしょう。心から感謝を申し上げます」と伝え、会場内から温かい拍手が沸き起こりました。

<ワーキンググループセッション>
25日朝、参加者は『国・地域・地球規模の女性宗教者ネットワークの構築・強化』をテーマとした「地域別会合」に臨み、アフリカやアジア(中東を含む)・太平洋、ヨーロッパなど5グループに分かれて討議を行いました。
アジア・太平洋のグループでは、「子供の教育」と「女性宗教者によるネットワークの強化」が論点となりました。インドの女性が、同国内の200以上の学校で道徳教育を行う教師の養成が行われていることを発表。これに呼応し、イラクからの参加者が「子供のころから宗教を基盤とした道徳教育を受けることで、正しい価値観を身につけられる」と述べ、未来を担う子供たちにとり、道徳教育が平和への第一歩となるという見解がまとめられました。
午後からは『紛争和解』『平和構築』『持続可能な開発』をテーマに討議を重ねました。

<総括会合>
総括会合では、「ワーキンググループセッション」の報告が代表者8人によって行われました。テーマ別会合の『紛争和解』のグループからは、WCRPスリランカ国内委員会副会長のシバナンディニ・ディレイスワミ氏が報告を行いました。紛争状況の中での対話の必要性を強調し、「紛争の根本原因を探り、共にそれに立ち向かっていくことが大切」と話しました。また、「中東での地域評議会を立ち上げてほしい」との意見も伝えられました。
このあと、アン・ヴェネマン・ユニセフ事務局長の講演に続き、WCRPの「女性参画促進プログラム」を主導する「国際女性調整委員会(IWCC)」のメンバー10人(うち1人は青年からの代表)が発表されました。地域や宗教を考慮したの公正な選出がなされ、アジア地域と仏教を代表して、泉田部会長が委員に指名されました。

<宣言文発表>
議論での成果は、宣言文としてまとめられました。「女性宗教者は、あらゆる状況が絶望的に思えるときにも力と希望を手にすることができる」との前文で始まる宣言文では、特に女性の「共同活動」を提示。女性の権限強化、人権擁護に関するWCRPの積極的な取り組み、共同体の強化、女性への暴力、人身売買に対して明確に反対していくことなどを要請しました。

(2006.09.01記載)