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2006年08月31日 WCRP世界大会:3会場で報告平和集会

『平和のために集う諸宗教~あらゆる暴力をのり超え、共にすべてのいのちを守るために』をテーマに、「第8回WCRP世界大会報告平和集会」が8月31日、東京、青森、長崎の3会場で行われました(WCRP日本委員会主催、東京では同日本委、特定非営利活動法人明るい社会づくり運動、新日本宗教団体連合会首都圏総支部の共催)。集会は、世界大会で話し合われた宗教者の知恵を学び合うとともに、世界平和への祈りを捧げ、行動に向けた決意を新たにするためのものです。東京会場(普門館)には約5000人、青森会場(松緑神道大和山本部神集閣)には約2200人、長崎会場(長崎カトリックセンター)には約400人がそれぞれ参集しました。各会場では、世界大会の正式代表らによるパネルディスカッションが行われ、『京都宣言』が発表されました。

<東京会場>
世界の宗教者ら24人が訪れた会場では、平和の祈り(黙とう)を捧げたあと、庭野日鑛・WCRP日本委員会理事長が主催者を代表してあいさつ。第1回WCRP世界大会の宣言文――平和への大儀に背いてきたのは宗教ではなく、宗教者である、との一文を引用し「あらためて心に刻むことが大切」と述べました。
続いて、全国明社の石原慎太郎会長(東京都知事)によるビデオメッセージが放映され、ウィリアム・ベンドレイWCRP国際委事務総長が大会を総括しました。
パネルディスカッションでは、コーディネーターの眞田芳憲・WCRP日本委平和研究所所長をはじめ、レオニド・キシコフスキー師(米国・ギリシャ正教会)、ジョン・オナイエケン大司教(ナイジェリア・カトリック)、ビヌ・アラム博士(インド・ヒンドゥー教)、モハマド・サマク氏(レバノン・イスラーム)、杉谷義純師(天台宗圓珠院住職)、徳増公明師(日本ムスリム協会会長)が登壇しました。
この中で、オナイエケン大司教は「貧困は静かに人を殺す。貧困は暴力」とした上で、貧困の原因となる不公正な社会システムをつくるのは「貪欲」と指摘。宗教者の指導力に期待しました。一方、キシコフスキー師は、人間として必要なことは「他の苦しみを知り、共に苦しむこと」として「そのような知恵は、紛争のような場合だけでなく生活の中で重要だ」と述べました。アラム博士、杉谷師、徳増師はそれぞれ人間一人ひとりの実践の大切さを強調。中でも杉谷師は、内省する重要性を明示しました。最後に『京都宣言』が発表され閉幕しました。

<青森会場>
泉田佳子・WCRP日本委員会評議委員のあいさつ、本大会の様子を伝えるビデオ上映に続き、ベアトリーズ・シュルテス師(コスタリカ・民族宗教)が世界大会の概要を報告しました。
パネルディスカッションでは、ドナルド・E・ヘックマン師(米国・プロテスタント)、ベランビラ・ウィマララサナ博士(スリランカ・仏教)、アンジェラ・オリバー氏(WCRP国際事務局紛争解決プログラム局長)、リサ・ロック氏(WCRP国際事務局シニアプログラムオフィサー)を迎えて行われました。
ヘックマン師は、宗教者が協力し、対話を通して内戦終結の方向に導いたウガンダの例を挙げ、宗教コミュニティーが紛争解決に取り組んだ成果を紹介しました。またオリバー氏も、紛争地域における宗教協力の重要性を語り、イラクやスーダンの宗教者が紛争解決に向けて本大会で話し合った様子を伝えました。
ウィマララサナ博士は、宗教、人種などの違いが対立を生む原因と説明しながらも、思いやりなどの共通点を見いだし、平和構築のために協力する必要性を強調し、暴力を乗り越える指針を示しました。
ロック氏は、青年ボランティアが世界大会を陰で支え、自身が辛いときに励まされた体験を報告。「どんな時も笑顔を絶やさずに尽くす姿は、世界大会の中でも一番の感動でした」と語り、延べ2300人の青年ボランティアに感謝を表しました。

<長崎会場>
長崎県宗教者懇話会、新宗連九州総支部の協賛で開催されました。
集会では、WCRP日本委員会の西田多戈止常務理事が主催者を代表してあいさつ。WCRP南アフリカ委員会のパディガリ・デルビル・メスキン会長による世界大会報告に続き、同日本委の八坂隆憲評議員が大会で採択された宣言文を発表しました。
このあと、パネルディスカッションが行われ、パネリストとしてブライアン・ウォーカー博士(英国国教会)、シスター・ジーン・グーレ師(カナダ・カトリック)、シスター・メリー・エレン・フランクール師(カナダ・カトリック)、アフリカ諸宗教指導者評議会理事のマンスール・シ師(セネガル・イスラーム)が登壇。同日本委平和研究所の山田經三師がコーディネーターを務めました。
この中では、世界の貧困問題について意見が交わされました。ウォーカー博士は、世界で貧困によって年に1800万人以上が亡くなっている現状に言及し、「貧困という暴力の解決に取り組まない限り、共にすべてのいのちを守ることはできない」と指摘。シ師は、宗教が暴力の原因と考えられていることに触れ、宗教が対話と交流を促進して貧富の格差を是正し、バランスのとれた世界の実現に貢献していくよう訴えました。
一方、グーレ師は、貧困の解決手段として教育の重要性を強調。フランクール師は「平和実現のためには、すべての命に崇敬の念を持つことが大切」と述べました。
なお、前日には海外宗教者5人と山田師らが原爆資料館を見学し、爆心地公園と平和公園で原爆犠牲者に祈りを捧げました。

(2006.09.08記載)