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2007年02月16日 「一食ユニセフ募金」支援先からの報告


(写真提供・UNICEF)

「一食ユニセフ募金」の指定拠出先であるアジア6カ国(アフガニスタン、ミャンマー、ラオス、インド、カンボジア、フィリピン)の各ユニセフ(国連児童基金)事務所から、このほど浄財の使途やその成果などをまとめた報告書が届きました。

ユニセフを通じた本会の6カ国に対する支援は、2004年から3カ年計画で実施されました。本会では浄財の使途を教育事業に指定し、貧困や伝統的なジェンダー意識のため学校に通えない子ども、また親やその他の大人からの保護を十分に受けられずにいる子どもたちなどを支援してきました。
各ユニセフ事務所からの報告書には、多くの子どもたちに教育機会を提供できたほか、教育環境の整備などに役立てられた成果などが明記され、浄財が有効に活用されていることが伝えられています。
なお、6カ国のうちアフガニスタン、ミャンマー、ラオス、インドの4カ国に対しては、昨年度分の浄財の委託をもって終了。今年度からの「一食ユニセフ募金」は、継続となるフィリピン、カンボジアに東ティモール、ネパールを加えた4カ国への支援に充てられます。使途については、「世界中の子どもを学校に行かせたい」という願いのもと、引き続き、教育事業に役立てられます。

【ユニセフカンボジア事務所教育担当官・服部浩幸さんからのメッセージ】

ユニセフ教育プログラムに対する温かいご支援に心より感謝申し上げます。
東南アジアの最貧国の一つであるカンボジアでは、貧困、子どもの家庭内外での労働が、子どもたちの教育の機会を妨げる原因となっています。義務教育である小学校の入学年齢は6歳と定められていますが、農村地域では6歳を大幅に過ぎてから入学するケースも少なくありません。世界銀行の調査によれば、入学が遅れた生徒は中途退学する割合が非常に高いという結果が出ています。中途退学を減らすためにも、6歳に達した子どもたちを確実に小学校に入学させることが重要です。ユニセフではコミュニティー幼稚園を支援し、就学前教育の推進に力を入れています。
コミュニティー幼稚園では、皆さまからのご支援によって、簡易教室の設置や学習教材の供与、教員の再訓練を行うことができました。さらに首都から遠く離れた地域の小学校に校舎を新設し、教育環境の整備も進めています。学校で子どもたちがはつらつと活動している姿から、教育状況が改善されていることを感じとることができます。
私たちが教育を特に大切だと考える理由の第一は、教育が子どもたちにとって重要な権利の一つだということです。第二に教育は、子どもたちの社会的、倫理的、感情的、および精神的な発達を促します。教育を受けることで、子どもたちは知識や生きるためのライフスキルを身につけ、自分の進路を選択するための基礎を築くことができます。
一方、ユニセフでは、HIV(エイズウイルス)の問題も最重要課題の一つに位置づけています。カンボジアでは過去5年間、HIV感染が減少傾向にありますが、それでもなおアジア地域で最も感染率が高い国の一つです。HIVと共に生きている人々やその家族をサポートしているほか、学校外にいる児童、青年を対象に、HIVに対する知識を提供し、コミュニケーションや情報に基づく意思決定スキル、自己管理スキルを向上させる教育も支援しています。ここでも教育によって、危険性の高い行動を控え、また危険に直面した場合にも適切な対応ができるようになります。
教育の普及が地域社会にさまざまな便益をもたらすことは、世界各地で証明されています。教育水準の向上は、開発途上国で、収入や農業生産性の向上につながることが確認されており、特に女性の教育水準の向上は、子どもの栄養状態の改善や乳幼児死亡率の低減につながることが報告されています。
日本やアジアの新興国の例が示すように、教育水準の向上、とりわけ、基礎教育の早期完全普及は、経済発展のための必要条件です。教育を通して、その社会の基礎となる普遍的な価値観を子どもたちに広めることで、民主主義に基づく安定した国家の構築にも寄与するものと考えられます。
すべての子どもたちが学校に通い、楽しく学びながら、最大限の能力を発揮できることを目指し、今後とも全力を尽くしていく所存です。

■「一食ユニセフ募金」各国支援の詳細

【カンボジア】

首都プノンペンから遠く離れた地域では、教育環境や施設が整備されておらず、すべての学年に適切な教育を提供できない「不完全学校」が多数存在します。低、中学年を終えた後には、離れた村にある完全学校に通わねばならず、地理的、経済的理由また安全性の面から多くの子どもたちが中途退学してしまうのが現状です。
本会の支援により、ユニセフではこれまでに、ラオスと国境を接するストゥン・トレン州の小学校3校で、男女別のトイレや給水所、校舎を新設し、教育環境を大幅に改善しました。就学前教育を推進するため、コミュニティー幼稚園を開園したほか、幼稚園教員、母親、女性グループに対して、幼児教育に関する研修も実施しました。
また、タイと国境を接する2つの郡で、就学状況調査や就学キャンペーンを実施したほか、教員の育成にも力を注ぎまし。その結果、就学率や初等教育修了率に急速な改善が見られました。
小学校就学率は格段に向上し、男女格差も縮小傾向にあります。一方、地域間格差は依然として存在し、教育環境や質の問題から高い中途退学率を示しています。そこで、農村部での教育格差の是正を図るため、引き続き支援を行います。

【フィリピン】

国内には25万人のストリートチルドレンがいるといわれています。
ユニセフは、教育、保健医療、安全な水や公衆衛生を享受するといった基本的な権利さえ満たされない状況で暮らす彼らを保護し、社会復帰させるためのさまざまな事業に取り組んできました。この中で、本会の支援は、路上や学校外での識字教育をはじめ、HIV(エイズウイルス)に関する知識を含めた教育や職業訓練、薬物使用者に対する医療援助や心のケアなどに充てられています。
その結果、多くの子どもが基礎学力を身に付け、公的教育機関への復帰の意思を固めるとともに、意思決定や問題解決能力、リーダーシップや対人関係に改善が見られるようになりました。また、ストリートチルドレンの保護者を対象としたカウンセリングや子育て指導、ソーシャルワーカーなど専門家への研修など、子どもの権利や保護についての理解を深める機会も提供されています。こうした取り組みを通し、これまでに15000人以上の子どもたちが支援を受けました。現在も保護を必要とするストリートチルドレンが多数存在することから、本会では今年度からも引き続き、ユニセフの同国の事業を支援します。

【アフガニスタン】

長年にわたる紛争と旱ばつの影響は大きく、人々の生活はいまだ厳しい状況が続いています。治安が安定していないこともあり、「女の子が安心して通える学校がない」「家の近くに学校がない」などという理由から、親が女子を学校に通わせないケースも多いようです。
ユニセフはこうした事態に対し、既存の集会所やモスクなど、子どもたちにとって身近で安全な場所を利用した「コミュニティを基盤とした学校」づくりに取り組んでいます。2004年から3年間で、同校を3996校設置、93663人の子どもたちを復学させました。
本会からの支援は、こうした「コミュニティを基盤とした学校」で学ぶ子どもたちの教科書の製作に充てられています。これまでに制作、配布された教科書は22万冊以上にのぼり、子どもたちの教育機会を支えています。

【ミャンマー】

山岳部などの貧しい地域では多くの子どもたちが学校に通えず、また入学しても進級、修了することが困難な現状です。
本会からの支援は、すべての子どもたちが学校に通えるよう、同国でも特に貧しい地域でユニセフが進める「子どもに優しい学校プロジェクト」(教育の質を高めることを目的とした教師への研修、貧困家庭の子どもたちへの学用品の提供、学校施設の整備など)に役立てられています。
同プロジェクトを通じた本会の支援は、これまでに学校923校、教師3661人、子ども8万8970人に上ります。その結果、プロジェクト実施地域の就学登録率は95%に達しています。
なお、本会は、この9年間、継続して同国を支援しており、これまでに18万8500人の子どもたちの生活改善、教育機会などを支えたことがユニセフから報告されています。

【ラオス】

子どもたち、中でも女子の就学率の低さが大きな問題となっています。その背景には学校、また適切な資格を持った教師の不足といった点のほか、女子教育を重視しない伝統的なジェンダー意識など、さまざまな原因があるとされています。
こうした状況に対し、本会の支援は特に女子教育の普及・拡大を目的としたさまざまな事業に役立てられています。中でも給水施設(13カ所)やトイレ(1177カ所)の設置、井戸(24カ所)の掘削などは衛生面の改善だけでなく、女子の家事負担を軽減する目的も含まれており、親が子どもの通学に理解を示すことにもつながっています。
このほか、本会の支援により、教師や親など子どもの世話をする人々への研修をはじめ、教育を担当する行政機関への提言、サポートなども行われています。

【インド】

国内でもとりわけ貧しい地域であり、特に教育環境が整備されていないビハール州のパトナ、バイシャリの2つの地域で実施されている初等教育の普及・拡大事業を支援しています。
特にこの地域は、教育機会に恵まれていない女子が多いことを受け、本会では基礎教育や職業技能教育を提供する代替教育センター(98校・延べ5500人の女子が参加)や、集中夏季学習キャンプ(350村で開催・約1万人の女子が参加)の実施を支援。また、子どもたちの出席率や学習効果の向上を目的にコミュニティーが主体となって進める、学校給食事業も支えています。
なお、2003年に81万5000人だった両地域の郡の就学児童数が06年には112万人に増加したこと、バイシャリの600を超える村のすべての子どもが就学するようになったことも報告されています。

(写真提供・UNICEF)

(2007.02.16記載)