『宗教者である研究者が集える領域づくり』をテーマに「第6回教団付置研究所懇話会」が10月15日、東京・港区にある浄土宗大本山増上寺の光摂殿で行われました。20研究所から約110人が参加。本会からは中央学術研究所の今井克昌所長、吉津隆史所員が出席しました。当日は研究発表のほか、総会、懇親会が行われ、宗教から見た日本社会の現状、宗教界が抱える課題などについて意見が交わされました。
教団付置研究所懇話会は、各教団に設置された研究機関が宗教、宗派の違いを超え、情報交換や研究協力の可能性を探っていこうと5年前に発足。年に1回懇話会が開催されるほか、生命倫理研究部会に続き、宗教対話部会も発足し、専門的な取り組みが始まっています。
懇話会では歓迎のあいさつに続いて、『日本におけるイスラーム――「日本的イスラーム」から「イスラームのスピリチュアリティ」を問う』をテーマに宗教情報センター(真如苑が出資)の葛西賢太研究員が研究発表しました。イスラーム圏からの外国人滞在者が増える中、日本人配偶者に加え、自らイスラームに入信する日本人の増加を紹介。日本的イスラームが生まれつつある状況や可能性について説明しました。
午後には、神社本庁教学研究所教学課の島津宣史課長が『「神社に関する意識調査」について』をテーマに、国際仏教交流センターの岡野正純常務理事が『日本伝統仏教におけるEngaged Buddhismの可能性を探る』と題して研究を発表しました。
島津氏は、神社本庁が平成8年、13年、18年に実施した意識調査に触れ、数値の変動を報告。先祖観の変化や、かつては年齢を重ねるに従って宗教への関心が高くなっていましたが、最近は50、60歳でも数値が低い数値に止まる傾向にあると分析しました。
また岡野氏は、「社会参加仏教」や「社会をつくる仏教」と訳される「Engaged Buddhism」の活動の歴史や、代表者の取り組みに触れ、近年、日本でも若い僧侶を中心に社会問題に向き合う活動が生まれていることを紹介。その上で、対立を離れ、現実を正しくとらえ、バランス感覚をもって問題と向き合う「中道を実践する仏教」を提唱しました。
(2007.10.26記載)
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