教育者教育研究所(北村泰章所長)主催の「第37回全国教育者研究大会」が1月26、27の両日、『真の教育者を目指して~人間教育は家庭から~』をテーマに法輪閣で開催されました。全国から各教会に所属する現職教師など約600人が参加しました。
教育者教育研究所は昭和43年、庭野日敬開祖の提唱により創設されました。教師自身の人間性の向上と仏教真理に基づいた教育の実現を目的に、全国の現職教師や教育関係者などを対象に学習会や教育相談活動を展開。年間の主要行事である全国教育者研究大会もその一環として開催されています。
大会の冒頭、渡邊恭位理事長が本会を代表してあいさつを行いました。渡邊理事長は、現在の日本の繁栄は経済的なものであり、物に支配される考え方が社会生活の規範を崩壊させる原因になっていると指摘。「三つの実践」などを通し、自分のいのちに感謝して相手を思いやることのできる教育を目指してほしいと期待を寄せました。
続いて北村所長が同研究所の「平成20年次方針」を発表しました。今年、同研究所は『法華経観に立脚した教師を目指して』を重点項目に掲げ、さまざまな取り組みを決定。教育現場での実践はもとより、まずは教師自身が本会の基本信行を通し自分自身の心をみつめ、ご宝前を中心として、本仏へ祈りを捧げて生活する重要性が強調されました。
この後、『こころ・命』と題し、北法相宗管長で清水寺貫主の森清範師が講演を行いました。森師は、扉を開けて秘仏を拝観する「御開帳」が、煩悩を取り除くと仏性が開顕するという心の構造と酷似していると説明。「一切衆生悉有仏性」という仏教の教えの通り、仏とは心の中に生きており、いのちそのものを指すと解説しました。また、いのちとはこの世に存在するすべてのものの共通点であり、いのちの尊さを説くことは、人種、宗教などあらゆる違いを乗り越え、互いを認め合うきっかけになると強調しました。
さらに森師は、現代は生きている実感やいのちのつながりを認識しづらい社会であると指摘。この世に表れるものすべてが同じいのちを生きていると感じることで、相手が愛おしくなり思いやりの心が生まれてくると述べました。
この後、代表者2人が実践発表を行いました。
2日目には、埼玉県教育委員で音楽家の松居和氏が『先進国における家庭崩壊』をテーマに講演しました。松居氏は、アメリカやスウェーデンなどの例を挙げ、福祉サービスが充実することの弊害として、親の養育放棄が顕著になっていると指摘。乳幼児期の子供と触れ合わないことで忍耐力、想像力の低下した人間が増加し、社会のモラルが欠如する一因となっていると説明しました。その上で相手を思いやり優しく見守る心は、子供と触れることで生まれる「親心」によって育まれると強調。子供を通して家族の信頼や絆を強めることの重要性を語り「子育てに正解はありません。表面の言葉や態度に一喜一憂するのではなく、子供の幸せを願い、祈りを捧げることが大切」と述べました。
このほか、大会では参加者同士の「グループ別話し合い」が行われました。生徒とのかかわり方や職場での人間関係などについて語り合われ、相手の問題点を指摘するのではなく、自分がアドバイスを受け入れる謙虚な姿勢をもつことが大切、など意見が交わされました。
参加者の一人は「大会を通し、受け持つ親子の幸せを願ったかかわりが教育者として大切だと学びました。これからは一層、相手の心に寄り添った対応をしていきたい」と感想を述べました。
(2008.2.1記載)
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