『宗教者である研究者が集える領域づくり』をスローガンに掲げる「教団付置研究所懇話会」の第8回年次大会が10月9日、神奈川・横浜市の孝道山本仏殿大黒堂会館で行われました。大会のテーマは『自死について』。23の研究機関から約100人が参加しました。立正佼成会からは中央学術研究所の篠崎友伸所長、保科和市教務局社会貢献グループ次長ら5人が出席しました。
教団付置研究所懇話会は各教団に設置された研究機関が宗教、宗派の違いを超えて情報交換や研究協力の可能性を探ろうと8年前に発足。年次大会が開催されるほか、生命倫理部会、宗教間対話研究部会も発足し、専門的な取り組みが進められています。
当日は、国際仏教交流センターの岡野鄰子理事長のあいさつに続き、『教義から見た自死』をテーマに浄土真宗本願寺派教学伝道センターの藤丸智雄常任研究員、金光教教学研究所の加藤実教学部長、NCC(日本キリスト教協議会)研究所の土井健司研究員の3人が発表しました。
この中で藤丸氏は、釈尊の高弟であるヴァッカリの自死を例に挙げ、釈尊は自死を選んだ弟子に対し「解脱した」と説いたことを紹介し、「当時、自死を断罪するインド社会の中で、仏教が自死を断罪しなかったのは一つの特徴」と話しました。また、当時も自死を抑止する動きがあったが、「断罪や否認の形で抑止することはなかった」と指摘。特に、自死遺族の心情を考えると、「自死にかかわらず死は生の最後であり、そのあり方は多様で個別性がある。自死と一言でいってもそれをめぐる環境はさまざま。死で個人を見るのではなく、生前の行為を追憶する中で評するのが大事ではないか」と述べました。
午前の発表を受け、午後には、浄土真宗本願寺派教学伝道センターの武田慶之研究員、日蓮宗現代宗教研究所の吉田尚英氏、国際仏教交流センターの岡野正純常務理事の3人が自死に対する各教団や宗教者の活動を報告。この中で、「自殺対策に取り組む僧侶の会」のメンバーである吉田氏は、多くの僧侶が具体的な活動に踏み出せずに悩んでいる現状に対し、「僧侶一人ひとりが、自死対策の現場で社会の苦悩に寄り添いながら答えを探求していく」ことが重要であると強調しました。その上で、「僧侶の会」の活動に触れ、厚生労働省が定めた「いのちの日」(12月1日)に「いのちの日 いのちの時間」を過ごそうと、一昨年から営んでいる自死者追悼法要や遺族の悩み、心情に寄り添う手紙相談の取り組みを紹介しました。
全体会議では6人の発表者による討議と質疑応答が行われました。続く総会では、生命倫理部会の活動が報告され、次期実行委員研究所、当番研究所が発表されました。
(2009.10.16記載)
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