フォコラーレ運動(カトリック在家運動体=本部・イタリア)のマリア・ボーチェ会長が1月15日、初めて立正佼成会を訪問し、大聖堂で行われた「釈迦牟尼仏ご命日(布薩の日)」式典に参列しました。ジャンカルロ・ファレッティ共同会長が同行しました。登壇したボーチェ会長は、本会と同運動の諸宗教対話の歩みなどを紹介しながら、今後も両教団の親交を深め、交流を続けていく大切さを強調しました。
フォコラーレ運動は、一昨年3月に帰天されたキアラ・ルービック師を中心に、1943年に在家のカトリック運動体として誕生しました。62年にローマ教皇ヨハネ二十三世によって認可され、愛と一致を生活の根本精神として運動は世界各地に広まり、現在182カ国で450万人が運動にかかわっています。
立正佼成会とは70年代の庭野日敬開祖とキアラ師の交流以来、対話、親交を深め、WCRP(世界宗教者平和会議)や「仏教とキリスト教シンポジウム」などを通じて協力関係が築き上げられてきました。また会員レベルでの互いの信仰に基づく交流も長く行われています。なお、前会長のキアラ師は、81年と85年に本会を訪問。会員を前にあいさつしました。
マリア・ボーチェ師は、創始者で初代会長を務めたキアラ師の帰天に伴い一昨年7月7日に新会長に選出されました。庭野日鑛会長は同20日にローマ市郊外の同運動本部を訪問し、ボーチェ師に面会。会長就任に対し祝意を表しました。
今回の来日はアジア諸国歴訪の一環。この日は、ボーチェ会長のほか、ジャンカルロ・ファレッティ共同会長らイタリアからの14人に加え、国内メンバー30人が本会を訪れました。
式典では、庭野光祥次代会長導師による読経供養、体験説法に続き、東京佼成ウインドオーケストラが、同運動のミュージカル劇団「ジェン・ヴェルデ」が6年前に日本公演を行った際に共演した『エ・アモーレ』を演奏しました。
次いで光祥次代会長が同運動とボーチェ会長のプロフィルなどを紹介しました。さらに、家族で同国南部のシチリア島を訪れた際の体験を述懐。「復活祭」の祝日で病院や薬局が開いていない中、発熱した子供のために同運動のメンバー2人が親身になって助けてくれました、と語りました。「大切な復活祭を台無しにしてしまったことをお詫(わ)びすると、『私たちに愛を実践する機会を与えてくださってありがとう』とおっしゃってくださいました」とエピソードを交えながら同運動の精神の一端を伝えました。
このあとあいさつに立ったボーチェ会長は、「教えの実践を通してその精神を周囲に伝えている」「在家の運動体」など本会と同運動の共通点を指摘。共通点から生じる共感、相互理解を基に、「私たちは仏教とキリスト教を結ぶ懸け橋になれるでしょう」と語りました。
また、在りし日のキアラ師の信仰姿勢を紹介。あらゆる宗教、国籍、年齢や性別を問わず、自分の「兄弟姉妹」として一人ひとりと向き合ってきた同師の心は、「自分だけでなくすべての人が、神から個人的に限りなく愛されている」との確信によるものと説明しました。
続いて登壇した庭野会長は、一昨年に同運動本部で面会したボーチェ会長の印象を語り、「とても親しみやすく、兄弟姉妹のような感じがして、うれしかったことを思い出します」と話しました。さらに、今後も教団間の交流を深めていく意向を表した上で「世界の平和を目指して共に精進していくことを新たに決意させて頂きます」と語りました。
ボーチェ会長あいさつ【要旨】
自らの「一致」の精神によって「皆が一つであるように」というイエスの祈りの実現に貢献することを望んでいたキアラは、開祖さまの内にこの目的と特別共鳴するものを見いだしました。また開祖さまも、キアラに会われてご自分と同様、不可能とも言える大きな夢を抱いている人物だとお感じになられたそうです。それは「一乗」──すべての人が共に「唯一の乗り物」に乗り、ただ一つの心を持つことができるよう手助けをするという夢でした。
フォコラーレと立正佼成会には類似点があります。「聖典を読むことを大切にしている」「体験を分かち合うグループ」「教えの実践を通して、その精神を周囲に伝えている」「在家の運動体」ということです。こうした共通点により、私たちは出会い、共感し、互いを知り、尊敬し、愛し、一致することができます。私たちは、仏教とキリスト教を結ぶ懸け橋になれるでしょう。実際にここ何十年にもわたって、日本だけでなく、イタリア、スイス、フィリピン、アメリカ、ブラジルなど、世界各地で立正佼成会とフォコラーレのメンバー間で多くの出会いと協力関係が実現しています。
会長先生は、フォコラーレ運動創設60周年にあたってビデオ・メッセージをお寄せくださり、「フォコラーレの皆さまの笑顔を見るとき、私は本当に心が和みます。本会の信者と同じ笑顔をそこに見るからです。開祖さまの時代から培ってきた絆(きずな)を『永遠の絆』にしたいと思います。愛と慈悲に満ちた世界を目指し、今後も手を携えて歩んでまいりましょう」とお話しくださいました。この歩みにおいて、いくつか助けとなることがあります。それは、互いのために祈り、共通点を大切にし、相手をよりよく知ることです。相手を知ることは、宗教のさまざまな側面を深めるシンポジウムを通しても実践されています。「仏教とキリスト教シンポジウム」開催のアイデアは、庭野会長とキアラとの出会いなどを通して生まれたものです。2004年にイタリアで第1回が行われ、その後、日本、再びイタリアで開催されました。来月には第4回がタイで行われる予定です。
私がフォコラーレの会長に選出された数日後、会長先生が会いに来てくださいました。私たちは二人とも創立者を継ぐ立場に置かれた素晴らしい経験をしていること、創立者が始めたことを終わらせず、むしろ発展させていく決意を強くしていることを共に喜びのうちに発見しました。
キアラの教えは、私たちの歩みを照らす光です。キアラは「神が愛である」という深い発見をし、私たちに伝えました。キアラは自分が神から愛されているのを感じるとともに、すべての人が神から個人的に限りなく愛されていることを確信しました。それゆえ彼女もすべての人を愛し、どのような社会階級、年齢、宗教、国籍、性別の人であろうと一人ひとりを自分の兄弟姉妹として見る決意をしました。それは、すべての人が神から愛されているからです。
会長先生は、キアラの没後1年にあたり、次のようなメッセージを送ってくださいました。
「キアラ前会長さまの『愛と一致』の精神、開祖の『慈悲と一乗』の精神が結びつけば、世界に対し、大きな力となると信じます。私たちが培ってきた絆をさらに強固なものとし、手を携えて真実の道を歩んでまいりたいと思います」。
私は会長先生のお言葉に深く共感させて頂きます。明日の世界の救いは普遍的で限界のない豊かな愛を世にもたらす人々にかかっています。私たちは立正佼成会の皆さまとの一層深く親密な協力関係を望んでいます。両団体の創立者の夢である
、「すべての人が兄弟姉妹として生きる世界」を共に築いてまいりましょう。(文責在編集部)
庭野会長、深い友好関係に感謝
1月15日の「釈迦牟尼仏ご命日(布薩の日)」式典終了後、庭野日鑛会長は佳重夫人と共に、大聖堂特別応接室でフォコラーレ運動のマリア・ボーチェ会長、ジャンカルロ・ファレッティ共同会長と懇談しました。立正佼成会から庭野光祥次代会長、渡邊恭位理事長、同運動から国際本部と日本センターのメンバーが同席しました。
懇談の中で、ボーチェ会長が式典でのあいさつで紹介したキアラ・ルービック師と庭野日敬開祖、庭野会長との手紙のやりとりの内容が話題となり、ボーチェ会長は「それは単なる思い出ではなく今も続いている道であり、私たちの生きた経験です」と語りました。さらに、「今日の会長先生のお言葉を通し、フォコラーレと佼成会の関係は神聖な約束だと感じさせて頂きました。それは今は私たちの手にありますが、将来は他の方たちが引き継いでくださるものだと思います」と今後の交流に期待を寄せました。
他のフォコラーレメンバーからは、キアラ師の来日時の思い出なども語られました。また、庭野会長はこれまで築かれてきた友好関係に感慨を表しながら、「イタリアでは光祥夫婦や本会の留学生も受け入れてくださり、交流を深めて頂きました」と感謝を伝えました。この後、ボーチェ会長はじめ一行は一乗宝塔を参拝。庭野会長はフォコラーレ運動のメディアクルーのインタビューに応じました。
「対話の集い」に光祥次代会長が出席
青年本部主催による「マリア・ボーチェ会長との対話の集い」が1月15日午後、大聖ホールで行われました。庭野光祥次代会長、渡邊恭位理事長が出席。昨年、一昨年に「フォコラーレ大志・交流使節団」の一員としてイタリアを訪問した青年部員、教団役職者ら120人が参加しました。
松本貢一青年本部長のあいさつに続き、同使節団に参加した青年部員4人が現地での交流や体験を通しての感想を発表。それぞれがボーチェ会長に質問しました。
この中で甲府教会青年女子部長は、目標を立てても、経験不足からなかなか行動に移せない青年が、一歩を踏み出すため大切なことは何かを尋ねました。ボーチェ会長は、「自分には難しく、力が及ばないと思い悩むのは、自分のことを考えているから。まず自分自身のことを忘れ、自分以外の人、相手の置かれている状況に目を向けることが大事です。しかし、大きな目標を前に、限界を感じることもあるでしょう。だからこそ、他の人と共に行動し、助け合い、神仏の助けを願う。そうしたことが大切」と述べました。
続いて徳山教会学生部長は、自らがいじめに遭う中で、サンガに支えられ、困難な状況を克服した体験を紹介。その上で、いじめや自殺といった問題のとらえ方を質問しました。ボーチェ会長は「そのような問題が起こるのは、人と人との間の愛が十分でないからです。愛こそが人生に喜び、意義を与えてくれます。あなたがつらかったとき、誰かがあなたを愛し、愛こそがあなたを成熟させ、困難な状況を脱することができたのではないでしょうか。あなたが受け取られた愛を、他の人に差し上げてください。それが、世の中全体の愛の量を増やし、孤独や貧困を減らしていきます」と答えました。
最後に渡邊理事長があいさつに立ち、30年以上にわたる本会との交流、今回の集いの開催に謝意を表しました。
(2010.1.22記載)