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2010年09月20日 京都で「イスラーム指導者会議」 庭野会長、開会式であいさつ

庭野日鑛会長は9月20日、WCRP(世界宗教者平和会議)創設40周年記念事業の一環で開催された「イスラーム指導者会議~正しいイスラームの理解のために~」の開会セッションに出席、主催するWCRP日本委員会の理事長としてあいさつしました。会議には、中東を中心とする9カ国から12人のイスラーム指導者をはじめ、オブザーバーなど約30人が参加。庭野会長は、「イスラームへの正しい理解を進めることは、アフガニスタンをはじめとする世界の安定と平和を目指す上で、最も重要な要素の一つ」と強い期待を寄せました。

会議は、20日から22日まで、京都市内のホテルで行われました。アフガニスタンでの暴力の連鎖を断ち切るためには、イスラームの普遍的な教えが、平和と非暴力を推し進めていることを広く発信する必要があるとの趣旨から開催されました。
WCRP日本委員会は、昨年11月、「支え合う安全保障」日本議員連盟と共催し、「アフガニスタンの和解と平和に関する円卓会議」を東京で開催。アフガニスタンの現状と将来について議論がなされました。その際、発表された提言書の中で『WCRPを推進役とし、著名なイスラーム指導者を招集して、正しいイスラームのあり方について、教えを広めることを提案する』と明示されたことを受けて、今回の会議が開催されました。
会議には、イスラーム界を代表する指導者、法学者が参加。オブザーバーとして、WCRP国際委、同日本委、駐日大使館関係者などが加わりました。
開会式であいさつに立った庭野会長は、会議開催までの経緯を説明した上で、「メディアからの一面的な情報によって、誤ったイスラーム像を心に描いている人もおります。こうした現状は、日本に限ったことではないと思われます。イスラームへの正しい理解を進めることは、アフガニスタンをはじめとする世界の安定と平和を目指す上で、いま最も重要な要素の一つ」と意義づけました。
また一昨年7月、スペイン・マドリードで開かれた「国際諸宗教対話会議」(イスラーム世界連盟主催)に参加したことに触れ、今回の会議が、平和に向けたイスラーム世界からのアプローチを一層具体化するものになると強調。「神仏が示されている内心の平和があってこそ、平和は出現します。私たち一人ひとりの内心の平和のないところには、平和はありません。いまだに争いと分断の続く世界をみるとき、われわれ宗教者は、神仏の前で、謙虚に頭(こうべ)を垂れ、内省せざるを得ません。実りある議論が展開され、世界に向けて、イスラームの教える真の平和観が発信されることを期待します」と述べました。
開会式では、このあと犬塚直史・前参議院議員が経緯説明。イクバル・タヒーム在大阪パキスタン領事館領事、ウィリアム・ベンドレイWCRP国際委員会事務総長のあいさつに次ぎ、ムハンマド・アブドゥルファディール・アル・コースィー前アズハル大学副学長が基調発題を行いました。
なお、会議の内容は、40周年記念事業として開かれる京都での「公開シンポジウム」、奈良での「世界宗教者まほろば大会」などの場で報告されます。WCRP国際委員会を通じ、世界に向けても発信される予定です。

「平和と共存のためのイスラームのメッセージ」全文
(WCRP40周年記念事業「イスラーム指導者会議」から)

我々、エジプト、インドネシア、イラン、イラク、日本、パキスタン、パレスチナ、サウジアラビア、トルコのイスラーム指導者および学者は、日本の宗教指導者および学者と共に、アフガニスタンおよび世界各地の和解と平和を切望し、平和と共存のためのイスラームのメッセージを伝えるために、日本の古都、京都に参集した。
2009年11月23日から25日、東京において「アフガニスタンの和解と平和に関する円卓会議~『支え合う安全保障(Shared Security)』をめざして~」が開催された。この会議において、世界宗教者平和会議日本委員会が中心となり、著名なイスラーム指導者および学者を招聘(しょうへい)し、平和と共存のためのイスラームのメッセージを再度、表明するよう提言された。この度のイスラーム指導者会議は、この提言を受けて開催されたものである。
我々は、イスラームが全人類のための平和と慈悲の宗教であることを確信する。イスラームは、生命の神聖と人間に内在する尊厳を尊重する。これは、人種・肌の色・言語・宗教の違いを区別しないあらゆる人権の基盤となるものである。イスラームは、人類が様々な種族と部族に分けられたのは兄弟愛に基づいて互いによく知りあうためであることを根本原理として教えている。
我々は、イスラームが真理と正義に基づく寛容・中庸・人類家族の一体性を推し進めるものであることを信ずる。イスラームはムスリムの間だけではなく、異なる信仰をもつ人々との普遍的な兄弟愛と連帯を重視する。さらにまた、イスラームは自然と環境との調和を要求するものであることを認識する。
我々は、ジハードがイスラームの重要な教えの一つであり、それゆえジハードは、イスラームの教えの総合的な文脈の中で理解されなければならないものと確認する。そしてその教えは、真理と正義に基づいて他者との平和的関係の確立にむけてムスリムを導くものである。大ジハードは、まさしく、創造主の御心に従って自己を変革し、創造主がお創りになられたもののさらなる向上のために、そしてまた公正、かつ豊かで、平和な社会の発展のために奮闘努力することである。一方、小ジハードは、イスラーム法に基づいた自己防衛を目的とするものであり、さらに他者に対する侵略戦争、あるいは自爆行為を含む、いかなる手段によるものであれ、無辜(むこ)の人々を殺すことを許すものではない。
我々は、人民の自決権を信ずるものである。そして、占領は抑圧と暴力の源泉であると考える。それゆえ、我々はパレスチナ等を含む、世界のいかなる場所であれ、占領の終結を求めるものである。
イスラームは人間と社会の安全と福祉を保護し、これに危害を加える一切の行為、例えば不法の薬物の栽培・取引・使用等を禁止する。
我々は、イスラームの教えがイスラーム社会の内部における誤った解釈を通して、そしてまた非イスラーム社会における誤った理解を通して悪用されていることを認識する。このことは、無知、あるいはまた、憎悪・差別・不正義・不寛容を広める利己主義に基づく、政治的・社会的・経済的目的の追求から生じる。我々は、メディアがテロリズムの報道にあたって慎重であること、そしてまた、イスラームを含め宗教とテロリズムとを結び付けないよう要請する。
市民的および政治的権利に関する国際規約第20条に基づき、我々はすべての国家に対し、宗教的および人種的憎悪から市民を保護する責任を果たす措置をとるよう要求する。これには、聖典を冒涜(ぼうとく)すること──例えば、聖クルアーンの焼却──、および、ムスリムが非イスラーム世界において彼らが持つ価値・信条・外観のゆえに差別されることが含まれる。表現の自由には、他者の感情に対して敬意を表するものである。
最後に、我々は、本会議の主催者、世界宗教者平和会議日本委員会に対し、心のこもった歓待をしてくれたこと、および平和・正義・支えあう安全保障のために共働してくれたことを高く評価し、深く感謝の意を表するものである。
全能なる神よ、私たちを正しい道へ導きたまえ。

(2010.9.24記載)