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2010年11月20日 教団付置研究所懇話会がシンポジウム開催

中央学術研究所が加盟する教団付置研究所懇話会の生命倫理研究部会は11月20日、名古屋市の藤田保健衛生大学で開催された「日本生命倫理学会第22回年次大会」の中でシンポジウムを行いました。テーマは『宗教は「いのち」をどう語ってきたのか?──近現代における「いのち」観の変遷』。同懇話会メンバーら約80人が参加しました。

当日は、テーマに基づき、天理大学おやさと研究所の金子昭教授、NCC(日本キリスト教協議会)宗教研究所の土井健司研究員(関西学院大学神学部教授)、真宗大谷派の新田智通氏(武蔵野大学仏教研究所研究員)が発表。宗教情報センターの葛西賢太研究員、東京大学の島薗進教授がオーガナイザーを務めました。
金子氏は、庶民の苦の解決に応える「現世救済」により教勢を伸ばした新宗教の「いのち」観と生命倫理の問題を詳述。この中で、新宗教に限らず宗教の「いのち」とは肉体的生命だけでなく、「心魂的生命」も含めた宗教的生命観と説明しました。その上で、脳死・臓器移植の問題を教理に照らしてとらえたとき、「生死」「利他的行為」などに関して相反する意見があり得るとし、「現世救済」観の深化を強調。教理への理解とともに、人々の思いに応える「臨床的対応」の必要性を説き、宗教者として「『いのち』へのきめ細かな救済が役目」と述べました。
土井氏は、イエズス会のリチャード・マコーミック修道士の論文や旧約聖書に説かれた事例をもとに「生命観」を考察し、医学で救うべき「生命の質」といった議論に対して問題を提起しました。
一方、新田氏は、「仏のいのち」と「個々のいのち」について、生類の有限な「いのち」は神仏の無限な「いのち」に由来するとした上で、宗教的理解を欠いたまま、二種の「いのち」を混同していくことに懸念を表しました。

(2010.11.26記載)