立正佼成会一食(いちじき)平和基金運営委員会(委員長=沼田雄司教務局長)はこのほど、各教会が主体となり同基金の浄財の一部を活用する「地域応援プロジェクト」をスタートさせました。会員に「一食を捧(ささ)げる運動」の意義や成果をより身近に感じてもらうことなどを目的に、2010年から3年間にわたり試行されるもの。今回は、札幌、神戸など6教会が参加し、平和な地域社会の構築に向けてさまざまな課題に取り組む8団体に資金助成が行われます。
立正佼成会一食平和基金では、「すべての人、もの、自然が調和し共生している平和な世界の実現」を目指し、長年にわたり国内外で展開されるさまざまな平和活動を支援してきました。これまで、「一食を捧げる運動」を通して会員から寄せられた浄財は100億円を超え、現在も「貧困の削減」「環境保全」など数多くの分野の支援事業に役立てられています。
一方、国際的な支援事業が資金助成の中心となることに対し、会員からは、より身近に運動の意義や成果を学べる機会を求める声も多く聞かれました。こうした課題を踏まえ、一食平和基金運営委員会では、一食運動の一層の推進に向けて支援のあり方を検討。その結果、教会単位で浄財の一部を運用する「地域応援プロジェクト」の試験的な実施を決定しました。プロジェクトの試行に際し、参加教会には、これまでの一食運動への取り組みなどを考慮し、札幌、長岡、練馬、大和、神戸、鹿児島の6教会が選定されました。
同プロジェクトは、各教会が主体となって地域の諸課題解決に向けて取り組むNPO(特定非営利活動)法人やボランティア団体を支援し、一食運動の精神を発信して平和な社会の実現を目指すもの。浄財の活用を通して会員一人ひとりが社会貢献していることを自覚し、さらなる一食運動の推進につなげることも目的の一つです。
支援対象の基準となるのは、(1)教会の包括地域を含む都道府県で活動している(拠点を持っている)(2)公益の実現を目指す非営利団体である(3)助成対象となる活動(高齢者や生活困窮者など社会的弱者への支援、環境保全、人権擁護、伝統文化の継承、このほか一食運動の精神にふさわしい取り組み)を行っていること──の3項目。すべてを満たしている団体が助成の対象となります。また、運用資金には、プロジェクトに参加するそれぞれの教会に寄せられた浄財の一部が充てられます。
参加教会では、昨年から同運動推進担当者を中心とした「地域応援プロジェクト委員会」を教会内に設置。日ごろからつながりのある公益団体、地域の社会福祉協議会の登録団体などをリストアップし、支援現場の見学や活動実績の検証を通して拠出先を決定しました。今後、各教会では贈呈式が開催され、支援団体の概要や活動内容、プロジェクトの趣旨などが会員に説明されるとともに、支援先に一食の精神が改めて伝えられる予定となっています。
鹿児島教会では、プロジェクトへの参加が決定した昨年9月に、教会内に「地域応援プロジェクト鹿児島委員会」(委員長=出射優行教会長)を設置。それまでに教会と交流のある団体から、活動内容などが吟味され、「特定非営利活動法人 麻姑(まこ)の手村」への支援が決定しました。昨年の12月19日には教会道場で、出射教会長から同団体の卓間光哉理事長に、支援金(目録)が贈呈されました。
同委員会の副委員長は、「プロジェクトの功徳をしっかりとかみしめて、一食の精神を地域に伝え、喜びを持って運動を広めていきたい」と語ります。同教会では、一食運動への関心が一層高まり、「一食地域支援バザー」なども実施されました。
なお、同プロジェクトは、3年間の試行を経て、その後の計画が検討されます。
一食運動「地域応援プロジェクト」始動にあたって
立正佼成会一食平和基金運営委員会委員長 沼田 雄司
立正佼成会が「一食(いちじき)を捧(ささ)げる運動」に取り組み始めてから、今年で約36年が経過しました。一食運動を通して会員の皆さまから寄せられた浄財は、世界の貧困の削減、難民支援、環境保全、教育支援などさまざまな分野で役立てられてきました。多くの支援を継続できたのも、皆さまが地道に運動を実践し続けてくださったおかげさまです。改めて深く感謝を申し上げます。
一食運動を通して私たちは、自らが世界(国際社会)の一員であることを自覚し、「慈悲喜捨」の「四無量心」を養わせて頂きました。そうした多くの功徳を頂ける一食運動は、本会が誇りを持って取り組むことのできる素晴らしい活動の一つであると私は思います。
一方、これまで運動を推進する中で、多くの方から「浄財が実際に役立っていることを身近に感じづらい」というご意見も頂きました。運営委員会では国際的な支援活動を中心に資金助成を行い、有益な事業に活用されてきました。しかし、会員の皆さまからすると、運営委員会を通じた国外への支援だけでは、運動の成果が分かり難い部分もあったように思います。
そこで、より身近に一食運動の意義や成果を感じて頂き、多くの人に運動の精神を理解してもらえるよう、3年間にわたり、地域応援プロジェクトを試行することになりました。各教会が主体となって支援先を選定することは、一人ひとりが地域の諸課題を学び献金の具体的な使途を理解するとともに、「多くの人の役に立っている」という実感を持つことにつながると思います。また、それぞれの地域で社会に貢献する人たちに敬意を払い、礼拝(らいはい)することで私たちの信仰心も一層深まります。そうした交流を通して、地域の多くの人々に一食運動の精神が広まることにより、平和な社会を築いていく輪がより大きくなると考えます。
今回、プロジェクトに取り組んでいる教会の会員からは、「サンガの祈りが込められた浄財の重みを改めて実感した」「日頃から地域の課題に目を向け、多くの方々と交流することが大切だと思った」などの声が寄せられています。取り組みを通し、たくさんの功徳を頂いていることを大変うれしく思います。
昨年、教団では全会員で取り組む対外的な布教伝道の一つとして一食運動を定めました。教団本部としても、一層の運動の普及を目指して、できる限りの支援をさせて頂きたいと考えております。今後とも、ご協力くださいますよう心よりお願い申し上げます。
(2011.1.21記載)