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2011年04月14日 庭野会長に聞く 東日本大震災 被災地を訪れて


一人ひとりの手をとり、被災の状況に耳を傾け、言葉をかける。庭野会長はインタビューの中で、皆が「家族」と強調した(3月27日、石巻教会)

庭野日鑛会長は3月26日から29日まで、東日本大震災で甚大な被害を受けた岩手、宮城、福島の3県を訪れ、現地の教会、地域道場、法座所で会員を励ましました。被災地からの帰路、実際に被害状況を視察し、会員と触れ合った心境などを庭野会長に伺いました。

--被災地の視察を終えられ、いまどのようなお気持ちですか

実際に現地に入りますと、復興という言葉がすぐには思い浮かばないほどの惨状を目の当たりにしました。圧倒的な自然の力、恐ろしい破壊力を感じました。
被災した方々は、苦しく、悲しく、大変な状況に置かれています。その中で信者さんが、善き友・サンガと共に懸命に生きておられる姿には、本当に感動しました。むしろ私の方が励まされた気がしています。
蓮華は、泥の水が濃ければ濃いほど、大輪の花を咲かせると教えられています。現実の苦しみ、悲しみは、被災した方々に大きくのしかかり、それを乗りこえていくには、どれほどの時が必要なのか分かりません。しかし、蓮華の教えのように、今回の震災を、ただ単に悲劇として終わらせるのではなく、皆が、人間として成長する機縁とすることが大切であると思います。それが犠牲となられた方々のいのちを大切にし、受け継ぐことにもつながると受けとめています。

苦しみ、悲しみを自分のこととして

--会長先生は、岩手、宮城、福島の3県を訪れる中で、出会った信者さん全員と握手をされ、一人ひとりに励ましの言葉をかけられました

「主人を亡くしました」「子供を亡くしました」「家が流されました」というお話をたびたび伺いました。胸がつぶれるようでした。でも不思議なことに、手の温かい信者さんが多かったのです。苦しい中にあっても、何とか前進していこうというエネルギーのようなものを感じました。それは皆さんの表情からもうかがえました。
幹部さんの中には、ご自身が被災されているにもかかわらず、地域の方や信者さんのために奔走している方が大勢おられます。本当に頭が下がります。やがては、皆共に、苦しみ、悲しみを乗りこえてくださると信じています。

--いま多くの人が、被災した方々のお役に立ちたいと考えています。その際、どんなことを心していくべきでしょうか

被災した方々の苦しみ、悲しみを、自分のこととして受けとめることだと思います。平成四年、私は「親戚回り」として全国を回らせて頂きましたが、今回、被災地を訪れ、皆が「家族」だと感じました。「家族」として心一つに絆(きずな)を深め、協力し、助け合っていきたい、そう願っています。
ただ、具体的な支援を行う際には、冷静であることも必要でしょう。苦しみ、悲しみを分かち合うことは大切ですが、感情に流されることなく、被災した方々の現状を的確につかみ、できることを、息長く続けさせて頂きたいと思います。

今日を大事に生きる 積み重ねが未来を

--被災地を訪れ、本年の信行方針にある「一人ひとりが明るく 優しく 温かい人間になって」という一節を改めてかみしめさせて頂きました

「明るく」は智慧(ちえ)をあらわし、感情に流されず、ご法を灯火(ともしび)として生きていくこと、「優しく」は相手を思いやる心情を、「温かい」は慈悲をあらわしています。智慧と慈悲と人間的なぬくもりとで、お互いに救い・救われの道を歩んでいこうということです。
振り返ると、本年の信行方針には、こうした震災のときにこそ大事にすべきことが含まれていたと思います。
震災によって、肉親を亡くされたり、家や職を失った方々、津波や原発事故により避難生活を続けている方々の中には、未来がないと受けとめている人もおられるのではないでしょうか。
しかし未来は、「今日を大事に生きる」ことの積み重ねによって、必ず切り拓(ひら)かれていきます。励まし合い、支え合いながら、いま目の前の人、目の前のことを大事にして取り組んでいって頂きたいと切に願っています。

皆が、人間として成長する機縁に…

--震災を通して、私たちは、どんなことを教訓とすべきでしょうか

千年に一回とか、五百年に一度ともいわれる大地震、大津波のときに生まれ合わせた私たちは、この経験を今後に活かし、後世に伝えていく役割があると思います。自然は計り知れない大きな力を持っており、安全の基準も、今後、根本から考え直されるでしょう。それには、柔軟で無限に創造的な発想を培っていくことが大事であります。
また震災の影響で、被災地以外でも計画停電、物不足などが生じています。日本は、戦後六十数年の中で、世界でも有数の経済・文明大国に成長しました。しかし、いつの間にか根本的なことを忘れ、あらゆる面で過剰消費、飽食、無駄を重ねてきました。そうした自らの価値観、ライフスタイルをしっかり振り返り、反省し、新たな姿勢で未来に向かっていく必要があります。先ほどもふれたように、今回の震災を、ただ単に不幸なこと、悲劇的なこととして終わらせないで、皆が、共に乗りこえて、人間として成長の機縁とすることが大切であると思います。

(2011.04.14記載)