立正佼成会本部はこのほど、環境マネジメントシステム(EMS)の取り組みによる平成22年の成果を発表しました。昨年の大聖堂、普門館、法輪閣、第二団参会館、事務庁舎などの本部周辺施設の電気使用量に基づく炭素排出量、一般廃棄物量(ゴミ)、職員の環境意識について本部EMS委員会(委員長=川端健之総務局長)がまとめたものです。20年やそれ以前の平均値を基準値として各項目に目標値が設定されています。22年は一部で当初の目標に届かなかったものの、全体を通して一昨年よりも大幅な前進が見られました。
立正佼成会では平成20年12月、地球温暖化をはじめとする環境問題の改善と国際標準化機構の定める「ISO14001」の認証取得に向け、教庁内で環境に配慮した活動に取り組んでいくことが渡邊恭位理事長より発表されました。これを機に、組織活動による環境への影響を持続的に改善する仕組み「環境マネジメントシステム(EMS)」を構築。翌年、取り組みの指針となる「環境方針」が示され、22年2月に「ISO14001」の認証を取得しました。
今回発表された炭素排出量と一般廃棄物量、職員の環境意識調査は、「環境方針」にある「基本姿勢」と7項目の具体的な行動を示す「行動指針」、さらにEMSに基づいた空調管理を中心とする温室効果ガス(二酸化炭素)の排出削減や3R(ごみの削減、再利用、再資源化)などによる1年間の成果を表すものです。
22年の炭素排出量は、空調管理に加え、待機電力の削減やこまめな消灯などにより21年から687トンを減らす6623トンとなりました。17年から19年の平均値7199トンを基準値として23年までに8%を削減するという目標を1年早く上回り、約23%の削減を達成しました。
一方、21年に基準値より9%増加した一般廃棄物量は、1年間で13・3トンを削減。しかし、22年の目標値には及ばなかったため、23年はゴミ分別のあり方をきめ細かく調査し、3Rをより徹底するとともに、第二団参会館への宿泊者、普門館の利用者に紙資源の分別を呼びかけていく方針です。
職員の環境意識はアンケート調査による評価で21年の0・674ポイントから目標値を超える0・744ポイントに上昇。各人が昨年よりも地球環境の保全を念頭に置いて活動に取り組んでいることが明らかとなりました。EMS委員会では、各部署でのエコリーダーを中心とした啓発活動、年2回の講演会などが意識の上昇につながったと見ています。
◆本部EMS委員会委員長 川端健之総務局長に聞く
教団本部では平成20年からEMS(環境マネジメントシステム)の構築に着手し、「環境方針」に示された「基本姿勢」「行動指針」に基づいて環境に配慮した業務の推進に努めてきました。これは、18年に京都で行われた第6回WCRP(世界宗教者平和会議)世界大会の宣言文、19年にWCRP日本委員会主催により開催された「平和のために提言する世界宗教者会議」で採択された提言書などの内容を受け、教団として環境問題への取り組みにさらに力を注いでいく決意を表明するものでもありました。
EMSでは「Plan(計画)」「Do(実行)」「Check(評価)」「Act(改善)」のサイクルにより、全職員が自ら設定した目標に向け取り組みを進めます。この結果、電気使用量による炭素排出量の削減は2年間で目標を大きく上回りました。職員の環境意識も目標以上の成果を示しています。
一方、一般廃棄物量は21年に大幅に増加したことを受け、昨年は問題点を探り、改善に努めました。目標には届かなかったものの、13・3トンを削減し、一定の改善が図られたと考えております。今年は目標を達成するため、第二団参会館に宿泊される会員の皆さまのご協力も得ながら、職員による分別の取り組みを一層進めてまいります。 地球環境の問題は現在のみならず、未来に深刻な影響を及ぼすものです。東日本大震災に伴う東京電力福島第一原子力発電所の事故はエネルギー開発のあり方、膨大な電気を使う私たちのライフスタイルに数多くの問いを発しているように思えてなりません。
原子力発電は、環境面や経済的に優れていると言われてきましたが、核廃棄物による放射能の危険は何十万年も続くこと、事故が起きれば収束が困難な上、被害が甚大なことなど見過ごしてはならない事実を改めて知ることとなりました。また、経済成長を最優先にした消費文化、限られた資源を際限なく使う生活のあり方に対しても問題が指摘されています。
私たちには、先人から受け継いだ「いのちのたすき」を次世代につないでいく責務があります。地球全体、さらに未来の人々の幸福を考えて行動することが必要です。「まず人さま」という布施、「必要以上は求めない」といった持戒など仏教的視点から環境を守っていく実践行が各人に求められていると強く感じます。
(2011.07.01記載)