聖都・アッシジに集った世界の宗教指導者たちは、テロや暴力が宗教と相いれないものであることを強調し、平和に向けた対話、実践の誓いを新たにした(聖フランシスコ大聖堂前の広場)
イタリアの聖都・アッシジで10月27日、ローマ教皇ベネディクト十六世の呼びかけにより、『真理の巡礼者、平和の巡礼者』をテーマに「世界平和と正義のための考察、対話、祈りの日」の集いが開催されました。これは、1986年に前教皇である福者ヨハネ・パウロ二世の主導により開かれた「平和祈願の日」の集いから25周年を迎えることを記念し、祈りと実践の誓いを新たにすることを目的とするものです。カトリックをはじめとしたキリスト教諸教会、ユダヤ教、イスラーム、仏教など世界の宗教指導者約200人が参加しました。日本からも神道、仏教、新宗教の代表者が招かれ、立正佼成会から渡邊恭位理事長が出席しました。
バチカン内のクレメンスホールでの特別謁見。渡邊理事長は、平和に向けた教皇のイニシアチブに敬意を表した
中世ローマの自治市として栄えたアッシジは、キリストの再来とも言われた清貧の聖者フランシスコの生誕の地として知られます。この地では、「国際平和年」の86年と米国同時多発テロとその報復などで国際的に緊張状況にあった2002年の2回、ヨハネ・パウロ二世の呼びかけで「平和祈願の日」の集いが開催され、本会から庭野日鑛会長が出席しています。
27日午前8時、教皇と代表者を乗せた「教皇特別列車」がバチカン市国駅からアッシジに向けて出発。渡邊理事長は、田中恆清・神社本庁総長、森川宏映・天台宗探題、深田充啓・円応教教主、宮本けいし・妙智會教団理事長はじめ日本の代表者と共に乗車しました。
聖なる鐘の響きが、アッシジに到着した一行を包み込みます。サンタ・マリア・デリ・アンジェリ大聖堂では、これまでの「平和祈願の日」の集いを振り返り、時代相や世界状況、平和、正義、対話、祈りの意味合いなどを考察する集いが行われました。渡邊理事長は他の代表者と共に教皇に握手で迎えられ、壇上に着座しました。
VTRで過去の集いの模様などが映し出され、バルトロメオ一世・東方正教会コンスタンティノープル総主教、ローワン・ウイリアムズ・英国国教会カンタベリー大主教ほかユダヤ教、イスラーム、仏教などの代表者が世界平和に対する宗教の貢献、対話の重要性についてスピーチしました。教皇は、86年に開催された集いの3年後に「(東西)ベルリンの壁」が崩壊したことを「唯物論を基盤とする政権に霊的な確信がなかった」と分析。その後には「宗教の名によって暴力を正当化するテロ」と「神の否定(無神論)を基盤とする暴力」が世界を苦しめるようになったと指摘し、「諸宗教対話」を通した「現実的で信憑(しんぴょう)性のある対処」の重要性をアピールしました。
同大聖堂に隣接する修道院での「簡素な食事」のあと、聖フランシスコ大聖堂前の広場に会場を移し、結びの集いが行われました。代表者13人による「諸宗教者の平和の誓い」では、「私たちは、暴力とテロが純なる宗教精神に反するという確信を叫び続ける」「対話文化の促進を誓う」などの内容が、それぞれの言語で一節ずつ読み上げられました。
教皇が、「今日の集いは、平和構築のために霊的な側面がカギであることを示すためのもの」と結びの言葉を述べ、全員で黙とうを捧(ささ)げ、平和の献灯を行いました。
翌28日、教皇宮殿内のクレメンスホールで、教皇は代表者との特別謁見(えっけん)に臨みました。渡邊理事長は、「世界平和と人類の幸福のためにお導きください」と教皇のイニシアチブに敬意を表しました。謁見後、パウロ六世ホールで、タルチジオ・ベルトーネ・バチカン国務省長官主催の昼食会が催されました。
(2011.11.04記載)
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