庭野平和財団の第4回「GNH(国民総幸福量)シンポジウム」が11月16日、東京・中野区の中野サンプラザで開催されました。60人が参加しました。
GNHはブータンの前国王により提唱された、GNP(国民総生産)やGDP(国内総生産)といった経済発展の指標ではなく、幸福度によって豊かさを示そうとする概念。同財団では、毎年シンポジウムを実施してきました。
当日は、『日本の農村から未来を創造する--新しい想像力が求められる時代を前にして』をテーマに、立教大学大学院の内山節教授が講演しました。
冒頭、東日本大震災の被害は地震や津波による「自然の災禍」と原子力発電所事故がもらたした「文明の災禍」に分けて考えるべきと指摘しました。その上で自身が暮らす群馬・上野村を例に、日本人は古来、生きている人間に加え、自然の摂理や先人の考えを基に社会観を形成していたと説明。また、かつての農山村社会は外部とさまざまなつながりを持つ「開かれた共同体」だったとその特徴を示しました。
一方、「資本主義」「国民国家」「市民社会」「近代技術」を特徴とする近代世界は、「個人」を基盤にその利益を追求することで発達してきたと解説。しかし、生きた人間の利益だけを優先する仕組みによって自然や人間的な豊かさが失われ、政治、経済、社会形成などで限界を見せていると述べました。
今後の社会のあり方について、日本の伝統的価値を見つめ直す動きが若者の間で多いことに触れ、人と人のつながりを大切にしたコミュニティーの再構築を強調。「多層的に結びつくことが、人々を安心させる共同体や社会となる」と述べ、未来への構想力の必要性を主張しました。
このあと、内山氏と関西大学社会学部の草郷孝好教授、特定非営利活動法人「明るい社会づくり運動」の槇ひさ恵理事長による鼎談(ていだん)が行われました。
(2011.11.25記載)
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