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2012年02月29日 第29回庭野平和賞 コナビグア共同設立者ロサリーナ氏(グアテマラ)に

「第29回庭野平和賞」の受賞者がグアテマラの人権活動家で、コナビグア(CONAVIGUA=連れあいを奪われた女性たちの会)の共同設立者であるロサリーナ・トゥユク・ベラスケス氏(55)に決定しました。公益財団法人・庭野平和財団(庭野日鑛名誉会長、庭野欽司郎理事長)は2月29日、京都普門館で記者発表会を開き、席上、庭野理事長が発表しました。先住民「マヤ」の女性であるロサリーナ氏は、内戦や軍事政権の弾圧で夫を失った女性たちと連帯し、相互扶助による救済や経済支援に尽力。女性や先住民の人権回復と暴力の撤廃に努めてきました。贈呈式は5月10日、東京・港区の国際文化会館で行われます。


長老たちから先住民族権威者の証しである杖を手渡されるロサリーナ氏

先住民の宗教伝統の実践者による受賞は初めてとなります。ロサリーナ氏は1956年10月にグアテマラのチマルテナンゴ県に生まれました。マヤ民族の宗教的指導者の父親から「まず人々のことを考える」大切さを教えられ育ちました。小学4年生で一時中退しましたが、のちに通信教育で全課程を修了し、国立看護学校で准看護師の資格を取得。農村女性に識字教育を行うキリスト教の青年活動にも参加しました。
同国は16世紀からのスペインによる植民地時代を経て、1838年に共和国として独立。現在、人口の40%をマヤ系先住民が占めますが、その70%が貧しい状況にあります。
また、19世紀末から次々と軍事独裁政権が成立。1960年の若手将校による反乱は鎮圧されたが、山中に籠(こ)もった指導者グループと政府軍との内戦が96年まで続きました。死者・行方不明者は20万人以上、国内避難民は150万人、難民は15万人に上りました。
特に80年代初頭は政府の先住民への弾圧がひどく、軍による殺害のほか、ゲリラを監視するために各村に組織された「自警団」による拷問、拉致、殺害が頻発しました。内戦犠牲者の83%をマヤの人々が占め、同氏も82年に父、85年に夫を殺害されました。
幼い子供を抱え、自らの身にも危険が及ぶ中、夫を殺された女性たちが多くいることを知った同氏は、88年に伝統工芸品の製造販売を行う相互扶助グループを組織。その年にカトリックやNGO(非政府機関)の援助を得てコナビグアを結成しました。現在、12県で1万人の女性が活動しています。
同氏はコナビグアを通し、女性や先住民に対する暴力や、経済的、社会的差別を社会に訴え、生命の尊重と人権の回復の活動に取り組んできました。86年、民主選挙による大統領の誕生を機に政府とゲリラ間の和平交渉が始まると、コナビグアは他団体と協力し、政府に和平の交渉項目を提案。この成果として和平合意には「先住民族のアイデンティティーと権利」が盛り込まれました。現在は犠牲者への誠実な対応と賠償、虐殺にかかわった人物の法的責任の追及、秘密裏に殺された犠牲者の発掘などを政府に求めています。
同氏はコナビグアでの活動のほか、96年から4年間、国会議員を務め、04年には当時のベルシェ大統領から国家補償委員会の委員長に任命されました。
同氏の平和への取り組みはマヤの伝統と精神性が基盤となっています。「マヤの教えとは人間と自然の調和であり、暴力や破壊を拒絶することです。食べ物、飲み水、酸素などを与えてくれるものに感謝し、それに報いる生き方を意味します」と言います。また、「紛争の中でマヤであることとは人類と自然との調和を回復する仲裁者となり、最大限の努力をすることを言います」とも語っています。
5月10日の贈呈式では、庭野名誉会長から正賞の賞状、副賞として懸賞メダル、賞金2千万円が贈られ、同氏による記念講演が行われます。
なお、受賞者の発表はローマでも行われ、各メディアにより報道されました。

庭野平和賞受賞者メッセージ

トウモロコシに育まれた女性と男性の国グアテマラより親愛なる皆さまへ

日本を襲った地震と津波で亡くなられた多くの皆さまに、哀悼の意を表します。
今回、さまざまな異なる国や信仰を持つ受賞者の一員に加えて頂き、喜びに満ちるとともに、今後も人類、とりわけ先住民の平和と安寧の文化を大切にし、伝え続ける責任があると重く受け止めております。平和の実現に尽くし、人々の精神性の向上に努められる皆さまに対し、グアテマラの殉教者、暴力により消息が分からないままの父と夫たち、拷問を受けた女性たち、孤児たち、虐殺された人々に代わり、また先住民を代表して深く感謝申し上げます。
このたびの受賞は私にとって大きな励みとなります。訪日の際は家族の中に、国民の間に、世界に平和と調和を見いだせることを願いながら、私たちのこれまでの経験と活動についてできる限りお話ししたいと思っています。非常に野心的なことを願っているかもしれませんが、それぞれができうる限りの努力を果たして平和を実現していくことが、私の夢の一つなのです。

マヤ・カクチケルの女性より
ロサリーナ・トゥユク・ベラスケス

(2012.02.17記載)