News Archive

2012年09月01日 東京電力福島第一原発事故を受け、立正佼成会が「行動方針」発表


事務庁舎屋上への太陽光発電の設置に伴い、大聖堂4階に発電システムを表すモニターが置かれた

立正佼成会は9月1日、教団と教会、会員が願いを一つにして、真に豊かな社会の実現につなげていく「行動方針」を発表しました。この「方針」は本会が6月に公表した『真に豊かな社会をめざして――原発を超えて』を受け、「『こころ ひとつに』プロジェクト推進本部」(本部長=沼田雄司教務局長)での議論、理事会の審議を経て策定されたものです。2009年に示された「環境方針」も踏まえながら、「教団本部」「教会(拠点)」「会員」の取り組みや目標を示しました。

教団、教会の取り組みと、会員一人ひとりの実践への願い示す


効率的な電力使用を心がける大阪教会の取り組み

昨年3月の東日本大震災により東京電力福島第一原子力発電所は電源を喪失し、1号機から4号機までが爆発しました。 本会は事故やその後の影響について議論を重ね、今年6月18日に『真に豊かな社会をめざして――原発を超えて』を発表。福島の人々への被害をはじめ世界への影響に触れ、原子力によらない真に豊かな社会の実現を訴えました。同時に、原発への依存度を高めてきた一人ひとりの価値観、生活スタイルを見つめ直し、仏教的観点から簡素な生活の中に幸せを見つけていく生き方の転換を呼びかけました。 今回の「行動方針」は、この「声明」を受けてのものです。さらに、本部では、08年12月から地球温暖化をはじめとする環境問題の改善に向けて取り組みを進めており、09年に発表された『環境方針』の理念や基本姿勢を踏まえた内容にもなっています。  行動方針は6月の声明にある「真に豊かな社会」を実現するため、教団、教会の取り組み、会員一人ひとりの心がけと実践への願いが示されました。 「教団本部」の方針については、環境問題の解決を目指して08年から進められている「環境マネジメントシステム」(EMS)の活動を着実に推進していくことを改めて提示。また、原発で働く人々の人権を重く受け止め、脱原発依存が進んだ場合も、現在の労働者の生活基盤が守られる社会構築に尽くすことが明記されました。「教会(拠点)」に関しては、節電に取り組みつつ、地域に合った環境保護を推進し、意識の向上を図りました。 一方、「会員」については、「いのちの尊重」「共生の実現」「簡素なライフスタイル」に沿って、各人が自らの生活を振り返り、宗教的、仏教的な価値に基づく生き方を身につけることを推奨しています。

「行動方針」

平成24年6月18日に発表した声明文『真に豊かな社会をめざして――原発を超えて』の実践として、立正佼成会は次のような事柄に取り組みます。

教団本部
・環境マネジメントシステムの推進
紙の使用・ゴミの排出・電気利用の徹底削減、一食を捧げる運動の実践
・電力使用の可視化と太陽光発電の導入
・人、環境を大切にした拠点の建設
・原子力発電や放射能に関する正しい理解を進める学習
・原子力発電所で働く方々の人権を重く受け止めつつ、世の中一人ひとりの生活基盤が守られるような社会の再構築をめざすこと

教会(拠点)
・電力消費の削減
・地域に合ったエコの推進
・教会間の情報交換による相互啓発と環境意識の向上

会員
本会会員は「真の豊かさとは何か」について関心を持ち続け、教団が環境方針の基本姿勢として掲げる「いのちの尊重」「共生の実現」「簡素なライフスタイル」を旨として、自らの衣食住や交通手段など日々の暮らしのあり方を振り返ります。
そして、家族や地域の人々と、自然の恵みへの感謝や平和の祈りのある生活などについて話し合い、身の回りの出来ることから実践します。

平成24年9月1日
立正佼成会

「行動方針」発表にあたって 主体的・自発的実践の一助に

教務局長 沼田雄司

東日本大震災の発生から約1年半が経過しました。未曽有の災害により、多くの方が犠牲となり、いまだに先行きの定まらない状況の中で生活されている方も大勢おられます。改めてお悔やみとお見舞いを申し上げます。
今次の災害に対しては、社会的にもさまざまな検証がなされ、課題が抽出されております。震災後、いち早く被災地を訪問された会長先生は、「今回の震災を、ただ単に悲劇として終わらせるのではなく、皆が、人間として成長する機縁とすることが大切」と私たちに明確な視点をお示しくださいました。教団といたしまして、全国教会の会員さんと手を携え、被災された方々に寄り添い、復興への支援活動の一端を担わせて頂きながら、情報を収集し、仏教徒の立場から方向性を模索してまいりました。
そのようなプロセスを経て、先ごろ、『真に豊かな社会をめざして――原発を超えて』と題する声明を発表させて頂きました。原発によらない再生可能エネルギーの開発と活用、「少欲知足」の簡素な生活スタイル、いのちを尊ぶ自然と人間の共生社会の実現などを訴え、それに向けた私たち自身の実践、努力を表明したものです。
今回の「行動方針」には、この声明を受けて、特に、過剰な消費を抑え、「少欲知足」の心を養い、簡素な生活を送る、その具体的な実践の道筋が示されています。教団本部、教会に関しては具体的な施策や取り組みについて触れています。一方、会員レベルでの取り組みについては、個人の状況や環境も異なるため、主体的な願いや考えに基づいた実践に向けて知恵を出し合って頂けるよう、行動の指針、方向性を記させて頂きました。
個人の具体的な実践に関しては、私たちも本部の会議の中で自らの課題として議論しました。その時には、『食』のテーマでは「食前食後に『いのち』を頂くことへの感謝を表す」「つくり過ぎない・残さない・捨てない」「食材の買い過ぎを控える」「消費・賞味期限の迫ったものから購入する」、『暮らし』では「早寝・早起き」「水道を流しっぱなしにしない」「レジ袋の使用を控え、エコバッグを利用する」「過剰包装を控える」、また『移動』については「徒歩や自転車の活用を心がける」「公共交通機関を利用する」などの意見が出されました。一例として、参考にして頂ければと思います。
会長先生は、「平和・社会活動の手引き」に寄せられたご法話の中で、震災を機に誰もが「何か自分にできることはないか」と考えていること、お釈迦さまは「自灯明・法灯明」という言葉を残され、いつも主体的・自発的な姿勢で生きていく大切さを教えられていること、さらには、主体的・自発的な意識は現状や背景を正しく知ることから生まれることをお説きくださっています。このことは、私たちが信仰、教えを日常生活に生かしていく上で、常に心がけねばならない重要なことであると受け取らせて頂きます。
実際に、声明を発表して以来、多くの会員さんから「私たちも、具体的な実践をさせて頂きたい」という主体的な思いを聞かせて頂きました。この行動方針を、お互いさまに、社会的な課題をより身近に考え、主体的・自発的な実践に結び付けていく一助としてまいりたいと願っております。

(2012.09.07記載)