聖エジディオ共同体(本部・ローマ、第16回庭野平和賞受賞)と欧州委員会によるシンポジウム「いのちなきところ正義なし――グローバル化した社会において、死刑制度へのさまざまな視点」が10月29日、東京・千代田区のイタリア文化会館で行われました。
当日は国内外より約200人が参加。副題として『死刑にモラトリアムを――日本も他の国々に近づくことができるのではないか』が掲げられました。
NGOのアムネスティインターナショナルによると、今年8月末現在、世界では法律上あるいは事実上の死刑廃止国は140カ国。1989年に国連で死刑廃止条約が採択されて以来、その数は年々増加しています。また、EU(欧州連合)では死刑廃止が加盟の条件の一つになっています。一方、死刑存置国は米国、日本を含む58カ国。2010年の内閣府世論調査では、日本国民の85%が容認と答えています。
シンポジウムでは、ローマ教皇ベネディクト十六世や英国国教会の最高指導者であるカンタベリー大主教ローワン・ウィリアムズ師がビデオで登場したほか、米国の犯罪被害者の遺族、冤罪(えんざい)被害者、研究者、NGO関係者、宗教者ら国内外の代表26人がスピーチ。「国家が人を殺す」という死刑制度が根源的に有する人権上の問題や近代刑法の理念から見た課題などを挙げ、制度の見直しや執行停止を呼びかけました。
この中で、WCRP(世界宗教者平和会議)日本委員会平和研究所の眞田芳憲所長が登壇し、仏教徒、法学者の立場からスピーチしました。眞田氏は、犯罪者は自らの行為の責任を負わなければならないとした一方、犯罪者は生来の犯罪者ではなく、自らを原因としながらも社会の縁の中で罪を犯したと指摘。国家にこれまで以上の被害者救済を求めるとともに、国家が死刑囚の生命を奪うことは「民主主義国家」の名を否認するものではないかと訴えました。
(2012.11.09記載)
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