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2013年01月30日 WCRP日本委「第39回平和のための宗教者研究集会」


研究集会では、原子力エネルギーについて議論され、人間の生き方や社会のあり方などについても意見が交わされた

『原子力エネルギーと現代社会――未来への責任』をテーマに1月30日、WCRP(世界宗教者平和会議)日本委員会の「第39回平和のための宗教者研究集会」が法輪閣大ホールで開催され、同委員会の役員や賛助会員ら約200人が参加しました。

研究集会は、福島第一原発事故の影響で生命や自然環境などが危険にさらされる中、原子力エネルギーと現代社会のあり方について学びを深め、宗教者に課せられた未来への責任について考えるものです。
冒頭、庭野日鑛同委員会会長があいさつに立ち、「研究集会を機会に、エネルギーのあり方のみならず、私たちがいかに生きるかを考え、いのちの本質を見つめ直すことがとても大切」と述べました。
続いて、眞田芳憲・同委員会平和研究所所長をコーディネーターにパネルディスカッションが行われました。まず3人のパネリストが発題しました。
山口幸夫・原子力資料情報室共同代表は、科学は人の役に立つと思われてきたが、原子爆弾の発明を機に、罪でもあるとの意識が芽生えたと指摘。さらに、今回の原発事故を受け、多くの科学者から、これまでの考え方を変え、人類が得た「知」を自ら捨てる必要もあるのではないかという反省が生まれているとの見解を示し、「そこに希望を託したい。さもないと未来世代はない」と述べました。
江川和弥・ふくしま連携復興センター理事は、福島では原発事故の影響で多くの被災者が全国に避難しており、地元に戻っての復興は難しい状況にあると説明。「それぞれが今いる場所でどう自立できるかが一番の課題」と強調しました。その上で、家族が離れて暮らすケースも多いことなどを踏まえ、被災者のコミュニティー構築と、将来の福島を担う子供たちに対するケアが急務であるとの考えを示しました。
内藤新吾・日本福音ルーテル稔台教会牧師は、放射性物質を発するウランを原発の燃料用として地中から掘り出すこと自体が誤りと指摘した上で、原発に関する情報開示を働きかける重要性にも言及。「『いのちを守り、危険を遠ざける者であれ』と願う宗教者として、お互いに協力し、さまざまな働きができるのではないか」と述べました。
このあと、参加者の中から4人がコメントを述べ、これを受け、パネリストが発言しました。
この中で、原発の代替エネルギーとして自然エネルギーを活用する可能性などが探られたほか、身近な共同体の中でエネルギーを共有するあり方も提案され、それが地域の再生にもつながると指摘されました。
また、人間本来の生き方や生活様式を見つめ直すことが先決であり、エネルギーのあり方はそれに応じて考えるべきものといった意見も出されました。
さらに、原発の危険性を見過ごしてきた宗教者の反省が表明される一方、少欲知足や自然との共生の考え方、また、被災地への関心が薄れる中、「決して忘れない」との思いで被災者に寄り添い続ける姿勢など、宗教的な智慧(ちえ)や生き方への期待も寄せられました。

(2013.02.08記載)