『現代文明に生きる私たちに問われているもの――知から智慧(ちえ)への転換をめざして――』をテーマに、WCRP日本委員会の「平成24年度平和大学講座」が3月13日、京都市の八坂神社で開催され、同委員会の庭野日鑛会長はじめ役員や賛助会員、立正佼成会近畿支教区の会員ら約130人が参加しました。
当日は、杉谷義純同委員会理事長(天台宗宗機顧問)の開会あいさつに続き、徳永恂・大阪大学名誉教授が基調講演に立ちました。ドイツの哲学者イマヌエル・カントの平和思想に触れながら、「永遠の平和は理想ではなく人類の使命。平和を実現するためにも、国家を超えたルールが必要」と強調。文明の発達による災厄は人災であり、人間が自ら責任を負うべきと主張しました。
さらに、故郷である長崎が原爆の被害を受けた悲惨な情景を目の当たりにし、言い表せない憤りを感じた体験を述懐。「人間は、科学技術という自ら抑制できないものを生み出した。その事実と向き合い、国家や宗教を超えて話し合う必要がある」と述べました。
これを受け、眞田芳憲同委員会平和研究所所長(中央大学名誉教授)をコーディネーターに、森孝一・神戸女学院理事長(院長)、黒田壽郎・国際大学名誉教授、徳永教授によるパネルディスカッションが行われました。
この中で森理事長は、戦後の日本では「最大の消費が最大の幸福」と考えられてきたと指摘。自己の満足を得るために多くの人が無制限のエネルギーを必要とし、それが原子力開発につながったとの見解を示しました。その上で、「現代の思想を改め、人間としてどう生きていくかを真剣に考えるべき」と述べました。
また、東北大学に昨年開設された「実践宗教学寄附講座」が目指す「臨床宗教師」に触れ、災害によって「理不尽な死」と直面した人に寄り添い、「なぜ私の家族が死ななければならないのか」という問いに、宗教者として向き合うことが大切と訴えました。
黒田名誉教授は、自己と他者を等しい価値ある存在として受け止めることが民主主義の基本的条件であると説明した上で、地球上で人間だけが尊いという考えを改める必要があると主張しました。
続いて、質疑応答が行われ、参加者と各パネリストの間で宗教的智慧に基づく生き方の大切さなどについて議論が交わされました。
(2013.03.22記載)
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