被災した人々が「自立」した生活を取り戻せるようジェンは活動を続けます(イラクでの衛生教育=提供・ジェン)
国際NGO(非政府機関)として紛争・災害時の支援活動を続ける特定非営利活動法人ジェンが今年、設立から20年を迎えました。同団体には立正佼成会も当初から構成団体として加わるほか、一食平和基金からも支援金が拠出されています。ジェンの歩みと併せ、木山啓子事務局長のコメントを紹介します。
ジェンは1994年、本会を含む6団体の連合体として発足しました。「一人ひとりは等しく尊い」という理念を掲げ、当時、民族紛争が激化していた旧ユーゴスラビアで人種や宗教の違いを超えた支援活動を実施。人々が精神的、経済的に自立した生活を送れるまで、10年にわたり職業訓練や医療支援、心のケア、民族間の交流といった取り組みを続けました。
また、これまで、イラク戦争、スマトラ沖大地震、東日本大震災といった紛争や自然災害の発生に伴い、現地で難民、国内避難民などの支援活動を展開。各国政府や国連機関とも協力し、緊急支援、復興支援、自立支援など状況に応じて迅速かつきめ細かい取り組みを行ってきました。現在、日本を含む8カ国でプロジェクトを展開しており、すべての人が安心して暮らせる世界を目指して活動を続けます。
こうした活動は社会的にも高く評価され、2011年には、世界各国との友好親善関係に多大な貢献をした団体に授与される外務大臣表彰を受賞。政府や大手企業などともパートナー関係を築き、協力して支援活動を実施しています。
本会はジェンの設立当初から一食平和基金を通して支援を続けます。またジェンは本会の「ゆめポッケ」の配付や「一食研修ツアー」の受け入れにあたるなど、両者のつながりは深い。現在、小髙利之・青年グループ次長が同団体の理事を務めます。同基金による支援額は、累計で約11億円に上ります。
◆20周年を迎えて ジェン事務局長 木山啓子
「ジェンが必要ない世界」――つまり、誰もが安心して暮らせる世界を目指し、20年にわたり活動を続けてきました。皆さまには設立当初から、一食平和基金を通して多大なご支援を頂いております。改めて、心より御礼を申し上げます。
「一人ひとりが等しく尊い」。これは、ジェンが一貫して掲げる理念です。援助する側、される側という関係を超え、被災された方々が自らの人生を再び自分の力で生きられるよう少しでもお役に立ちたい――その一心で、私たちは活動を継続しています。
特に大切にしているのが、難民一人ひとりの「自立」を促す支援です。「自立」とは、問題解決のための課題を自ら設定し、周囲の人を巻き込んでそれを解決することだと考えます。そのためには、小さな成功体験の積み重ねが重要です。誰かの役に立てた時に人間は自尊心を取り戻し、それが前に進む原動力になるからです。
2010年、ハイチで大地震が発生した時のことです。衛生環境の悪化でコレラがまん延していたため、私たちは現地ボランティア約300人に衛生教育を行い、学んだ知識を自分たちが暮らす村で伝えて頂くようお願いしました。彼らは山の中に点在する家々を訪ね歩き、根気強く手洗いの方法を住民に教えました。その結果、この地域ではコレラの死者がゼロだったのです。この体験は皆の自信となり、他の支援活動にも良い影響を与えました。
また、03年のイラク戦争勃発後、現地で学校の修復、衛生環境の改善活動と教育を続けています。再開した学校で数万人の子供たちが通常の学業とともに衛生知識も学びました。こうした知識が、どれほど彼らの人生を豊かにしているかは計り知れません。
このように、皆さまが実践されている「一食を捧げる運動」の尊い浄財は、世界中で貧困や避難生活を余儀なくされている多くの人の命を守り、生活を向上させ、人生を輝かせています。真心が詰まった支援金を最大限に生かすことが私たちの責務であり、この尊い事業に携わらせて頂けることを誇りに感じます。いまだ世界には、紛争や自然災害で家族や家を失い、祖国にも戻れず、命がけで今を生きる人たちが大勢います。そうした人々が希望を持って生活できるまで、皆さまと共に支援を続けさせて頂きたいと願っています。
(2014年12月12日記載)
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