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2015年05月30日 集団的自衛権を考える公開シンポジウムを開催 「信頼に基づく共生社会」実現に向け、武力によらない平和構築の道を探る


現在、国会で集団的自衛権の行使容認に関する「安全保障関連法案」が審議されていることから関心を集め、多くの市民、会員が会場を訪れました

『信頼に基づく共生社会を築くために~集団的自衛権を考える』をテーマにした立正佼成会主催による公開シンポジウムが5月30日、セレニティホールで開催され、会員、市民合わせて約250人が参加しました。学術、マスコミ、宗教など各界の代表者を迎え、基調発題、パネルディスカッションなどが行われ、昨年7月に閣議決定された「集団的自衛権の行使容認」や「憲法改正」問題などを焦点に議論を展開。テーマにある「信頼に基づく共生社会」の実現に向けた政府、市民レベルでのアプローチに関して意見が交わされました。

政府は昨年7月1日、日本国憲法第九条の従来の解釈を変更し、集団的自衛権の行使を容認する閣議決定を行いました。これに対し本会は同日夜、『閣議決定「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」に対する緊急声明』を発表。武力行使の容認が、紛争の抑止になるとした政府の方針に対する危惧を表明しました。
同声明では「真に平和と安全を構築するためには、寛容と互譲の精神で相手の違いを受け入れ、認め合い、信頼を醸成し、他者と共に生きる基盤」の整備が重要と指摘。今回のシンポジウムは、その土壌づくりの一環として実施されました。
当日は、根本昌廣外務部長のあいさつに続き、高橋哲哉・東京大学大学院総合文化研究科教授が基調発題に立ちました。高橋教授は冒頭、集団的自衛権は、国連憲章で認められている権利であるとする一方、日本は憲法上、その行使は禁じられていると説明。その上で、政府が憲法「改正」に必要な国民投票を実施せず、昨夏に集団的自衛権の行使を認める閣議決定を行ったことは、「立憲主義に反する」と政府の政権運営に懸念を示しました。
また、第二次世界大戦における歴史認識問題で、日本が周辺諸国から強い反発を受けていることに触れた上で、政府が夏に発表する予定の「戦後70年談話」に言及。従来の談話の踏襲が、将来的に周辺諸国からの信頼につながることを強調し、「周辺諸国からの信頼がなければ、日本の安心な暮らしは困難」と語りました。
このあと、半田滋・東京新聞論説兼編集委員、伊勢崎賢治・東京外国語大学大学院地域文化研究科教授、前島宗甫・日本基督教団牧師(日本キリスト教協議会元総幹事)が登壇しました。半田氏はイラクに派遣された自衛隊の活動を紹介。宿営地ではロケット弾による攻撃を受けたほか、帰国後の隊員の自殺者が少なくないことを挙げ、自衛隊が海外で活動することの危険性について語りました。伊勢崎氏は、イラクなどへの自衛隊派遣は、国際法で集団的自衛権の行使に当たり、違憲行為であると指摘。国内では、これまでに集団的自衛権は行使されていないと解釈されているものの、国際社会の認識は異なると述べました。一方、前島氏はNGO(非政府機関)やNPO(特定非営利活動法人)など、民間レベルによる国際貢献活動の役割を評価。今後、活動の一層の充実を図り、世界の平和に寄与していくことが大切と語りました。
質疑応答に続き、眞田芳憲・WCRP(世界宗教者平和会議)日本委員会平和研究所所長が、「八正道」の「正見」など仏教的視座を示しながら、総括を行いました。

(2015年6月 4日記載)