News Archive

2015年08月02日 KAICIIDのファイサル事務総長迎え 対話の集い


集いには、国内外から約5000人が参加。3つのプログラムでは、登壇者とフロアが対話を通して意見を交わし合い、他者を認め、尊重していく大切さが確認されました

『宗教の対話/対話の宗教――新しいモノガタリをつむぐ』と題した立正佼成会主催による対話の集いが8月2日午後、大聖堂で開催されました。KAICIID(アブドッラー国王宗教・文化間対話のための国際センター)のファイサル・ムアンマル事務総長を迎え、庭野光祥次代会長がナビゲーター、スピーカーなどを務めました。庭野日鑛会長が臨席し、会員、本部職員、来賓、マスコミ関係者ら約5000人が参加しました。参加者は、宗教間対話の歴史や現在の国内外の課題について学びながら、対話の担い手として、身近な実践を誓いました。集いの模様は、インターネットを通じて国内外の教会に配信されました。


プログラム1でスピーチに立つファイサル事務総長。集いのテーマである「対話の宗教を広げる」重要性を語りました

今年は、1965年に庭野日敬開祖が第二バチカン公会議の開会式に仏教徒として初めて招かれ、出席してから50年にあたります。同会議では公文書「キリスト教以外の諸宗教に対する教会の態度についての宣言(ノストラ・エターテ)」が発表され、カトリックが他宗教による救いを認め、対話への道を踏み出す契機となったといわれています。
本会では、庭野開祖がWCRP(世界宗教者平和会議)の創設に携わるなど宗教対話・協力を推進。庭野会長はその道筋を継承するとともに、イスラーム、特にサウジアラビアとの新たな関係を開きました。現在は、光祥次代会長が、WCRP国際委員会で共同実務議長の重責を担うとともに、KAICIID理事として、イスラームが手がけ始めた宗教対話・協力活動を、仏教の智慧(ちえ)を提供しながら支えています。教会や支教区レベルでも、新宗連(新日本宗教団体連合会)などを通しての連携、宗教者懇話会の活動が行われており、宗教対話・協力は、本会の平和活動の大きな柱です。
このほど、ファイサル氏の来日を機に、イスラームのイニシアチブによる宗教対話への理解を深め、さらに現代にふさわしい対話のステージを目指すことを目的に、対話の集いが開催される運びとなりました。集いは『歴史を「学ぶ」』『今を「知る」』『未来を「動かす」』の3プログラムを中心に構成されました。
当日は、光祥次代会長が開会のコメント。プログラム1『歴史を「学ぶ」』では、第二次世界大戦後の対立の歴史、諸宗教対話の足跡などを映像で振り返ったあと、WCRP国際委員会のウィリアム・ベンドレイ事務総長のビデオメッセージが上映されました。ベンドレイ氏は「すべての宗教は平和に対してポジティブ(肯定的)であり、平和のために共に行動できる」と確信を表明。ボスニア・ヘルツェゴビナなどでの宗教間対話の実例を紹介しました。
このあと、ファイサル氏がスピーチ。紛争や暴力が続く世界の中でも、「政治家や指導者の努力」「宗教指導者のビジョンと叡智(えいち)」「対話」の3点が将来への希望であると言明しました。さらに中東やアフリカでの対話の実践例、KAICIIDの広範なパートナーを紹介。「軍事力ではなく、それと同じ力を持つ『対話』で平和を築いていきたい」と力強く述べました。
プログラム2『今を「知る」』からは根本昌廣本会外務部長がコーディネーターを務め、ファイサル氏、元文部科学副大臣の鈴木寛・東京大学教授、光祥次代会長が登壇しました。この中で、『WCRPとKAICIID』をテーマに光祥次代会長がプレゼンテーション。KAICIIDのメンバー同士が互いの宗教を尊重し、認め合う姿に感銘を受けたと述懐しました。その上で、対話とは「自分と異なる存在とのやりとり」であり、「矛盾や葛藤を乗り越えようとする意思」を交わし合うことで多様性が豊かさに変わると述べました。
続いて、会場から「TEAMママベク子どもの環境守り隊」の千葉由美代表がコメント。東京電力福島第一原発事故後の現状を周囲に正しく理解してもらえるよう、「正論で武装し拳を掲げるよりも、心を静めて笑顔で向き合う対話を続けている」と話しました。
次に、鈴木氏が発題し、「誰と、何について対話するのか」を考える必要性を指摘。宗教間はもちろん、政治や教育など宗教以外の分野、自分自身と対話を重ねることが大切であり、他者の中に自己を見ていく自他一体の考え方が協働を生み出すと話しました。
プログラム3『未来を「動かす」』では、深水正勝・カトリック神父、有見次郎・日本ムスリム協会副会長、石井宏明・難民支援協会常任理事、本会杉並教会一食(いちじき)推進委員長の4人がフロアから発言しました。この中で石井氏は、宗教界などとの対話を通じて日本国内の難民支援に心を砕きながら、すべての人が共存できる社会づくりを進めていきたいと述べました。
まとめの言葉のあと、光祥次代会長が閉会のコメントに立ち、KAICIIDでの経験から得た、対話とは「他者を証明すること」との気づきを発表。相手を証明し、相手の良さを探す出会いの豊かさを強調し、KAICIIDへの理解と応援を呼びかけました。

(2015年8月 6日記載)