開会式で諸宗教代表としてあいさつに立つ光祥次代会長。「ノストラ・エターテ」に示された精神を引き継ぐとともに、対話の中身や質を向上させていく重要性を説きました
庭野光祥次代会長は、10月26日から28日までイタリア・ローマ市の教皇庁立グレゴリアン大学で開催された「『ノストラ・エターテ(我らの時代に)』50周年記念国際集会」(バチカン諸宗教対話評議会、同キリスト教一致推進評議会、同大学共催)に出席、開会式で諸宗教代表としてスピーチを行いました。集会では四つの円卓会議が開かれ、キリスト教やイスラーム、ヒンドゥー教、仏教、儒教、ジャイナ教など諸宗教指導者らが登壇。対話を通じた宗教協力の歩みを振り返り、世界平和に向けた宗教者の役割が確認されました。根本昌廣外務部長が随行し、日本から国富敬二WCRP(世界宗教者平和会議)日本委員会事務局長、川本貢市中央学術研究所所長らが参加しました。
サンピエトロ広場で行われた教皇フランシスコの一般謁見に参列。ミサ終了後、直接あいさつを交わしました(バチカン日刊紙「オッセルバトーレ・ロマーノ」提供)
1965年、ローマ教皇パウロ六世により開かれた「第二バチカン公会議」に、初めて他宗教の指導者が招かれ、仏教徒として庭野日敬開祖が第四会期の開会式に出席しました。また、同会議の約1カ月後には、バチカンの諸宗教対話路線を明確にした「第二バチカン公会議キリスト教以外の諸宗教に対するカトリック教会の態度についての宣言『ノストラ・エターテ(我らの時代に)』」が発表されました。「教会の外に救いなし」と説いてきたカトリック教会がその重い扉を開いて他宗教を受け入れ、相互理解を深めるための対話を始める契機になったといわれています。
今集会は、歴史的な公文書発表から50年の節目を記念したものです。諸宗教指導者をはじめ、学者や各国大使、外交官ら約500人が参加しました。
開会式は26日夕、ローマ市内の教皇庁立グレゴリアン大学で行われました。フランソワ・ザビエル・デュモルティエール同大学長のあいさつに続き、「ノストラ・エターテ」50年の歴史を振り返るドキュメンタリーが上映されました。この中で、パウロ六世と庭野開祖との出会いの場面に併せ、「ノストラ・エターテがなかったら、諸宗教対話はここまで進展しなかったと思います」と語る庭野日鑛会長の映像が流れました。
次いで、キリスト教一致推進評議会のクルト・コッホ議長(枢機卿)、バチカン諸宗教対話評議会のジャン・ルイ・トーラン議長(枢機卿)が基調発題。このあと、諸宗教代表によるあいさつに移り、光祥次代会長が最初に登壇しました。
イタリア語でスピーチした光祥次代会長は、祖父・庭野開祖が50年前の第二バチカン公会議に出席し、他宗教への寛容性を示したパウロ六世の言葉に感銘を受け、宗教協力による平和活動に尽力するようになったと説明。その上で、バチカンがオブザーバー国として関わり、自身も理事を務めるKAICIID(アブドッラー国王宗教・文化間対話のための国際センター)に触れ、「50年前の『ノストラ・エターテ』の精神が新たな実を結んだと言える」と語りました。さらに、世界は無知や恐れによって対立の方向に進んでいるとの認識を示し、「先哲の歩みを受け継ぐとともに、今必要とされる対話とは何かを問い直し、OS(オペレーティング・システム)をアップグレードしなければならない」と力説しました。
翌27日は、『諸宗教対話――人間に奉仕する信仰者』など三つの円卓会議が開かれ、諸宗教指導者や大学教授らが発題し、参加者からの質疑に答えました。
28日、光祥次代会長は午後の円卓会議に臨み、教育関係者らの発表に耳を傾けました。続いて閉会式では、バチカン国務省のピエトロ・パロリン長官(枢機卿)がスピーチ。「世界各地で紛争が頻発する状況への憂慮が強くなっている今、平和への教育に関する体系的な検討が急務」と訴え、特に若い世代への教育の重要性を強調しました。
3日間の集いを終え、光祥次代会長は「WCRPやKAICIIDなど、佼成会が進める諸宗教対話の流れが、50年前の開祖さまと教皇さまの出会いから始まったのだと、改めてご縁の尊さをかみしめました。今、諸宗教者が集い、対話する場は飛躍的に増えています。一方で、世界から紛争や貧困が絶えないのも事実です。50年という節目を機に、今後は対話の中身を向上させていく必要があるように感じます。今いる場所がどうすればより良くなるか、一人ひとりが自分で考え、具体的に行動する中で、真の平和への道が見えてくると信じています」と話しました。
光祥次代会長 バチカンでローマ教皇に謁見
光祥次代会長は10月28日午前、「『ノストラ・エターテ(我らの時代に)』50周年記念国際集会」に参加する諸宗教代表者と共にバチカン・サンピエトロ広場を訪れ、ローマ教皇フランシスコに謁見(えっけん)しました。
ミサでは「ノストラ・エターテ」の数節が各国語で読み上げられ、祈りが捧げられました。続いて、スピーチを行った教皇は、謁見に参列する諸宗教指導者らに謝意を表した上で、パウロ六世の強い願いであった諸宗教対話に言及し、「暴力やテロによって宗教に対する疑惑や非難が蔓延(まんえん)する中、私たちは共に、世界の貧困と闘い、全ての男女により良き生活を保障するための合同プロジェクトを実現していこう」と呼びかけました。また、「私たちが最初になさなければならないことは、祈ること」と示し、他者の持つ自由を尊重する大切さを強調しました。
ミサ終了後、諸宗教指導者たちは一人ひとり教皇にあいさつし、言葉を交わしました。光祥次代会長はイタリア語で、祖父・庭野開祖が50年前、第二バチカン公会議に招待され、出席したことなどを伝えました。その言葉に教皇は大きな驚きと喜びを示し、満面に笑みを浮かべ「あなたもその血筋ですね。頑張ってください」と語りかけました。
(2015年11月 5日記載)