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2016年02月20日 『グローバル化の進展と日本の宗教』をテーマに国際宗教研究所主催シンポ


在留外国人と外国人観光客への対応について議論が交わされました

「増加する在留外国人や外国人観光客への日本宗教界の対応」を考えるシンポジウムが2月20日、大阪国際大学守口キャンパスで開催されました。主催したのは国際宗教研究所(所長・島薗進上智大学特任教授)でテーマは『グローバル化の進展と日本の宗教』。参加者は研究者や宗教者約70人で、立正佼成会からは中央学術研究所の川本貢市所長らが出席しました。

現在、日本に在留する外国人の数は約217万人で、その出身国と地域は190ほどに上ります。居住地も以前は大都市に集中していましたが、最近では日本人男性と結婚して来日する外国人女性が増え全国の市町村に広がってきました。世界的な規模で人の移動が活発化(グローバル化)する中で、海外から流入してくる宗教や信仰とどう向き合っていけばいいのか、日本の宗教のあり方も問われるようになりました。
シンポジウムでは、「在留外国人とその宗教」という観点から大阪国際大学の三木英教授が実態調査の結果を発表。この中で、イスラームや日系ブラジル人のプロテスタント系教会、フィリピンのキリスト教系新宗教、台湾やタイ、ベトナム仏教などの宗教拠点が全国的に急増していることが報告され、その拠点が、集会や行事など祈りを通して祖国や信仰を同じくする人たちの絆を確認し、相互に助け合うコミュニティーとしての役割を果たしていることも明らかにされました。
「日本の地域社会との交流」については、東日本大震災での被災地支援活動を積極的に行った団体があることや、行事の案内はじめアラビア語や中国語などの講座を設け地域社会との接点を模索している点を挙げ、これらの動きに対し日本の宗教界はどう対応していくのか、と三木教授は問題を提起しました。
さらに「日本社会との摩擦」に関しては、在日大韓基督教会の佐藤信行・在日韓国人問題研究所所長が発言の中でヘイトスピーチに言及。ヘイトスピーチを規制する法案の制定と「社会的少数者に対する偏見や差別、敵意の連鎖を解くために日本国内の諸宗教と連帯し協働していくことが必要」と呼びかけました。
このほかシンポジウムでは、急増する外国人観光客への対応として、年間100万人以上の外国人が訪れる京都の清水寺の取り組み(大西英玄・清水寺執事補)、海外布教と外国人への布教に関して長い実績をもつ天理教の試み(三濱靖和・天理図書館資料部長)、急増する外国人参拝者に対する神社界の対応(板井正斉・皇學館大学教育開発センター准教授)について発表がありました。
短期滞在者には「おもてなし」、長期滞在者には「冷淡」の構図や、偏見の少ない若者たちがマスコミの情報を鵜呑(うの)みにすることで偏った見方に陥りやすいことなども指摘されました。
最後にフロアからシンポジウムのまとめとなるような「グローバル化がその国のナショナリズムを強めることは明白で、それがヘイトスピーチにもつながっている。日本の宗教界は宗教宗派を超えた信仰共同体として安らぎや癒やしの場となれるかどうかが問われている」との発言もありました。
三木教授は「在留外国人に対する対応を日本の宗教界は考えなければならない時期にきている。不況の影響で困窮する人も増えているので、積極的に支援の手を差し伸べる必要がある」と日本の宗教界からの働きかけに期待を寄せました。

(2016年2月25日記載)