ミャンマーの宗教指導者を招いて公開シンポジウムを開催。民族や宗教間で対立が続く同国の平和構築に向け、宗教者の役割を話し合いました
『Welcoming the Other(他者と共に生きる歓び)に向けた実践と課題』をテーマに、世界宗教者平和会議(WCRP/RfP)日本委員会は4月6日、東京・渋谷区の妙智會教団本部で「ミャンマーの宗教指導者を迎えての公開シンポジウム」を開催しました。ミャンマーの宗教指導者10人をはじめ日本の宗教者、学者、市民ら約200人が参加。立正佼成会から同日本委会長の庭野日鑛会長、同日本委理事で国際共同議長を務める庭野光祥次代会長、同日本委理事の川端健之理事長、中村憲一郎常務理事らが出席しました。
共生社会実現へ 宗教者の役割など討議
半世紀に及ぶ軍事政権が終結したミャンマー。急速に民主化が進む一方で、ラカイン州でのムスリムとアラカン族(仏教徒)の対立や、反イスラーム主義者によるヘイトスピーチなど一部の民族や宗教間で緊張状態が続いています。こうした中、2012年にWCRP/RfPミャンマー委員会が発足。諸宗教間対話を進めるとともに、子供の保護や平和教育、宗教青年・女性ネットワークの構築などに取り組んでいます。
今回、共生社会の実現に向けた宗教者の役割を模索すると同時に、日本を含めた国際社会とのパートナーシップを促進しようと、ミャンマー委員会のメンバーら諸宗教指導者が来日しました。
当日は、杉谷義純同日本委理事長(天台宗宗機顧問)のあいさつに続き、ミャンマー委最高指導者のチャールズ・ボー枢機卿(カトリック・ヤンゴン大司教)、マバタ(民族宗教保護協会)会長代理のダーマピヤ・サヤドウ大僧正、ミャンマー委創設メンバーでイスラームセンター理事長のアル・ハッジ・ウ・エ・ルウィン氏が基調発題に立ちました。ボー師はキリスト教には「他者」の概念はなく、全て兄弟姉妹と見ると説明。その上でミャンマーには7部族、136の民族が存在し、その6割が貧しく、紛争や差別で国内避難民となっているケースもあると話し、「宗教者が団結して貧困に向き合うことでしか、真の平和は訪れない」と訴えました。
弱者を支える存在
ダーマピヤ師は、自国内の対立構造の裏でさまざまな問題が複雑に絡み合い、真実が何か見極められないと指摘。「宗教にだけ原因を探しても解決しない。正しい目を養うためにも教育が重要」と語りました。続くルウィン氏は「多様性は国の豊かさ」と強調。「宗教は常に人々の心の支えで、問題の答えである」とし、宗教の力を信じて対話を続ける必要性を明示しました。
続くパネルディスカッションでは基調発題の3人に加え、ミャンマー委会長でラタナメッタ仏教NGO代表のウ・ミン・スウェ氏、同委事務総長でミャンマーカリタス・ヤンゴンディレクターのジョセフ・マウン・ウィン神父(ヤンゴン聖ヨハネ教会司祭)、同委女性ネットワーク議長のド・イン・イン・モウ師(ミャンマーキリスト教協議会前会長)、同委創設メンバーで同協議会総幹事のソウ・シュエ・リン牧師、ミャンマーヒンドゥー評議会会長のフラ・トゥン師、さらに、仏教指導者のミワディー・サヤドウ大僧正(マンダレーミャワディー・ミンギ僧院長)、マバタ上級代表のアシン・ソパカ師が登壇。杉野恭一同国際委員会副事務総長をコーディネーターに、対立が続くミャンマーで宗教者が果たす役割や、今後の展望などについて意見を交わしました。登壇者の中で唯一の女性であるモウ師は、紛争の犠牲になるのはいつも女性と子供であると訴え、宗教は争いや政治の道具ではなく、弱者に手を差し伸べる存在でなければならないと述べました。また、ソパカ師は何かを変えるときは、まず自己を改めなければならないと自戒の姿勢を示し、「宗教者である私たちから心を平和に清めていきたい」と語りかけました。
次いで「日本からの応答」として、同日本委平和研究所所長で中央大学名誉教授の眞田芳憲氏、同日本委監事で日本ムスリム協会理事の樋口美作氏が発言。この中で樋口氏は、多くの宗教が共存する日本の状況を報告した上で、対話による相互理解と寛容性の醸成が重要であると述べました。
最後に、質疑応答とフロアディスカッションが行われました。
(2016年4月14日記載)
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