News Archive

2016年05月12日 第33回庭野平和賞贈呈式 スリランカの「和解と平和構築センター」に


スリランカで民族や宗教、言語の違いを超えて対話を促進するCPBRの功績を讃(たた)え、庭野名誉会長から賞状などが手渡されました

公益財団法人・庭野平和財団(庭野日鑛名誉会長、庭野浩士理事長)の「第33回庭野平和賞贈呈式」が5月12日、東京・港区の国際文化会館で行われました。今回の受賞は、スリランカの「和解と平和構築センター」(CPBR=Centre for Peace Building and Reconciliation)。CPBRは、26年に及ぶ内戦とスマトラ沖大地震の津波災害に見舞われた同国で、民族や宗教、言語の違いを超えて対話を促進。傷ついた人々を支援し、社会の絆を回復する活動を各地で積極的に展開してきました。当日は、約150人の宗教者、識者らが見守る中、庭野名誉会長から正賞として賞状、副賞として顕彰メダル、賞金2000万円(目録)が贈呈されました。

内戦で傷ついた人々を支援 対話を基に国の再生図る
スリランカは、人口の73%を占めるシンハラ人とタミル人(18%)やムーア人(8%)が暮らす多民族国家です。シンハラ人の大半は仏教徒ですが、他の国民はヒンドゥー教、イスラーム、キリスト教を信仰しています。
シンハラ人とタミル人の対立感情は、19世紀の英国植民地時代に英国がタミル人に多数派のシンハラ人を統治させる「分割統治」を行ったことに起因します。その後、1948年の独立を経てシンハラ人政権が誕生すると、シンハラ人優遇政策が実施され、反発するタミル人の中から次々と武装組織が結成されました。
1983年、政府軍と過激派組織「タミル・イーラム解放のトラ」(LTTE)による戦闘が発生。政府軍がLTTEを制圧する2009年までに7万人が犠牲になりました。
CPBRは内戦のさなかの2002年、弁護士のディシャーニ・ジャヤウィーラ氏と紛争和解の専門家である大学准教授のジャヤンタ・セネヴィラトネ氏によって設立されました。内戦で傷ついた民衆を癒(いや)すとともに、民族間、宗教間の融和、和解を進め、人々の信頼と友情を醸成し、社会の絆の回復に尽力。現在は8県の約120の村落で活動を展開しています。2004年に発生したスマトラ沖大地震の津波被害に対しても、復興に尽くしました。
CPBRは、「諸宗教対話によって理解と和解を図る」「若者の声や彼らが抱く夢に耳を傾ける」「女性の力を活用する」を活動の方針に据えています。宗教対話の活動としては、主要地域に「宗教間対話センター」を設け、仏教、ヒンドゥー教、イスラーム、キリスト教の指導者と対話のフォーラムなどを開催。「不平等と差別」による問題の認識を多くの人と共有し、壊れた関係を回復して平和と共存を促進しています。
贈呈式では、庭野平和賞委員会のビルギッタ・ランタカリ委員長(ヘルシンキ・ディーコネス協会国際部部長)により選考経過が報告され、庭野名誉会長から賞状と顕彰メダル、賞金(目録)が共同設立者のジャヤウィーラ氏とセネヴィラトネ氏、ランジャナムベゴダ・リヤナーゲ財政部長に手渡されました。
続いて、庭野名誉会長があいさつ(全文別掲)。馳浩文部科学大臣(土屋定之文部科学事務次官代読)、ダンミカ・ガンガーナート・ディサーナーヤカ駐日スリランカ民主社会主義共和国大使、齋藤明聖・日本宗教連盟(日宗連)理事長が祝辞を述べました。この後、ジャヤウィーラ氏が記念講演を行いました(全文別掲)。

【庭野平和賞委員会】
▼委員長=ビルギッタ・ランタカリ氏(フィンランド、キリスト教、ヘルシンキ・ディーコネス協会国際部部長)▼庭野日鑛・庭野平和財団名誉会長▼アラン・ウンターマン氏(イギリス、ユダヤ教、マンチェスター、イェシュラン・シナゴーグ会堂元牧師)▼サリウ・マッケ師(セネガル、イスラーム、アフリカの平和のための宗教間行動のコーディネーター)▼ノムフンド・ワラザ氏(南アフリカ、聖公会キリスト教、デスモンド・ツツ平和センター最高経営責任者)▼ジュディス・マリー・ポヴィルス氏(米国、ローマカトリック、ソフィア大学研究所副学長)▼アン・ジェウン氏(韓国、キリスト教、韓国Dasomi財団理事長)▼ハルシヤ・クマラ・ナヴァラトネ氏(スリランカ、仏教、セヴァランカ財団理事長、仏教者国際連帯会議理事長)▼スーザン・ヘイワード氏(米国、キリスト教、米国平和研究所「宗教と包摂的社会」部部長)▼サラ・ジョセフ氏(英国、イスラーム、ムスリムのライフスタイルマガジン「emel」CEO兼編集者)

(2016年5月19日記載)