現代の生活困窮者の実態を紹介する稲葉氏の講演。これを踏まえ、参加者は孤立する人々をいかに支えるか議論した
『分断化社会で苦しみ悩む人々に寄り添う――共に生きるために、信仰者は何ができるか』をテーマに、中央学術研究所による「第9回善知識研究会」が10月15、16の両日、セレニティホール、行学園で開催された。同研究所講師、客員研究員ら110人が参加。教団から川端健之理事長、中村憲一郎常務理事が出席した。
15日、『生活困窮者支援の現場から』と題して認定NPO法人「自立生活サポートセンター・もやい」理事の稲葉剛氏が基調講演を行った。
冒頭、稲葉氏は「もやい」に寄せられる相談件数を示し、若年層と女性の割合が増加している傾向を紹介。生活困窮に陥る理由として、公的な給付型奨学金制度がない日本で、一人親家庭や児童養護施設出身の子供が進学できずに、就職で不利な立場に置かれる現状を挙げた。また、労働者派遣法の改定により、労働者の4割を占めるほど非正規雇用者が増加している現状を報告。これに伴い、正規雇用を望む若者の心理につけこんで過重な労働を強いるブラック企業が横行し、精神疾患から失業して貧困に陥る人が絶えない実態を説明した。
さらに、非正規雇用が増える中、収入が不安定になることによって住居を追われ、住民票を失うことで就職活動もできずに、公的サービスからも遠ざけられてしまう社会の現状を解説した。
その上で、標準家族モデルから外れた単身者や一人親家庭の子供、さらに終身雇用から外れた人々は貧困に陥りやすくなると強調。全ての人が安心して暮らせるように、住宅や食料、教育といった生活に必要なサービスを低コスト化して、それらを保障する社会システムの構築が必要と訴えた。
続くパネル発題では、「明るい社会をつくる国立市民の会」副会長・事務局長の丸本大氏、NPO法人「八王子つばめ塾」理事長の小宮位之氏が登壇した。丸本氏は、住民への地道な呼び掛けによって市民と共同で行う清掃活動と交流を紹介。小宮氏は、貧困家庭の学生に対して無料で行う学習塾の取り組みと、多くの人の協力を得て活動の輪が広がっている様子を説明した。
これを受け、参加者は両日にわたる分科会で討議。全体会議では、課題に対する信仰者の姿勢や共助の再構築などについて意見を交わした。
(2016年10月20日記載)
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