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2010年08月06日 音楽で人々の心をつなぐ使命 今後も

TKWO首席客演指揮者 ダグラス・ボストック

世界で最も注目されるウインドオーケストラの一つであるTKWOが50周年を迎えたのは、大きな喜びであり大変意義深いことです。偉大な歴史の一端を共に歩み、指揮者として一緒に祝えることをとても幸運に感じています。
TKWOは、立正佼成会の式典演奏のための小さな楽団として誕生したと聞きました。それが今では、世界で最も有名なウインドオーケストラです。世界の人々にとって光り輝く星のような存在であり、すべての人があこがれる楽団、それが現在のTKWOです。
TKWOの楽器編成や演奏スタイルは世界中の楽団に影響を与えました。また、委嘱作品をはじめとする数多くの作品を輩出し、この分野のレパートリー開拓に多大な貢献をしました。それらはプロフェッショナリズムと賞賛されるべきものです。
そうした中で、今秋の創立50年を記念したヨーロッパ・ツアーは大変重要な意味を持っています。日本以外の国の人々にとって、実際にTKWOの演奏を直接聴くチャンスはほとんどなく、彼らにとってTKWOはCDの中にのみ存在している楽団なのです。一方、TKWOにとってヨーロッパで演奏しその反響を実感することは、海外でどのような評価を受けているかを改めて知る、貴重な機会と言えるでしょう。
ところで、TKWOは立正佼成会に所属していますが、世界的に見て一つの教団や教会がプロフェッショナルな楽団を所有することはまれであり、ほとんど唯一の存在であることも事実です。そして、このユニークな出自が、TKWOの性格の一端となっています。TKWOは通常の演奏会や立正佼成会の式典演奏のほか、社会福祉施設訪問や子供たちのための音楽鑑賞教室など、さまざまな場でも演奏しています。彼らは「人々の心をつなぐ」という宗教の持つ大切な使命を、音楽を通して実現してきました。音楽の持つハーモニー(和音)は、人々のハーモニー(調和)に通じ、これは音楽と宗教に共通するところです。そして、これは立正佼成会がスポンサーであるということの大きな意義なのです。
私は1994年から16年間にわたりTKWOにかかわってきました。客演指揮者、常任指揮者、首席客演指揮者と三つの役割を務めましたが、それぞれのポジションに応じて自分の考えやビジョンを団員たちに提案してきました。そして、共に素晴らしい音楽をつくり上げてきたことを誇りに感じています。今後も自分の持つすべてのエネルギーやコンセプトをTKWOに注ぎ、より良い音楽を創造していければ幸せです。

《プロフィル》
1955年、英国生まれ。英・シェフィールド大学で指揮学、音楽学、作曲を専攻。指揮学、音楽学の修士号を取得。現在、アールガウ交響楽団(スイス)の常任指揮者などヨーロッパで幅広く活動するほか、日本をはじめアジア諸国でも活動を展開しています。2000年にTKWOの常任指揮者に就任。06年から同楽団初の首席客演指揮者を務めています。

(2010.8.6記載)