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2010年09月20日 WCRP40周年「世界宗教者まほろば大会」開催

「WCRP(世界宗教者平和会議)40周年記念事業」(WCRP日本委員会主催)のプログラムが、9月20日から27日まで京都、奈良で実施されました。メーンとなる「世界宗教者まほろば大会」は26、27の両日、奈良県新公会堂(奈良市)で行われ、海外の宗教者を含む400人が参加。世界の諸問題に対する宗教者の役割を討議し、「まほろば宣言」を採択しました。一連の行事には立正佼成会からWCRP日本委理事長の庭野日鑛会長はじめ庭野光祥次代会長、渡邊恭位理事長らが出席しました。


庭野理事長とムハンマド・ダジャーニ教授から荒井知事に「まほろば宣言」が手渡されました

記念事業の総合テーマは『世界を"まほろば"に~シルクロード終着の地、日本から発信する~』。記念事業のうち奈良プログラムは平城遷都1300年記念事業協会との連携によるもの。「東アジア未来会議奈良2010」の一つに位置づけられました。
京都プログラムでは20日から22日まで、「イスラーム指導者会議」を開催し、「平和と共存のためのイスラームのメッセージ」を採択。23日には公開シンポジウム「日本の宗教とイスラームの対話」を実施しました。
奈良プログラムでは25日、奈良県新公会堂で「東アジア青年宗教者会談」を開いたほか、『アジアにおけるまほろば実現にむけて』をテーマに奈良県文化会館で公開講演会を実施。海外の宗教者ら2人が基調講演を行いました。また同日、東大寺で
「ARMS DOWN! 青年宗教者からの発信:キャンペーン終了式典」を開催しました。
26日、まほろば大会の開会式では、安田暎胤WCRP日本委常務理事(薬師寺長老)、山北宣久日本宗教連盟理事長(代読)、海外宗教者のあいさつに続き、『まほろばの心と宗教者の貢献』をテーマに編集工学研究所所長の松岡正剛氏が基調講演。松岡氏は、「まほろば」とは理想上の楽園ではなく、実際に人間の生命、信仰、生活を豊かにする場所との認識を示し、生命観や宗教観を説く宗教者の役割に期待を寄せました。

これを受け、参加者は2会場に分かれ、「まほろば」の普遍性についてそれぞれの国や文化、宗教の立場から意見を交換し、宗教者の役割を確認しました。
27日の閉会式では「東アジア青年宗教者会談」に参加した日本、韓国の代表が宣言文を発表。同地域での核武装化、領土をめぐる論争などに青年が謙虚さと祈りを持って取り組む決意を表明しました。
続いて、「まほろば宣言」案が検討され、満場一致で採択されました。同宣言は、多様性を重んじる精神性こそが調和のとれた世界の礎となると明示し、平和実現に向けた宗教者の祈りと行動を呼びかけました。
宣言文は庭野理事長とアル・クドゥス大学(パレスチナ)のムハンマド・ダジャーニ教授から荒井正吾奈良県知事(平城遷都1300年記念事業協会理事長)に手渡されました。荒井知事は「皆さま方の思想と発信が世界の課題に対し大きな力になると確信している」と述べました。宣言文は1300年記念事業の「平城京レポート」に反映されます。
閉会あいさつに立った庭野理事長は、「皆さまが身近なところで『まほろばの心』を具現化してくださることが、創設40周年の節目を迎えた最も大きな意義」と述べました。
なお、奈良プログラムの期間中、本会奈良教会をはじめ近隣教会の200人がボランティアにあたり、運営を陰から支えました。

◆「まほろば宣言」(全文)

世界宗教者平和会議(World Conference of Religions for Peace, WCRP)は、2010年、創設40周年を迎えた。WCRP日本委員会が40周年記念事業として企画した「世界宗教者まほろば大会」に、『世界を"まほろば"に~シルクロード終着の地、日本から発信する~』のテーマの下に、イスラーム世界の宗教指導者および学者を含め、世界の15カ国の宗教指導者が参集した。
WCRP日本委員会は、この記念すべき年を迎えるにあたり、神仏の限りない慈しみとお導きにおもいをいたしつつ、創設にかかわられた偉大な先師たちの高遠な理想と、その実現のための強靭(きょうじん)な意志、熱き情熱、そして不惜身命(ふしゃくしんみょう)の勇気に敬慕の念を捧(ささ)げ、遺徳を偲(しの)ぶものである。さらにまた、これらの先師たちの誓願を受け継ぎ、今日まで努力を重ねてきたすべての方々に、心から深甚の敬意と感謝の意を表するものである。
WCRPは、その創設以来、諸宗教間の対話と理解、そして協力と連携を通して、非武装・紛争和解・貧困・飢餓・人権・開発・環境・難民など人間の尊厳と平和を脅かすさまざまな諸問題の解決に取り組んできた。しかし、今もなお、世界各地には、民族・宗教・文化の違いや、政治・経済・社会の諸々の要因が錯綜(さくそう)する複雑な問題を背景としてさまざまな対立や紛争が生じている。日本を含む東アジアにおいても、我々は、核武装や軍事力の拡大、紛争と難民、貧困・疾病・教育・環境など、人間の安全保障といのちの安全保障を損なう多くの問題に直面している。
今から1300年前、奈良の地は、生命を育み、信仰を育て、豊かで、美しく、調和のとれた場所と称えられ、「まほろば」と呼ばれた。このように、陸と海のシルクロードからもたらされたアジア各地域の豊かな多様性は、この奈良において日本の伝統文化と融合し、多様性を尊重し、それを大きな調和とする「和」の精神が「まほろばの心」として涵養されていった。
しかし、我々は時としてその心を忘れ、不幸な歴史を繰り返してきた。現在ほど、「まほろばの心」が求められる時代はない。我々は、今日、あらゆる形態の暴力・対立・抗争・紛争に直面している。こうした惨害は、人々の生命や自然の生命とその尊厳に深刻な脅威を与えている。この脅威に立ち向かうためには、我々は2006年8月29日、京都で開催された第8回WCRP世界大会で誓い合った「あらゆる暴力をのり超える」決意と「共にすべてのいのちを守る」共通のビジョンをあらためて想起すべきである。
我々は、いかなる宗教であれ、暴力を支持する宗教の誤解と誤用に対し、断固、反対の意を表するものである。9月20日~22日、京都で開催された「イスラーム指導者会議~正しいイスラームの理解のために~」において、イスラームは、真理と正義に基づく寛容・中庸・人類家族の一体性を重んじ、平和と慈悲の宗教であり、それゆえイスラームへの正しい理解を広く世界に呼びかける責任と使命を共有することを確認し、「平和と共存のためのイスラームのメッセージ」を採択した。
WCRP日本委員会は、平和実現のための諸宗教協力にとって基礎をなす正しいイスラームの教えを広く伝えていくことに賛同する。9月23日、京都で『日本の宗教とイスラームとの対話~まほろばの精神とイスラームの平和観~』をテーマとした公開シンポジウムが開催された。この公開シンポジウムは、イスラーム指導者会議で採択された「平和と共存のためのイスラームのメッセージ」を全世界に発信する記念すべき第一歩となった。
「ARMS DOWN! 共にすべてのいのちを守るためのキャンペーン」は、WCRPグローバル・ユースネットワークの主導により、すでに世界の126カ国の青年宗教者の連帯と共働によって行われている。日本においては、40周年記念事業において、その成果が報告された。核兵器の廃絶、全世界の総軍事費の10%削減、およびその削減された軍事費が国連ミレニアム開発目標のために充当されることを念願し、1100万人以上の署名を集めることができた。
また、東アジア青年宗教者会談が意義深い声明文を発表したことも高く評価しなければならない。この会議には、不幸にして、現在の国際政治の中で、中華人民共和国と朝鮮民主主義人民共和国の青年の参加が不可能になった。それにもかかわらず、青年宗教指導者は「我々の地域における核武装化、軍事化、領土に関する論争や紛争、道徳的退廃、自然環境の悪化にもはや耐えることはできない。謙虚さと祈りの力をもって、青年はそれらの課題に取り組み、北東アジアの共有される安全保障のために主導的な役割を担うべきであると確信する」と誓い合ったことは、青年らしい平和への希求と勇気を示すものであり、まことに賞賛に値するものである。
我々は、未来を共有している。「まほろばの心」は、宗教的・文化的・知的・社会的多様性を重んじる精神性によって調和のある世界の礎となる。どの文化であれ、どの宗教であれ、「まほろばの心」を理解し、尊重するそれぞれの道がある。グローバル・ユースネットワークが前進させてくれたように、それぞれの宗教的伝統に基づいて祈りを捧げていこう。我々も平和実現への決意を表明し、広く行動を呼びかけるものである。
最後に、我々は、青年宗教者が「ARMS DOWN! キャンペーン」において捧げた祈りをともに分かち合うものである。

暴力によって傷つけられているいのちのために
貧困や飢餓、孤独に苦しむいのちのために
すべてのいのちのために
祈りを捧げよう


『アジアにおけるまほろば実現にむけて』をテーマに開催された公開講演会には市民ら1300人が参加しました(9月25日、奈良県文化会館)


「インターナショナル・フレンドシップ・コンサート」。弦楽の妙(たえ)なる調べが約450人の聴衆を魅了しました(9月25日、奈良県新公会堂能楽ホール)


「イスラーム指導者会議」後の記者会見。「平和と共存のためのイスラームのメッセージ」が発表され、マスコミにもイスラームに対する正しい理解が求められました(9月23日、国立京都国際会館)


式典の最後には、参加者全員で「ARMS DOWN!」と唱和し、世界平和に向け、さらなる行動を誓いました(9月25日、東大寺大仏殿前)


日本と韓国の代表が参加した「東アジア青年宗教者会談」。閉会式では、北東アジアの平和、安全のために青年が主導的な役割を担う宣言が発表されました(9月27日、奈良県新公会堂能楽ホール)

(2010.10.1記載)