神仏からの呼びかけに応え 菩薩としての働きを今後も
法華経にはすべての人に仏性があり、すべての出来事は仏の慈悲の表れであると教えられています。また、私たちは慈悲の心をもって他者へ尽くすときにこそ、平和を生みだす菩薩となることができます。最も苦しいときにこそ、より深い慈悲の心が引き出されるならば、今こそ私たちに菩薩として働くようにという神仏からの呼びかけが聞こえてくるはずです。
どの宗教にも、表現の違いこそあれ、このような神仏の慈悲という真理が説かれていると思います。現実には多くの苦しみがありますが、それは救いの糸口でもあります。困難に立ち向かう時にこそ私たちの慈悲の心はより深まり、力強くなるはずです。
貧困と軍事費の増加という、二重の困難を抱える状況の中で、今回先頭に立って取り組んでくださった皆様に感謝申し上げます。特に、自分の信仰に誇りを持ちつつも、心を一つにして行動するために、宗教や教団を超えて取り組まれた方々に心からお礼申し上げます。
8月に私は娘・多香子とフィリピン南部のミンダナオに行きました。そこで、娘と同じ14歳のマリージョウという女の子と出会いました。彼女は紛争と貧困という厳しい状況の中で生活していました。紛争で家を追われ、学校に行けず、病気になっても薬はありません。彼女の存在こそが「ARMS DOWN!」を呼びかける生きた叫びなのです。娘・多香子は、その声を聞き、署名活動に取り組みました。聞こえないふりをすることはできませんでした。伝えさえすれば、より多くの人にその声が届くと私は信じています。今回、私たちはその声を聞き、それを伝え、そして行動することができました。
ある女性のお話をしたいと思います。彼女はがんの告知を受けた直後に「ARMS DOWN!」に出会いました。そして最後の数カ月を署名活動に捧(ささ)げ、たった一人で2000を超える署名を集めました。彼女の生き方は、私たちを一つに結ぶ価値観「支え合う安全保障」の精神を物語っています。その慈悲に満ちた生き方は、私たちが共に生きる存在であることを体現しています。
今日こうして2000万を超える署名が集まりましたが、それによって貧困がなくなるとは思いません。また、ミレニアム開発目標実現への距離が縮まるという幻想も抱きませんし、武器がなくならないことも知っています。私たちの活動は今始まったばかりなのです。
先週、庭野日鑛会長は、奈良での「ARMS DOWN!」終了式典で、フランスのプロバンス地方で毎日100のどんぐりを植えた人の話をしました。彼は3年間で10万のどんぐりを植え、そこから2万の芽が出ました。その後も彼は、戦争中もどんぐりを植え続け、その結果十数年後には荒れ果てていた土地が緑に生まれ変わったのです。
この話のエッセンスはとてもシンプルです。本当に世界を変えたいと思うなら、無私の行動が持つ力に、私たち一人ひとりが気づくことが大切だということです。これは私たちが平和活動をする上で特に大切な真実です。たった一人の行動が次の新たな行動を引き出します。今回私たちは、平和のための行動をより多くの仲間と分かち合うことで、本当の意味で心が一つになる喜びを味わうことができました。
最後にここにお集まりの皆さまに、どうかこれからも自らの信仰をよりどころにしつつ、世界の平和に向けてともに行動を続けてくださいますようお願い申し上げます。
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