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2011年06月10日 被災地・仙台の現状 渡邊佳政教会長に聞く

東日本大震災により、仙台教会が包括する宮城・仙台、名取、岩沼の各市をはじめとする沿岸地域は甚大な被害を受けました。震災発生から3カ月。現地ではライフラインの復旧が進み、仮設住宅が建設されています。地震発生から現在までの教会の状況や会員の様子、復興への思いなどを渡邊佳政教会長に聞きました。

千年に一度と言われる規模の東日本大震災に際し、全国の皆さまが支援物資や励ましのメッセージをたくさんお送りくださり、さらに多くの方々がボランティアとして復旧活動に献身的にご協力くださっていることに心より御礼を申し上げます。また、被災地支援を目的に各地で行われたさまざまな募金に対し、献金してくださった市民の方々にも併せて御礼を申し上げます。
地震発生直後、仙台市内は電気やガス、水道、通信といったすべてのライフラインが断たれ、情報も入らずに孤立した状況になりました。翌日、津波が名取川を遡上(そじょう)する映像をインターネットで初めて目にし、東北地方を中心とした広範な地域で多くの方が犠牲となった大震災であることを認識しました。
仙台教会では21支部のうち、沿岸の8支部が甚大で壊滅的な被害を受けました。会員さんの中には家族を亡くし、津波で家屋や職場を失った方もおり、今も家族の行方が分からない方もおられます。ご無事であることを願い、速やかに復興が進むよう祈願を捧(ささ)げている毎日です。悲しみの中で、会長先生が被災地の方々に寄せられた「このような時こそ、信仰を支えにし、周囲の人々、善き友・サンガと力を合わせ、この困難を乗りこえて頂きたい」とのお言葉を胸に、支部長さんをはじめ幹部さんたちは自発的に教会に泊まり込み、「人命第一」を合言葉に安否確認に奔走しました。安否確認を迅速に進めることができたのは、山形、新潟県下の教会長さんをはじめ教会の方々が雪の中にもかかわらず、不足していたガソリンを届けてくださったおかげさまです。
地震の翌日には青年部員をはじめとする会員さんが、教会道場で近隣住民の方々への炊き出しを始めました。住民の方も食材を提供してくださり、被災者が互いに助け合う姿に仏さまの働きを感じさせて頂きました。
地震発生から3カ月が経(た)ち、被災地域ではがれきの撤去や仮設住宅の建設など復興に向けた取り組みが進められています。被災した会員さんも自宅を修復して戻る、あるいは避難所から仮設住宅やアパートに移り住む人が増えました。一時期の混乱から脱し、ご宝前を中心に生活を始めた会員さんのもとを支部長さんや主任さんが訪ねています。こうした温かな手どりを通し、会員さんは助け合いながら精進しています。
一方、最愛の家族を失った会員さんは深い悲しみを抱えており、私自身も胸が痛みます。少しでもそのつらさをサンガ全体で分かち合おうと、相手に寄り添う温かな手どりとともに、法座による本質的な救われに力を注いでいます。法座で苦しい胸の内を打ち明け、亡くなった方の思いを改めてかみしめることで、少しずつ前を向いて歩き出しています。信仰という支えにより、日々大きな力を頂いていると感じずにはいられません。絶望の中にも必ず仏さまの救いがあります。それこそが、信仰であり、祈りであると思います。
東北の人は辛抱強い、とよく言われます。厳しい冬を乗り越えた先に必ず春が来るという希望が人々の心を支えているからではないでしょうか。今、東北地方は困難を抱えています。復興は何年先になるか分かりません。10年、さらには20年かかるかもしれません。しかし、この厳しい試練をみんなが心を一つにして乗り越え、その先にある復興という光に向かって進んでいきたいと願っています。

(2011.06.10記載)