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2012年05月10日 庭野平和賞受賞記念講演要旨 コナビグア共同設立者 ロサリーナ・トゥユク・ベラスケス 共存と調和を説いたマヤの祖先 過去に学び 変革を図る心を

グアテマラでは1996年に和平協定が調印されたにもかかわらず、平和も調和もいまだ実現していません。私たちは混沌(こんとん)とした状態で生活しています。暴力、飢え、貧困、不平等、不正、混乱がはびこり、利己主義による巨大な富と権力の集中が続き、持つ者と持たない者の間に大きな不平等が存在しています。
これらの問題は世界各地で見られます。国家間の不均衡はなくならず、多くの貧しい人々をさらに貧困に追いやりながら巨大な富が偏在する状況が続いています。バランスを欠いたグローバル・システムによって深刻な汚染、気候変動、温暖化も起きています。
排他的な政策、大量虐殺、文化の破壊、特に先住民文化の破壊は、諸民族の融和、国家と社会の調和を阻みます。武器は人命を奪い、家族や地域社会を壊し、無辜(むこ)の人々を犠牲にします。人類が互いに敵対するのです。
平和とは、単に戦争がない状態を指すのではありません。飢えや病気、不満の広がり、政治、経済、社会の不平等によって自然界のバランスは崩れます。人々が連帯することなく、女性、若者、諸民族の権利が否定され続ければ、家庭や地域、国家、人類に平和は訪れません。平等、愛情、尊敬が平和の源です。人間はこうした価値観に基づいて生きるために創造されたと言えるでしょう。
それにもかかわらず、なぜ調和を実現できないのでしょうか。それは個人や集団、国家が自らの欲を優先することにとらわれてきたからです。
「調和する」とは、自分自身、他者、母なる大地、動植物、宇宙から届くすべてのエネルギーとの良い関係を言います。調和は喜びであり、幸せであり、自由です。自然の恵みを受けながら、健康、教育、勤労、住居、汚染のない環境を享受するといった物質的、精神的、感情的、社会的ニーズを満たすことを、マヤの文化では「満たされた生活」「生活の充足」と呼びます。
「調和」は人類と母なる自然との関係を表しており、敬意と配慮を持って接しなければなりません。私たちの祖先は、すべての次元のあらゆる生き物と共存しなければならないと教えました。この教えを守っていくことによって、あらゆるいのちの営みが永続的に保たれ、地球と宇宙の生命が保証されるのです。
「調和」は最も崇高な社会的、精神的、物資的な表現、行動です。この点を深く理解することで、私たちは不平等や不正義、戦争の後遺症などに苦しむ人たちのために役立つことができます。マヤの世界観では、この世に存在する目的は調和の維持にあると教えています。公平、平等、共存の原則に沿って行動し、いかなる人も無視しないことがマヤの根本思想です。
今日、人類は非常に深刻な危機に直面しています。社会的、経済的、政治的な荒廃、温暖化といった地球環境の悪化です。この現実から逃げ、目を背けることはできません。
マヤをはじめ世界の先住民の祖先は、宇宙とそのエネルギー、そして世界を観察してきました。2012年12月21日、マヤ暦における新たな時代が始まります。
この新時代を人類の命運を理解することから始めなければなりません。満ち足りた人生について、倫理的な行動に基づく人間や社会のあり方について考えていくことが必要です。調和のとれた生活が、未来世代の生き方の基調となっていくことを望みます。一人ひとりが異なる文化との共存を図る心を持ち、あらゆる人々の霊性を敬い、過去に学んで変革を図っていくことが重要になります。

(文責在記者)

(2011.05.18記載)